どエルフさん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、奴隷狩りに襲われていたエロい女エルフを助ける。エッチなエルフたちとはじめるきままなハーレム冒険者生活。~
第1100話 どエルフさんといったい誰のこと?
第1100話 どエルフさんといったい誰のこと?
【前回のあらすじ】
下水道から脱出するため、扉の妖精と勝負することになった女エルフ。
勝負の内容は女エルフが頭に描いた人物を、二十の質問で扉の妖精が当てるというモノ。いったい何ネーターなのかというのはさておいて、そんなことできるものかと女エルフは気軽にその勝負を受けてしまった。
しかし、流石に勝負を仕掛けてくるだけある。
「というか、二十問も要りませんね」
「……え?」
「もう分かりました。当ててみせましょう」
「ちょっと、嘘でしょ? 分かったって言うの!? はったりでしょ!?」
最初の一回目から飛ばしてくる扉の妖精。
まさかの質問無しで女エルフが考えている顔が分かったと彼は言ってみせた。質問アリでも難しそうなそれを、はたしてどうすれば当てることができるのか――。
できるはずがない。
そう思った女エルフだったが、その顔はすぐに紅潮することになった。
「モーラさん。貴方が思い浮かべたかは、私ですね?」
そう、実に簡単なロジック。
というか誰もが一回は絶対やる奴。
女エルフが頭の中に思い描いた人物の顔は――目の前の扉の妖精。まさか自分を思い描いているとは思うまい。そういう悪戯心というか、子供じみた発想。
そんなこと考える奴なんてそうそう居ないと思いきや、意外にいるのが世の常。
というかよくあるパターン過ぎて、扉の妖精からすれば当てることなど造作もないことだった。
開始から、すっかり相手のペースに飲まれてしまった女エルフ。
はたして彼女は、この勝負に勝つことができるのか――。
◇ ◇ ◇ ◇
「うぅっ、分かったわ、貴方の力が本物なのは信じてあげる。けど、今回のは小手調べ、軽いジョブみたいなものよ。調子に乗らないでくれるかしら」
「……モーラさん、負け惜しみは流石に情けないですよ」
「そうですよお
「うっさいわねぇ!! 急に顔を思い浮かべろなんて言われても、パッとできる訳ないでしょ!! 私もちょっと焦って判断ミスしちゃったのよ!!」
本当だろうか。
ククク、まさかこいつ、自分の顔を思い浮かべているとは思うまい――みたいなノリで選んだのではないのか。だいたい決めた時に「ちょっと意地悪な相手を選んだ」みたいなことを言っていたではないか。
絶対にわざとやったに違いない。
あからさまな強がりに、女エルフの仲間達が白んだ視線を向ける。
なによ本当なんだからと言い返すのがまた痛々しい。
これ以上罪を重ねるなと諭したい所だが、頑なな所がある女エルフ。そんな言葉をかけた所でまともに聞きはしないだろう。
むしろ余計にムキになる。
もう黙って成り行きを見守るより他になかった。
「では、二回戦。好きな人物の顔を思い浮かべてください」
「……分かった。今度はちゃんと知り合いの顔を思い浮かべるわ」
「いいかな?」
「……えぇ」
女エルフが浅く頷く。
先ほど、初手で痛い目に会わされたばかりだ、今度はちょっとその表情に余裕がない。妙に気負った感じで女エルフが扉の妖精を見た。
その真剣な表情に応えるように扉の妖精が頷く。
「その人物は男性ですか?」
「……どっちかしら?」
「質問には、はいかいいえで答えてくれ。でないと不公平じゃないか」
「え、いや、そのどうなんだろう。本当にどっちか分からないんだけれど」
どういうことだと女修道士たちがざわつく。そして、扉の妖精もちょっと渋い顔をする。性別が分からないということがあるだろうか。
ゲームを有利にするため、わざと質問に曖昧な答えをしているのかと思われたが、どうにもそういう話ではないらしい。
「うーんと、男なのか女なのか、私には判断できないのよね。なんていうか、本人がどう思っているかだから」
「それはそのつまり、どういうことだ?」
「はいかいいえでしか答えちゃいけないんじゃないの?」
そしてルールを逆手に取る。
思いがけないファインプレーに、扉の妖精の顔から完全に余裕が霧散する。気難しそうに顔を歪めた濃い顔の妖精は、まぁ、それならいいさと少し尊大に頷いた。
じゃぁ次の質問だと、妖精は続ける。
「そいつは君にとって身近な人間かい?」
「違うわね。ほぼ他人と言っていいかしら」
これにもまた女エルフパーティがざわつく。
ほぼ他人の性別不明の人物になんて心当たりがなかったからだ。
これまで冒険でいろいろな人物と顔を合せてきたけれども、そんな奇妙な奴とは出会わなかった。
となると、これはもしやと
同じように妖精も勘ぐったのだろう、分かった分かったという余裕の表情をすると、彼は矢継ぎ早に次の質問に移った。
「それは実在する人物ですか?」
「はい」
「嘘だろ!?」
実在する人物だった。
女修道士も扉の妖精も、すっかりと架空の人物だと思い込んでいたが、実在する人物だった。てっきり、女エルフが愛読している小説か何かに出てくる、キャラクターか何かだと思っていたのだ。
驚き、衝撃、そして動揺。
自在する人物で性別不明の奴なんているだろうか。いったいどういう素性なら、そういう状態になってしまうというのか。
混乱に目をしばたたかせる扉の妖精。
また焦った顔つきに戻った彼は、じゃぁとさらに質問を重ねる。
「その人物は人間ですか?」
「うーん、どうなのかしら、これも微妙ね」
「……微妙とは」
「元人間って言うベきかしら。人間として振る舞っているけれど、実際には人間じゃないっていうね。これも本人しか分からないわね」
本人が性別も人間であるかも決めるようなそんな存在なんてあるか?
想定外の答えが返ってきすぎたのだろう、扉の妖精が難しい顔のまま腕を組んで固まった。同じく、
いったいそれは誰なのか。本当にそんな人物いたのだろうか。
いや、待て――。
「五問目だ。それは、君が今のパーティーで旅をしている時に出会った人物?」
「はい」
「はいなの!?」
もしかすると女エルフが過去に出会った人物かもしれない。
エルフやドワーフ、あるいはモンスター。そのような存在の中には、彼女が語ったような不思議な生物もいるかもしれない。
そう思って、投げかけた質問は見事に打ち砕かれた。
今、女エルフが頭の中に思い描いている人物は、まちがいなくこのパーティーメンバーが一度は会ったことがある人物だった。
「え、それ、本当なんですかモーラさん? 私たち、その方に会ったことがあるんですか?」
「うん、会った会った。忘れちゃったの? ダメじゃないコーネリア?」
「ダメって、そんな」
「貴方にとっても大事な人でしょ」
「私の大事な人!?」
ひゃぁと
思いがけない自分への飛び火にそんな声も出てしまうと言うもの。そしてなにより、まったくそんな人物に
いったい誰の顔を思い描いているのか――。
「ふぅん、コーネリアも気づかない辺り、意外とこれいい線行っているかもね」
女修道士の反応に、女エルフはなんだか得意げに微笑んだ。
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