第1057話 ど女修道士さんとサービス回

【前回のあらすじ】


 女エルフリンボーダンスシーン全カット。


 貧相でマニアックな身体つきをしている女エルフの魅力をどう表現していいのか分からない。いや、そもそもそんな身体に魅力があるのか。

 ちょっとそういう発育不良気味な女の子に嗜虐心をくすぐられるという、拗らせた性癖している作者を除いてノーサンキュー。需要のないものはやらないという、優れた商業センスを発揮して、女エルフのサービスシーンは白紙撤回されたのだった。


 ……どうなんですかね? 需要、あるんですかね?


「胸のない女を辱めて興奮するような奴なんてそんなに数が居てたまるか」


 自分のヒロインとしての価値を全否定してくれて助かる。


 とかまぁ、そういう話は置いといて。


 実際問題、こういうサービス的な話って、僕はあまり得意じゃないので避けてきたんですよね。塩梅がわからないというか、どう書いていいのか分からないというか。

 なので、ここもスルーしようかと思っていたのですが、こう「お前さん書籍化に向けて作業をしているのに、そんな体たらくでいいのか。一応アレもお色気セクションの奴だろ」と、内なる誰かに言われた気がしたので――。


 ちょっとシコりん頑張ってみようかなと思います。


「ちょっと待って、ホントヒロインどっちか分からない!!」


◆ ◆ ◆ ◆


「まったく、仕方がないですね。そうやって、自分が受け入れられないのを周りのせいにしてばかりでは孤立するだけですよ。ダメな所は努力でカバー、カバーできなくても努力していると周りに見せることが、円満な関係をつくりあげるんです」


「アンタみたいに何でもできる奴にそういうこと言われてもね」


「なんにもなんてできませんよ。できることしかできません」


 まぁ、そこで私が頑張る所を見ていてくださいと女修道士シスター

 拗ねてしょぼくれている女エルフに背中を向けると、彼女はモーモーダンスの棒の前へと移動した。


 そしてそのまま、掲げられた竹の棒を手に取りそっと撫でる。

 優しく、そして艶めかしい手つきで、節くれ立った茶色いその棒をなで回す。ほどよい肉付きの彼女の白い手が、琴でも奏でるように竹の表面をなぞる度に、取り巻きの男達からおぉと熱っぽいため息が漏れた。


 乱暴に触れれば折れてしまいそうな乾いた竹を丁寧に握りしめると、彼女はそれをさきほどよりも一段低い所に置く。女エルフがくぐり抜けた位置からは、拳一個分下。これにはさすがにギャラリーも湧いた。


 貧相というよりも小柄な女エルフでも先ほどの位置をギリギリくぐっていた。

 そんな彼女より一回り大きな身体をしている女修道士だ、とても一段下げた所をくぐれるとは思えない。いや。見事な体幹と脚力があれば可能かもしれないが。


 難易度の上がったダンスに嫌が応にも場は高まる。そこに加えて、その見事なまでの肉の躍動についつい目が奪われる。女エルフと違って、一瞬にして場の男達の視線を集めた女修道士は、モーモーダンスの開始地点に立つと、すぅと息を吸い込んだ。

 彼女の深呼吸に、少し浮き足立っていた場が静まりかえる。


「……行きます」


 太鼓が打ち鳴らされ歓声が砂浜に立ちのぼった。

 真っ赤な炎を背景にして、女修道士が徐々に徐々に棒へと近づいていく。


 まずは半歩、脚を棒の向こうにふみこませる。

 女エルフと違ってたいそう分厚い胸当てを装備している女修道士である。棒の位置を下げたのと相まって、もうこの時点でかなり尻は下がっていた。


 大きく開かれた脚の筋肉がうっすらと浮かび上がる。

 まだ震えるほどの角度ではないが、じっとりとその表面には汗が濡れそぼっていた。絹のように白くなめらかな彼女の肌が怪しい光を放ちはじめる。


 そしてそんな肌色の奥には、黒と白の斑になった三角の布。

 二つに分かれる脚の根元に食い込むそれは、想像以上にしっかりとした布でできているのか、彼女の女性として秘めるべき場所をしっかりと守ってくれている。女修道士シスターの手慣れた動きと相まって、予想外のハプニングを引き起こすことはまずないだろうという安心感があった。

