第1121話 どエルフさんとまことののろい

【前回のあらすじ】


 ドクターオクトパスくんの協力により変装する女エルフパーティ。

 今一番人気のアイドルグループこと、ENで活躍するVの格好をするメンバー。


 サメ、クトゥルフ、死神と来て、さぁ、残るはカーネルあるいは探偵。

 いったい女エルフはどっちの格好をするのだろうか――。


 恵体のカーネルの衣装でもおいしいし、EN一の暴れん坊の探偵でもそれはそれでおいしい。ただ、なんにしても女エルフのことだから出落ちになるのだろう。

 そう思われたのだが。


「勝った!! どうだ見ろ!! この正統派ドレスを!! お姫様みたいじゃろがい!! これで出落ちとはいわせんからな!!」


 身に纏ったのはピンクのドレス。

 まるで絵本のお姫様。昭和の少女漫画に出てくるご令嬢。

 ENに縁もゆかりもない、お姫様衣装であった。


 んなぁあぁあぁあ!!(いいかげん怒られるぞ)


「見たかこれが私の実力なのらよ!! モーラさんは、本当はやればできるヒロインなのら!!」


「「「……なのら?」」」


 そして、元ネタが分かっているならお察しだろう。

 衣装を着た女エルフの語尾が、特徴的で甘ったるい感じに変わってしまう。


 はたしてこれはなぜなのか――。

 そして、こんなはっちゃけたホ○ネタやってて、大丈夫なのか――。


 KAD○KAWAさん、ホ○ライブさん。

 きっちり償いますんで、案件お待ちしております。


◇ ◇ ◇ ◇


「どうなってるのら!? なんで語尾が変なことになってるのら!?」


「どうしたんですかモーラさん!! そんな、あかたんみたいな話し方!!」


「だぞ!! モーラ、僕のまねっこはやめて欲しいんだぞ!!」


「まねしてないのらぁっ!! なんかこんな喋り方になっちゃうのら!!」


「舌っ足らずお義姉ねえさま……イィッ!!」


「感心してる場合じゃねえのらぁっ!!」


 恐怖。

 いい歳こいた女エルフの語尾がかわいらしいことになる。

 自分でキャラ付けとしてやっているのならともかく、自然にその語尾になってしまうのはなかなかの恐怖である。なまじ女エルフは三百歳、そういうムーブがそろそろ白い目で見られる年齢だ。


 いや、何歳だろうが、人は好きなように振る舞う権利がある。

 語尾がだぞでもいいじゃないか、なのらでもいいじゃないか。

 そんなのは人の自由。それを笑うということは、人の自由を軽視するということ。


 けど、それはそれ、これはこれ。


「いやだぁあああっ!! こんな赤ちゃんみたいな喋り方、イヤなのらぁ!!」


 本人が嫌がっているのだから、しょうがないでしょ。

 だってエルフちゃんなんだもの。


 女エルフ「なのら」語尾に大絶叫。久しぶりに本気で嫌がる。

 自分ではクール清楚系を自覚しているのだろう。ピンクのドレスを着ておいて今更、かわいい系のムーブがはずかしくなったのだ。

 確かに、おまぬけだけれどかわいい感じではない女エルフに、愛らしいその口調はバチバチに似合っていなかった。


 違和感がちゃんと仕事をする語尾だった。


「どうなってるのよタコ野郎!! なんでこんな喋り方になるのら!!」


「だお、分からないんだお。僕のせいじゃないんだお」


「お前の服を着たからこんなことになったのら!! ふざけたこといってんじゃねーのらよ!!」


「やめるんだお!! その口調だといろんな所に迷惑かかるんだお!! そんな一意にモデルが特定されるようなVのマネなんて、やめて欲しいんだお!!」


「うっさい!! おめーがきせたんだろうがぁー!!」


 姫はそんなセリフ言わない。(騎士じゃないからわからんけれど)


 メンバーの中でも中堅所。ちょっと造ったキャラとみせかけ、結構素も可愛い。女の子女の子したキャラだから、誰と絡ませてもいい味を出す。

 そんな感じのVをネタにしたら、そりゃ炎上案件ってもんです。


 無難に一個上の女海賊とか擦っとけばいいのに。

 それでなくても、一個上にはエルフだっているのに。

 どうしてよりにもよってその衣装を着てしまったのか。そして、語尾が妙になる呪いにかかってしまったのか。


 なんのこっちゃえらいこっちゃ。わっちゃわっちゃに慌てる女エルフ達。

 そんな中、ようやく冷静さを取り戻した女修道士が、すぐにステータス確認の魔法を使った。ぴょこりと表示された女エルフのステータス。その状態の欄には。


「まことののろい――って書かれていますね」


「なんなのら!! 聞いたことないのら、そんな呪い!!」


「……だぞ!! まことののろいなんだぞ!?」


 知っているのかワンコ教授。これまた久しぶりに彼女の得意のメソッドが決まる。

 渋い顔をして女エルフ達を見た彼女は、いつものように一人だけ世界観の違う濃い顔をして語りはじめた。


「だぞ、古代文明の文献にある呪いなんだぞ。それにかかった人間は、鼻水を垂らし指で独特の印を結びながら、「なのら」と「ぐわし」を連呼するようになるんだぞ」


「実害しかない呪いじゃないのよなのら!!」


「……呪いってそういうもんじゃありませんか?」


「だぞ!! どうして罹ってしまうのか、なんで罹ってしまうのかは定かではない!! けれど、呪いに罹った人間は、ほどなくして死に絶えるんだぞ!!」


「……そんな!!」


「……どうして!!」


「いや、こんな恥ずかしい呪いにかかったら、誰だって死にとうなるのら!!」


 口調だけならまだしも、鼻水に変なポーズまで決まったら、そりゃ確かにそういう気分にもなるだろう。


 なんにしても、その口調は衣装のせいではなかった。

 なかったが原因不明の呪いによるものだった。


 余計タチが悪い。


 どうすればいいのよと頭を抱える女エルフ。そんな彼女に、この呪いを解く方法は分かっているとワンコ教授が告げる。


「だぞ、割と解呪方法は簡単で、特別なアイテムがなくてもできるんだぞ」


「本当!? 教えて、はやく教えてちょうだいなのら!! このままはなたれ小僧になんてなりたくないのら!! がちょーん!!」


「……もうちょっとじゃないですか」


「……お義姉ねえさま。クソガキになっても、エリィは大丈夫です!!」


「だぞまことの呪いを解くには――髪型をおかっぱにすれば助かると言われているんだぞ。後ろ襟もしっかり刈り上げる本格タイプだぞ」


 ぶふぅと吹き出す女修道士シスターと新女王。

 おかっぱ女エルフを想像してついに腹筋が崩壊してしまったのだ。


 前の回で腹筋に力を入れていたというのに無惨なことである。


「解けても解けなくても最悪じゃないの、バカなのらぁぁ!!」


 髪は女の命。

 なのら口調を解くためだけに、女エルフも流石に頭を刈る気にはなれなかった。

 おかっぱエルフ。確かにそんな特殊なエルフに需要もなさそうだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る