どエルフさん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、奴隷狩りに襲われていたエロい女エルフを助ける。エッチなエルフたちとはじめるきままなハーレム冒険者生活。~
第1152話 どエルフさんとお局リーダーポジション
第1152話 どエルフさんとお局リーダーポジション
【前回のあらすじ】
女エルフ達の前に突如姿を現わした海母神マーチ。
基本的に人類に不干渉を貫く七つ柱の神々が、どうして急に姿を現わしたのか。困惑する女エルフに女神は「私的な理由」でこの場に顕現したことを話した。
はたしてその私的な理由とは――。
「私はただ、貴方のそのセンシティブな行為に怒っているだけ。ここ最近の貴方のとどまることを知らないセンシティブに怒っているのですよ」
今更な怒りであった。
この作品最大の売り。
女エルフのどエルフ行動に今更ながら眉をしかめた海母神マーチ。
一度は自分が力を貸した相手が、ヒロインにあるまじきはっちゃけぶりに見るに見かねたのだろう。その気持ちは作者として痛いほど分かった。
「いや、お前がやらせとるんやろがい」
こんなアホでスケベなことしかしないヒロインなんて嫌だった。
スケベでも、もっとこう胸を打つようにせつなくて、ドキドキするような奴なら良かったのに。なんで親父ギャグとか薄ら笑いしか出てこない感じなのか。
清楚気取りというのもギャグでしかない。
どうして、どうしてこんなヒロインに……。
「……本当、どうしてだろうね」
なんにしても彼女が群を抜いてのセンシティブキャラなのは言い逃れの出来ない事実。今更ながらも鋭い海母神の指摘を、女エルフは何も言い返せないのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「うぅっ、私だって好きでセンシティブキャラやってる訳じゃないのら。普通に生きてるはずなのに、周りがあれこれ言ってくるからそうなっちゃっただけなのら」
「そのなのら口調もあざとい。いい歳こいてそういう語尾を平然と言えるのもまたセンシティブ。見た目がロリだったり、そういう口調が似合う声ならともかく、お前のようなババキャラがやったら、みんな気まずい空気になるのが分からないの?」
「……いいすぎじゃない?」
ぐすりと鼻をすする女エルフ。
そんな彼女に厳しい視線を向け続ける海母神。
ひりついた空気にどうしていいのか分からない感じに女社長が苦い顔をする。
クリーニングルームになんとも言えない気まずい空気が漂った。
そんな空気を一掃したのは、海母神のため息だ。
「まぁ、確かにちょっと言い過ぎだったかもしれません。モーラさんも、何も好きでセンシティブキャラをしている訳ではないのですからね」
「そうよ!! 私だって好きでこんなことやってないわよのら!!」
「世界を救うパーティーのヒロイン。昨今はスタンダードになった隙が多くて親近感のあるヒロインキャラ。それを演じようとあえてそのようなセンシティブをしている。貴方たちの都合は私も分かっているのです」
「じぇんじぇんわかってないけれど、そういうことにしといてなのら」
「しかし!!」
びしりと女神が指を女エルフに向ける。
そういう事情があってもやはり見過ごせないことがある、一言申さねばならないことがあるということなのだろう。力強く突きつけられたその白い指先に、女エルフは再び黙り込んだ。
女神の威厳を肩に背負って海母神マーチが口を開く。
「いくらそれが世の流れとはいえ、おざなりにやっていいものではありません。センシティブキャラを演じるのならばそれはそれとして、ちゃんとツボを押さえておかねばいけません」
「……なるほどなのら。センシティブで笑われるにしても、ちゃんと芯は残しておけってことなのらね。分かったのら気をつけるのら」
どエルフの流れになると流されっぱなし、もはや弁明も弁解もできない女エルフには耳に痛い指摘である。けれども確かに大事な話だ。
センシティブセンシティブと弄られるヒロインキャラやVTuberも、ちゃんと大事な核となる部分を持っている。どれだけ汚れキャラムーブをしても、最後にはそのキャラのおかげでイメージが挽回できる。
ただただ、ふるわれるどエルフに流されて、色物キャラに身をやつす女エルフに一番足りていないもの。ヒロインというよりもキャラクターとしてしっかり持っていなければいけない芯。それがないことを女神は叱りに来たのだ――。
言われて初めて気づく己の未熟。
恥じるような心地で女神の叱責を噛みしめた女エルフは、あらためて畏敬の視線を海母神へと向ける。
流石は多くの人を導き慈しむ女神。
その厳しくも温かいアドバイスに、誹謗中傷どエルフ扱いに荒んだ女エルフの心がほんのちょっぴり癒えた。
これからは、ちゃんと自分を持ってどエルフしよう。
どエルフだと言われて、それに慌てふためき、弄られて、馬脚を現わしても、ちゃんと清楚な自分を見失わないでおこう。たとえ周りがなんと言おうと、自分は清楚なのだから。
周りに流されない勇気。それを海母神は伝えたかったのだ――。
「つまり!! 私が言いたいことはただ一つ!! ウワキツ力とセンシティブ力、その二つを兼ね備えた伝説のウワキツ戦士になり得る素質があるというのに、貴方はそれを充分に生かしきれていない!! なんて勿体ないことをしているんです!!」
「ちがった、またなんかへんなとっくんさせられるやつ」
「最近はもうすっかり私の与えた
「お局リーダーポジション」
限りなく要らない素質に女エルフが白目を剥く。
心配してくれているのだと思ったら違った。やっぱりこいつもどエルフネタ弄り。
女エルフにさらなる業と属性を与えるべくやって来たのに間違いなかった。
これ以上、不毛な属性を重ねられたくない。
女エルフの顔が恐怖に引きつり青く染まる。それじゃ、話はこれくらいで――と逃げだそうとした彼女の肩を、がっしりと女神が掴んでとめた。
「ということでモーラさん、貴方には立派な魔法少女ひいてはウワキツZ戦士になってもらうために、これから試練を受けてもらいます」
「なりたくない!! なりたくないのらそんな戦士!!」
「何を言っているんですか!! 戦士としての格が上がれば戦闘も楽になるし、キャラも立つし、いいことずくめなんですよ!!」
「変なキャラなんてもうこれ以上必要ないのらよ!! 魔法少女だけでいっぱいいっぱいなのに、もう変なキャラ押しつけないでよバカァーなのら!!」
ヒロインが理不尽をこうむるのもまた、最近のこの手のお話ではスタンダードな展開。そして女神が少し残念なのもここ最近の風潮。
哀れ女エルフ。
ここまで状況がバッキバッキに固まってしまったとあっては、もはや逃げる余地すら彼女にはないのだった。
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