 

 とはいえ、太ももと股のラインにそって食い込むモノトーンには怪しい魅力が宿っている。生気の無さとでも言うべきだろうか、作り物のどこか冷たいたその表面が、すぐそこにある柔らかそうな女修道士の身体を絶妙に引き立てていた。


 軽く一歩踏み込んだだけで即死の間合い。

 いったいこれからどうなってしまうのか。そんな不安が砂浜の上に音もなく広がる。冷めた期待の視線が飛び交う中で、ふぅと女修道士が息をついて、それからゆっくりと腰を下ろす。


 彼女の胸の前でぶら下がっていた、大きな二つの袋が重力によって微かに身体の腋に流れる。まだまだ二十代ということもあって、胸に張りはある。無様に垂れるということはないが、それでも胸の谷間を広げてでろんと零れたその光景に、うわぁあぁとひときわ大きい歓声が即座に上がっていた。


 斜めになったしっかりとした胴体の上に、まるでプディングのように放り出された二つの肉の塊。こちらもまたしっかりとした布で覆われているが、お椀型のおっぱいの先はほんの少しだけ盛り上がっている。それが女修道士の息づかいによって揺れる度にビキニの前紐がピント揺れ、くすぐったそうに女修道士が顔を歪めた。


 もどかしさを耐えるように、女修道士が黙り込む。その一方で、オーディエンスはそのボルテージを挙げていく。


「モーモー!! モーモー!! モーモー!!」


「モーモー!! モーモー!! モーモー!!」


 そのかけ声は彼女の成功を願うモノか。

 それとも失敗を願うモノか。


 熱い声援飛び交う中、また女修道士が腰を落とす。四十五度を超えただろうか。下半身をグッと前に突き出せば、より彼女の美しい脚のラインが前にまろび出て、なめらかな脚の曲線が露わになった。


 緊張からお腹に走っていた汗が静かに流れてその繊細なラインをなぞる。

 そのまま、彼女は一歩前に踏み出した。逸らしたお腹の稜線がゆっくりと、棒の下をくぐっていったかと思えば――。


「あぁん」


 その大きな胸が、案の定竹の棒をひっかけて、ぽろりとその場に落ちる。それと共に、緊張の糸が切れたように女修道士はその場にお尻をつくと、砂浜に背中を預けるのだった。


 失敗。やはり棒が低すぎたのだ。無理もない。

 けれども――。


「モーモー!! モーモー!! モーモー!!」


「モーモー!! モーモー!! モーモー!!」


 オーディエンスは盛り上がる。それもそのはず、倒れこんだ彼女の脚は大きく開かれ、先ほどモーモーダンスに挑んでいた時よりも大胆なことになっていた。さらにそこに彼女が巻き上げた砂がいろっぽく付着して、なんとも言えない輝きを放つ。

 さらには落とした棒は奇跡的に彼女の胸の上に転がっており、まるで何かを想像させるように二つの房が作り出す谷間におさまっていた。


 こんなものを見せつけられて、どうにかならない男がいるだろうか。


「……いやですね、そんな失敗したのにじろじろ見ないでくださいよ」


「「「モーモー!! モーモー!! モーモー!!」」」


 いないはずがない。

 流石は名指しでダンスをリクエストされるだけのことはある。おそるべし女修道士、おそるべしモーモーダンス。思いがけず、彼女が披露したそのダンスは、人を魅了する不思議な力に満ちたものだった。


 流石だな女修道士シスターさん、さすがだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る