第1183話 どエルフさんと列車強盗
【前回のあらすじ】
「エレガンスELFゥゥウウウ!! ビーナス!!」
「ビューティフォーELFゥゥウウ!! アフロ!!」
「「二人揃ってビーナス&アフロ!! フゥウウウSEXYYYYY!!」」
これをコピペするだけで100文字稼げるありがたさよ。
「おいこら、真面目に更新しろバカ」
イーグル市表層部へと向かう途中で列車強盗にエンカウントした女エルフたち。
あれよこれよとしているうちに、妙な装置をうっかり動作させてしまったものだからあら大変。立ち上がれば、二人はたちまち――ビーナス&アフロ。
男を虜にするセクシーELF姉妹を名乗ることになってしまった。
女エルフとELF娘。
名前を伏せて大暴れすることができるのは良いが、本当にこの二人にSEXYなことなどできるのか。
歩いても揺れる胸も尻もない、断崖絶壁師弟コンビ(肉のタッグチーム感)にそんなAAAな展開ができるのか。
「いや、するとは言ってないじゃないのよ。なんか勢いで名乗らされただけで」
「え、これ、もしかしてサービス回の流れですか?」
どっちかっていうと残念回かな?
せっかくなら隣のホルスタインモーモーあたりが出て行けばよかった――そんな読者の冷たい視線を感じつつ、不逞の輩とのバトルが久しぶりにスタートです。
◇ ◇ ◇ ◇
「ビーナス&アフロ!? バカな、アフロしかいないが!?」
「なんてことだ――目が覚めるほどの貧相!!」
「兄貴ぃ!! いったいこれはどういうことでぇ!! こんな娼婦型ELFを頼んだ奴の気が知れねえ――いったいそいつは男なのか!? いや、人間なのか!?」
「「だまらっしゃい!!」」
呼ばれて飛び出たエレガンス&ビューティー姉妹。しかし、やっぱり設定と勢いで誤魔化せないビジュアルをしている。
巻き起こるのは歓喜のため息ではなく阿鼻叫喚。男達は、そのあまりの貧相っぷりに青い顔をした。
貧相も行きすぎれば『マニアックな身体だね?』ではすまないことがあるのだ。
そして、それくらい行っちゃってる方が良いとか言っちゃう奴は、間違いなく終っているのだ(作者のこと)。
スレンダーにも程度ってものがある。
それをぶっちぎったセクシー姉妹ビーナス&アフロ。
「ふふっ、どうやらアタイ達の美しさは人類には早すぎたようだね」
「そうですわねマスター。いえ、お姉さま。この無駄のない機能美こそ人類の根源的な美しさ。脂肪なぞないにこしたことはないのですよ」
「「「いやー、無茶があるでしょ?」」」
軽口を叩きつつの戦闘開始。すぐさま、女エルフは魔法を詠唱。
再び攪乱用にスモークを辺りにまき散らした。
くそっと舌打ちした列車強盗達が散会する。
「なんだかよく分からねえが、所詮はパワーに劣る女型ELFだ!! 囲んで殴れば大人しくなる!! ビビってねえで突っ込め!!」
「「「へい兄貴!!」」」
霧の中に蠢く陰に向かって列車強盗が殺到する。手にした思い思いの武器――鉈・斧・剣・棍棒で、彼らはELF娘が先ほどまでいた辺りに殴りかかった。
ギンと鈍い音が室内に響く。「やったか!?」と息巻いた列車強盗だったが、すぐにそれは手下の悲鳴によって喉奥に引っ込んだ。
霧の中、四つの陰がひゅんと宙を舞う。
「ぎゃぁあっ!!」
「い、痛ぇっ!!」
「なんでだ!? 確かに間合いはちゃんと取ったのに!!」
「いったいどうやって攻撃を――!!」
列車の床でしたたかに尻を打つ四人の列車強盗。ELFだからよかったものの、それぞれ腕に脚に、耳に胸部を破損している。それもまったく異なる攻撃の痕――腕は斬りつけられ、脚は砕け、耳は打ち抜かれて、胸部にはクレーターができている。
ほんの一瞬で、いったいどうやってこんな多彩な攻撃ができるのか。
霧の中にもぞりと動いたELF娘の陰。そのシルエットが、一瞬ではあるが――ELF娘のものとは違うように列車強盗たちには見えた。
はたして、それは人ならざるもの――。
「ふーむ。労働型ELFごときが、神に等しき権能を与えられている、私に楯突くとはいい度胸じゃありませんか。その度胸言い値で買ってあげますよ。しかし、不便なモノですね――見た目通りの機能しかその身に宿していないELFというのは」
「……な、なんだ」
言葉の続きが列車強盗の口から出ることはない。彼の喉は鋭い鋼鉄の脚に突き潰されてあっさりとその場に破断した。人間の身体と違って血しぶきこそ出ないが、激しいスパークをあげて、彼はその場に絶命する。
たまらず「ヒッ!」と悲鳴を上げた隣に立つELF。すぐさま彼も縦に三本のなますぎりにされた。綺麗に片口から切り落とされた彼の身体。丁度、脚の中指と薬指の間で別れたそれは、左右後ろの三方向に倒れて歪な華を描いた。
流石に彼らも理解する――。
「なんだ、このバケモノは……」
「おや。バケモノとは酷い言い草ですね。さっきから、人の身体が貧相だのなんだの、女性の扱い方が少し乱暴ではありませんか。ちょっと、世の女性型ELFを代表して、しつけてさし上げましょうか――」
ひゅんと金切り音がしたかと思えば、残り二人のELFが悲鳴を上げる。
しかし――。
「あれ、なんともない?」
「びっくりさせやがって……」
何かされたようだが二人の意識は無事だった。
ほっと、息を吐いた列車強盗の頭目とおぼしき男――。
「うん?」
少し薄まった霧の中に彼が目を向けてすぐ、とてつもない違和感を覚えて彼はその目を擦った。目の前に立っている子分達の顔は間違いなく見知ったモノ。
だが――その顔と身体がちぐはぐになっている。
「あ? お前、なんで左にいるんだ? さっきまで右にいたよな?」
「そういうお前こそ!! ていうか、なんだよその身体!! おまえいつのまにそんなにデブっちまったんだよ!! 増加装甲盛り過ぎだろ!!」
「うっせえ、お前に言われたくねえよ、デブ――って、あれ?」
同時に攻撃を受けたELF二人が視線を交わす。
さっと彼らが腕を上げれば、肩の上に乗ったそれがぐらりと揺れる。
それは生首。
お互いの肩より上についていたいたもの。
「「それ、俺の身体――」」
そんな呟きを残してずるりと二つの頭が地面に転がり落ちる。ギャンと汚い音を立ててそれは転がると、彼らを差配していた頭目の足下に転がった。
霧の中からのっそりと現れるのはELF娘。
その頭部からは――歪な銀色の腕が伸びていた。人の腕とはほど遠い、彼女の背丈ほどある大きな腕。しかも、研ぎ澄まされた刃をその先に持ったものだった。
「どうです、これが機能美というものです。貴方のようなヤニで曇った目でも、分かりますよね――この禍々しさは」
「ひっ!!」
列車強盗の頭目が返事をするより早く、その身体はELF娘の第三の手により、バラバラに寸断された。解体ではなく、寸断。フレームも構造も関係なく、それは哀れな機械人形の身体を鉄くずにあっさりと変えたのだった。
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