第1086話 どエルフさんとビック

【前回のあらすじ】


 新女王、魔法少女になる。


 女エルフに諭されて魔法少女に変身した新女王。

 前回はピンクのふりふりコスチュームだったが、今回は女エルフの力を借りなかったからか、バイオレットヒロイン枠。キュートながらセクシーという、いわゆるエッな感じの魔法少女としてその姿を現した。


 ほんとエッな方の魔法少女ってダメだよね。

 魔法少女は小さな女の子に希望を与える存在なのに。

 けど、そういうモノが僕たち大きなお友達のためにカスタマイズされているというその事実だけでもう――。


「やめろただでさえすくないふぁんがにげるぞ」


 僕は断然エッな魔法少女アリだと思います。

 なの○ちゃんよりフェイ○ちゃん派です。


 とかまぁ、そんなことは置いておいて。


 変身したはいいけれど、敵の攻撃がそれで緩まる訳ではない。


 女エルフ達を相変わらず猛襲する敵の群れ。

 銀色のスケルトン。人型だったそれは、一瞬にしてワイバーンにその姿を変えると、女エルフ達に休む間もなく襲いかかってきた。

 しかも、一体二体ではない。大群。カプセルホテルで女エルフたちを襲った一団が、そのまま大挙して押し寄せてきた。


 はたしてこのワイバーンの群れにどう対処するのか。

 熱帯密林都市アマゾン編。中盤もそろそろクライマックスへと突入します――。


◇ ◇ ◇ ◇


「きゃぁっ!!」


「エリィ!! このぉっ……!!」


 新女王の背中を襲った銀色のワイバーン。スケルトンが変形したものだけあって、その大きさはたいしたものではない。ただ、鉄の塊がそれなりの速度を伴ってぶつかる衝撃は大きい。


 まともにワイバーンの攻撃を背中から喰らった新女王は、たまらず白目を剥く。一瞬気を失ったか、ふらりと落下したその身体を女エルフは拾い上げると、群れを成して迫るワイバーンに向かって、ピンクのハイメ○粒子砲容赦なく放った。


 直撃。広範囲を焼き切る光の帯に焼かれて、幾つかのワイバーンが煙と共に落下していく。しかし――。


「数が!! あまりに多すぎる!!」


 多勢に無勢。

 次々に穴の中から飛びだしてくるワイバーンの数の方が多い。

 いったどれだけの数が居るのだろうか。まるでこの街のELFの全てが、自分たちに向かって襲いかかってくるような気分に女エルフは陥った。


 そんな彼女の背中で、新女王がはっと目を覚ます。


「すみませんお義姉ねえさま。油断しました」


「大丈夫よ。それより怪我はない?」


「はい。魔法少女のスーツのおかげでしょうか。申し訳ありません。私、さっきから気を失ってばかりで」


「そんなこと言ったら、私なんて何度も何度も宿屋と夜空の行ったりきたりよ――」


 そう言えば、キングエルフたちはどうなったか。ふと、女エルフが気になって視線を一瞬そちらに向ける。ワイバーンが舞う空の下、地面をおぞましく這いずり回っていた巨人は、今は静かに静止している。


 キングエルフが倒したのか。

 それにしては、妙に静かだ――。


『フェラリア!! 気をつけろ!! お前の相手は、相当やっかいな相手だぞ!!』


「兄さん!?」


 その時、どこからともなく声がする。重低音。夜空に響き渡るその轟音は、人の身体が発することができる音量ではない。しかしながら、間違いなく女エルフの兄――キングエルフのモノに間違いなかった。


 長らく離ればなれになっていた兄妹だが、そのくらいのことは通じ合える。

 そして、兄の身になにか予想外のことが起きていることも――。


「どういうことなの兄さん!!」


『すまないフェラリア!! 私としたことが、こんなへまを踏んでしまうとは!! アレックス、それにセイソ!! メンズエステ隊の皆も済まない!!』


 会話を続けつつも、ワイバーンの攻撃は止まない。まるでダーツのように鋭く飛来するそれらを、絶えずビームで焼き切り、撃ち漏らしたものを新女王が槍で突きながら、彼女達は見晴らしのいい場所へと移動する。


 電波塔。

 朱色のさび止めの塗装が施されたその先に降り立った魔法少女が息をつけば、突然大地が激しく揺れる。それと同時に、彼女達を襲っていたワイバーンの動きがピタリと止まった。


 振動の主は、間違いなく――デビルほにゃンダムだ。


「バカな!! エルフキングの野郎がやったんじゃなかったのか!!」


「コクピットに突入してから、やけに反応がなかったと思ったら――」


 狼狽える少年勇者と仮面の騎士。


「どういうことなの兄さん!! お願い返事をして!! 無事なのよね!!」


 いつもだったら、兄の危機を軽く流す女エルフが、真剣な顔をして彼を思いやる。


 そんな中。活動停止したと思われたデビルほにゃンダムの身体が膨張したかと思うと、その触手が突然それを包み込むように絡みついた。植物のようだったそれは、いつしか蚕の繭のように変わり、巨大な球体へと変貌する。


 まるでその中に、巨大な生命体でも育んでいるようなフォルム。

 ぞっとしたものが女エルフたちの背筋を走る。


『すまない、まさか罠だったとは気がつかなかった。デビルほにゃンダムが姿を現したのは、偶然などではなかったんだ』


「どういうことなのよエルフキング!!」


『デビルほにゃンダムは、生体反応をコクピット内で擬似的に発生させることで、人間の手によらず自立駆動することができる機械鎧だ。しかしながら、擬似的な生体反応では十全に機械鎧の力を発揮することができない。そのことに、デビルほにゃンダムも気がついていたんだ』


「待って、それ、私たちに前提知識がない話!! 説明してって言ったけれど、さっぱり分かんない!!」


 だったら聞くなと言うものだが、話の流れだから仕方ない。

 そして、女エルフは気がつかなくても、キングエルフの仲間達は分かっている。


 そうかそういうことかと、何やら神妙な返しを仮面の騎士がする中、デビルほにゃンダムを包み込んでいた繭が、今、ゆっくりと割れた。


 中かから現われたのはそう、機械鎧というにはあまりに生々しい姿――。


『デビルほにゃンダムは、生体ユニットを欲していたのだ。コクピットの中に搭載し、機械鎧の力を完全解放するのに必要な、生身の人間を』


「……そんな、嘘でしょ?」


「えぇっ、そ、そんなバカな……」


「おいおいマジかよ。聞いてないぞ」


「そんな、キングエルフさん!!」


『デビルほにゃンダムをさらに完全な機械鎧にするために。より、人間に近い機械鎧として完成するために。そして、完成した姿が、この――ビックキングエルフ!!』


 白い肌、天を突く巨体、そして、たなびくふんどし。

 おっきくなってもいいお尻。まるで機動時の排気のように、プリッとケツを引き締めたビックキングエルフは、そのまま空に向かって荒々しい咆哮を上げた。


「いや、そうはならんやろ!!」


『ロボットは突き詰めると最終的に巨人化ネタに繋がるのだ!!』


 キングエルフ巨大化する。

 デビルほにゃンダムと合体したエルフは、その身体を精巧にスケールアップして、未来都市の夜空に君臨した。

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