第1163話 ど女修道士さんと自動航行
【前回のあらすじ】
イーグル市に向かって出発した
去り際、彼女達は世話になった呉服屋シーマ村の女社長から、危険な神聖遺物【ダブルオーの衣】について聞かされる。
身に纏った人間の精神を侵食し、戦闘狂へと変貌させてしまうそれに、女社長はかつて関わっていたことがあった。そのことへの後悔から彼女は女修道士たちに、これからの冒険でもしそれを見つけることがあったら破壊してほしいと頼むのだった。
まぁ見つけるも何も、既に着ちゃってるんですがね――。
「これ、今の所見つかってるのは、兄さんのとエリィの奴の二つってことでいいのよね?」
そうなりますね。
全部で9つありますので残り7つ。
最大で7人の変態がこれから女エルフ達を襲う予定となっております。
とはいえ、もうそろそろ巻きに入ろうかというこのタイミングで、そんなに出せるとは思えませんが。
「考えなしに話を進行させるからよ……。展開もなんだかダレダレだし、もっと見せ場を意識した感じの話作りをしないとダメじゃない。やる気あるの?」
なかったら書いてやしませんがな。
と言いつつ、書籍化作業にそういうリソースを全部引っ張られて、こっちでは頭を使う気になれないってのはあると思います。
読んでくださってる方、どうもすみません。
実はもう書くだけで結構この作品手一杯だったりします。
書籍化もWEB作品も、全力を投じられるくらいできる作家ならよかったんですが、僕はこれが限界のようでございます。なんとか今後も続けようとは思っておりますが、書籍化作品の方が落ち着くまでしばしご容赦ください。
◇ ◇ ◇ ◇
「だぞー、艦橋広いんだぞ。視界良好なんだぞ」
「わーいっ!! 広いお部屋だぁー!! 見てみておねーたま!! でっかい椅子があるよ!! あれ、エリィのね!! エリィのだからね!!」
「はいはい、分かったわよ。ちゃんと落っこちないようにベルト締めるのよ。おっと、やったねレアイベント発生だ。もちろん、ステータスアップ一択よね!!」
「……はぁ、なんだか出発早々につかれる展開ですね」
わちゃわちゃと戦艦のブリッジになだれ込んだ女エルフ達。
魔神を倒す旅に出てからというもの、やけに船に乗るようになったからか今更驚くようなことはない。流れるようにデッキの席に着席すると、彼女達はまずはひとつ息を吐いた。
とはいえ、相変わらず女エルフはソシャゲに夢中。
新女王も艦長席で訳も分からずはしゃいでいる。
まともに今後の方針を話し合えるのは女修道士とワンコ教授のみ。まぁ、彼らもこの旅を経て冒険者として貫禄もでてきたが――それでもやっぱり生粋の冒険者では彼女達はない。
自分たちで全て解決しなくてはいけないこの状況は、ちょっと彼女達にしてみると思いもかけない心労だった。
「……だぞ、コーネリア!! モーラもエリィもこうなっちゃった今、僕たちがしっかりしなくちゃいけないんだぞ!! お互い、頑張るんだぞ!!」
「そうですねケティさん。頼りにしていますよ」
デッキに配置されているオペレーター席。そこに腰掛けた二人が顔を合せてお互いを励まし合う。空元気ではあったが、こういやり取りが今の二人には必要だった。
せめて女エルフだけでも正気に戻ってくれれば。
なんて弱気を女修道士が首を振ってはらう。
そんなことをしているとデッキ正面の窓に人影が表示された。
「ようこそ我が艦へ。シーマ艦長から話は聞いております、異邦の冒険者たちよ。我々、破壊神の使徒達の為に戦ってくれることを心より感謝します」
「貴方は?」
「私は当艦の運航制御を担当しているシステムです。本艦は、これよりシーマ村艦長の命に従い、イーグル市の地下約100メートルにある海中ドッグへと向かいます。到着までの時間は、過去の海図データから概算したところおおよそ五時間弱です。それまで、艦内でどうぞ充分ご休息ください」
どうやら
それはそれで助かるやら手持ち無沙汰やら。
よろしくお願いしますとシステムに御礼を言いながらも、少し落ち着かない女修道士。そんな彼女とは対照的になにやらそわそわとワンコ教授が手を上げた。
新しく接する古代技術に、どうやら考古学者の血を抑えられないらしい。
「だぞ!! せっかくなんだぞ、到着までの待ち時間にイーグル市の情報について教えて欲しいんだぞ!! あと、この船の設備も詳しく教えて欲しいんだぞ!!」
「承知しました。まずは、イーグル市についてですが――」
イーグル市について彼女達が説明された内容は、知恵の神のマザーコンピューターから聞いた内容とそう違いはなかった。破壊神側の兵器を造っている都市。そして、秘密戦隊などが活動拠点としている都市。
新たに手に入れた情報と言えば、その都市で開発されている兵器について。
「わたしのような戦艦も多くはイーグル市で建造されています。ドッグなどの施設があるのもそのためです」
「だぞぉ。するとダイナモ市より危険な都市なんだぞ」
「そうですね。再稼働してからこっち、どのような活動をしているのかは分かりませんが、市内ではまだ兵器が開発されているかもしれません。まぁ、そうは言っても、都市対都市の対決ならともかくこのようなゲリラ戦となれば、驚異となるのは機械鎧くらいでしょうがね」
「機械鎧?」
「人間やELFが搭乗して操る大型のからくり人形です。戦神さまが開発された鉄の巨人を元に、破壊神さまが改良を加えた兵器ですね。特殊能力を持ったファクターを必要とせず、誰でも操ることができるんですよ」
「……そう言えば、キングエルフさん達もそんなのに乗っていましたね」
さきほどダイナモ市でキングエルフ達と共闘した時のことを二人は思い出す。
キングエルフは生身だったが、彼の仲間は何やら大きな鎧を纏っているようだった。敵もまた、人間の形を――ギリギリ模したようなものだった。
アレを造っているのかと思うと、ちょっと心が落ち着かない。
ぞわりと背中が泡だって
「もし敵が機械鎧を使ってきてもこちらには対抗する手段があります」
「だぞ? 手段って?」
「あんな大鎧を相手にできる武器や罠があるんでしょうか?」
「機械鎧には機械鎧をぶつければいいのですよ。艦内には、旧式にはなりますが戦闘用の機械鎧が何台か収容されています。それを使ってください」
思いがけないシステムの申し出に顔を見合わせるワンコ教授と女修道士。
これから先、戦闘能力の乏しい二人でどうやって冒険しようかと悩んでいた彼女達にとって、それはなんとも嬉しい朗報だった。
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