第1137話 ど仮面の騎士さんと新星

【お断り】


 今週は筆者多忙につき、未推敲バージョンでお送りします。

 ちょっと粗くてもどうか許してください……。


【前回のあらすじ】


 生母を失い、国を追われ、匿ってくれた人々も無惨に殺される。守ると誓った義弟さえも失った仮面の騎士ことエドワルド。

 中央大陸へと向かう航海を荒れ狂う嵐の海に遮られて、暗黒大陸へと舞い戻った少年。その瞳には深い後悔と絶望が宿っていた。


 そんな彼に近づいたのは、暗黒大陸の大魔女――ぺぺロペ。

 彼女によって少年は、今の仮面の騎士へと育て上げられて行くことになる。


 もう二度と、自分から大切なモノを奪わせないように。

 己の無力さに絶望せぬ事がないように。


「……いや、なんか壮絶な過去でこれまでの悪行を洗い流そうとしているけれど、コイツが白百合女王国にやったこと、私は許してないからね」


 なんて懐の浅い女だどエルフさん。

 もうこれ、流す流れだったじゃないですか。敵だけれど、実はこんなにも深い事情があったんだなって、受け入れて人気出ちゃう所じゃないですか。

 これで人気が出なかったらエドワルドくん――ただの道化やで。


 まぁ、それはそれでいいか。


「おい、もうちょっと自分のキャラに愛着持ったれや」


 そんな感じでようやく回想終了。ここで再び、視点は宇宙戦艦オーカマの風呂場。脱衣所へと移るのでした――。


◇ ◇ ◇ ◇


「セイソさん?」


「……ん? あぁ、すまん。ちょっと考え事をしていた」


「もうっ、びっくりしたじゃないですか。急に仮面を覗き込んで黙るんだもの。僕、何か聞いちゃいけないことでも聞いたのかと思いましたよ」


 すまんすまんと軽い感じで謝る仮面の騎士。

 悪かったなと少年勇者の肩を叩くと、彼は手にしていた仮面を脱衣籠に入れた。「それで?」と、さらに少年勇者が追撃を入れてきたのはその後だ。


「なんなんです、その仮面? どういうものなんですか?」


「いや、お前。なんか訳アリな感じで俺が黙ったんだから、そこは察しろよ。なんでぐいぐい聞いてくるかな」


「いやだって、この流れだと僕が聞いちゃいけないこと聞いたみたいじゃないですか。なんでもいいなら教えてくださいよ」


「いやだわー、さいきんのこってほんとわからなくっていやだわー」


 意外と図々しい少年勇者にがっくりと肩を落とす仮面の騎士。ただまぁ、口では嫌がっているが、まんざらでもない顔だった。

 もう一度、脱衣籠の中の仮面を見て彼は寂しい顔をする。


「……形見だよ。大切な人の」


「形見ですか?」


「あぁ。と言っても、真似て作ったもので譲られたものでもないんだがな。だが、俺という人間の根底を形作っているものだ。俺が俺であるために、これからも戦い続けるために――こいつは必要なのさ」


 そうだったなと仮面の騎士が一人で頷く。

 その瞳には少し暗い感情が宿っている。暗黒大陸の将。今や暗黒騎士に変わって彼らを率いる立場になった男には、やらねばならぬことがあった。


 居心地の良い、この宇宙戦艦の空気にすっかりと浸っていたが――。


「そうだな、俺はもう二度と何も失いたくないんだ。こんなことをしている場合じゃねえ。俺が守るベきものはここじゃねえ」


「セイソさん?」


「……なんでもねえんだ。すまんな、坊や」


 ここは敵地。どんなに居心地が良くとも、気持ちの良い奴らだと言っても、それを忘れてはならぬ。自分の使命を忘れてはいけない。

 仮面の騎士はこの和やかなやり取りの中で、ようやく我に返った。

 そして、当初の目的を思い出した。


 暗黒大陸の繁栄のために、中央大陸および敵対する七つの柱の神々――そこから有益な情報あるいは神聖遺物を持ち帰る。たとえ、隣の少年勇者を裏切ることになり、病床のキングエルフを裏切ることになっても。


 彼は暗黒大陸の将――仮面の騎士エドワルドなのだ。そこからもう、なに一つとして失う訳にはいかない。


「そうだ。自分を見失うなエドワルド。本当に大事なモノがなんなのかを見極めろ」


「なにぶつくさ言ってるんですか。それより、さっさと入りましょうよ」


 そう言って、少年勇者がよいしょと服を脱いだ。

 そうだなとそれに追従しようとした仮面の騎士。


 しかし――。


「なっ……なんだと!?」


 彼の視線は少年勇者の股間に向けられて止まった。

 たまたま、別にからかうつもりとか、どんなものだろうとか色気があった訳ではない。本当にたまたま、そこをちらりと見ただけなのに――彼はそのすさまじさに絶句してしまった。


 少年勇者の股間に装備された、立派なビームサーベルに。


 それは鮮やかなピンク色をしていた。


「……ちょっと、なにを見てるんですかセイソさん!! やめてくださいよ!! 気持ち悪いなぁ!!」


「こいつ、動くぞ!!」


 仮面の騎士の頭に電撃が走る。ぷらぷらと揺れるそのピンク色。そのダイナミックな動きが、彼の心をまたかき乱した。

 なんという躍動感。そして逞しさ。自分のモノとは全く違う、男らしさを少年勇者の股間に彼は見出した。そして戦慄した。


 これが最近の子供――。


「ニュータイプだというのか」


「なに言ってんですか」


「しかし、私とて暗黒大陸陣営の中では、そこそこ大きいということで知られた男だ。えぇい、ちん○の大きさが男しての性能ではないということを思い知らせてくれる」


「いや、だから何をぶつくさ言ってるんですか」


 少年勇者のちん○のでかさに、一人称まで変わるほどのショックを受けた仮面の騎士。さきほどまでのシリアスムードなど本当にどこへやらだ。帰ってこいシリアス。


 わなわなと震える手が掴んだのは手ぬぐい。

 自分のかわいいピンク隊長機などザク――いやザコとばかりに股間を隠すと、彼は少年勇者の前で縮こまるのだった。


 若いのに凄い奴なんて世の中にはごまんと居る。

 どうやら目の前の少年は、そういうすごい奴のようだった。


「なんで前を隠してるんですか?」


「なんでって。お前、そんなの恥ずかしいだろ」


「えっ、まさかセイソさんって、本当に女……」


「違うよ。それなら胸も隠すだろうが……って、そっちもすごい胸板。そして、胸毛。男としてホルモンが違いすぎる」


「もーっ、さっきからなんなんですか、やめてくださいよ人のことをそんな風に見るの。これでも僕、難しいお年頃なんですからね」


 かくして、なんか不穏な裏切りの空気はすっかりギャグにかき消された。

 シリアスも裏切りもなかった。


 来週も、チームオーカマは仲よく人類の未来のために戦います!!

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