第1046話 どエルフさんと潜入怪人工場

【前回のあらすじ】


 宇宙戦艦オーカマ陣営ついにスタンバイ。

 それぞれの機体をついにキングエルフ達は選び終わった。終わってみれば、なんというかちょっとロボットモノらしからぬチョイスだが――まぁそれはよし。


 ついに心強い救援が男騎士達の下に駆けつけるのか。


 という所で、ここでまた場面転換。


 流石に二週連続サブの話というのはどうかと、女エルフ陣営に視点が移ります。


 魔法少女いじりをなんとか回避し、ダイナモ市に潜入した女エルフ達は破壊神の目を欺きミッションを達成することができるのか。

 いよいよ本格的な戦いがここからはじまる――。


「とか言っといて、結局いつものトンチキなんだろうな。そうなんだろうな」


 あ、わかりますかモーラさん?


「……なんか最近、ギャグで展開誤魔化してない? ちゃんとストーリー考えて書いてる? というか、考えるリソース残っている?」


 ちょっと怪しいかもしれません……。(書籍化作業につきっきりで、ちょっとこちらのリソースを希釈している部分があるかもしれません。どうかご温かい目で見守ってあげてくださいm(__)m)


【追記】


 とか言ってたら、新規に立ち上げたえっちな小説の原稿で投稿遅れてしまいました。申し訳ございません……。(よければこちらもよろしくお願いします)


○幼馴染のふりをして女子高生のバーチャル女子会に顔を出したら、なぜかみんな全裸だった

https://kakuyomu.jp/works/16816700427595637778



◆ ◆ ◆ ◆


「しかし、ダイナモ市に潜入したはいいけれど、これから具体的に何をすればいいのか。なにか聞いてないのキッカイマン」


「ですね。とりあえず潜入しろとは言われましたが、具体的なことまでは聞いてません。我々はいったい何をすればいいんでしょうか」


「だぞ。どうなんだぞ、何か言ってたんだぞマイコーは?」


「……いや、特にこれと言って聞いてはいない。マイコー達も、破壊神については詳しくないんだ。そこも含めて、君たちになんとかして欲しいということだろう」


「ずいぶん投げやりな依頼ですね」


「まぁ、引き受けたからには全力でやるしかあるまい。ともあれ、そういうことならまずは情報収集だ」


 久しぶりになんだか冒険者らしいことをし始める男騎士達。

 街に入ってすぐの広場で散会すると彼らは三チームに別れて活動することにした。


 男騎士とキングエルフの男チーム。

 女エルフと女修道士シスターの女チーム。

 そして、なんかあるとまずいので、あまり派手に動くことはやめておこう、ワンコ教授と新女王のお子ちゃまチーム。


「だぞ、僕たちはとりあえず宿を探しておくんだぞ!!」


「すみません、お義姉ねえさま、ティトさん。皆さんに調査はお任せしますね」


「……まぁ、妥当な選よね」


 お子ちゃまチームに全体のサポートを任せ、男騎士と女エルフ達が別々に調査をする。このメンバーでは妥当な組み合わせだった。


 男と女を混成にした方が戦力的な釣り合いはいいかもしれないが、そこは今回は調査がメインの活動内容。戦力よりは、性別により入りづらい所に入れる方が重要だと彼らは判断した。とはいえ、まだどこに潜入するかも決まっていないが。


「とりあえず、俺たちは近場の冒険者ギルドに顔を出してみることにする」


「そう。じゃぁ、私たちは商工系のギルドかしらね。魔法使いギルドとかあるといいんだけれど」


「教会もないか探してみますね。とにかく、みなさん自分の土地勘がある所に顔を出してみることにしましょう。今は一つでも情報が欲しいです」


 そう言うと、男チームと女チームは二手に分かれた。


 さて。


 久しぶりに女修道士シスターと二人きりになる女エルフ。

 男達の目がなくなったとみるや、少しくだけた感じに伸びをする。


 なんだかんだで女同士というのは気が楽なモノである。ワンコ教授や新女王も女ではあるが、年齢が近い――実際には数百歳の差はあるが、精神年齢というべきか――女修道士にはまたそこに輪をかけて気の緩むモノがあった。


「ったく、まぁこういうふざけた展開はいつものことだけれど、今回のは飛び抜けてどうしようもないわね。なによ、笑ってはいけないって」


「ですね。まぁ、モーラさんさえ大人しくしていれば、実質ダメージはありませんから。そこまで難しい試練じゃありませんよ」


「まてこら、なんで私が原因みたいな言われかたしなくちゃならないのよ」


 原因はお前らだろうがと鋭くツッコミを入れる女エルフ。

 するとそれを躱して女修道士が、アレを見てくださいと指を街頭に向けた。


 訝しげに眉根を寄せた女エルフの視線に飛び込んで来たのは、熱帯密林都市で彼女達が見せられたホログラムと同じ立体映像。青い光によって映し出された、工場とそこで働く人間たちの映像だった。


『ダイナモ市を支える主要産業、怪人工場で貴方も働きませんか。完全週休二日制、福利厚生に社員寮も完備。待遇はなんと正社員。成績によっては、すぐに役員怪人への登用もあります。みなさんの才能を是非イカスミ怪人工場で活かしてください』


「……すごい求人広告ですね。立体映像とは、なんというオーバーテクノロジー」


「いや、驚く所はそこか?」


 最後の待遇はおかしいだろう。

 なぜさんざん頑張った結果が怪人なのか。怪人工場で怪人にされるって、それって本当に昇進なのだろうか。逆に商品にされているんじゃないのか。


 それにしたって怪人工場という仕事がまず意味が分からない。怪人を造るとはなんなのか。女エルフは相変わらずの頭が痛くなる展開に首を捻った。


「とはいえ、ここの主力産業というのは間違いないわけです。ここに潜入するのが一番てっとり早いでしょうね」


「といっても入るのに勇気がいるわよね。うっかり怪人なんかにされてしまったら目も当てられないわよ」


「……え、もう怪人ミミトシマーに改造されていたんじゃないんですか?」


「されとらんわ。この怪人ボンボボンキュッボン。勝手なこと言うんじゃないわい」


 からかいに反論しながらも、女エルフも深くは追求しない。

 女修道士が言ったこともよく分かったからだ。


 確かに今回のミッションの性質を考えれば、この工場にさっさと侵入するのがてっとり早い。だが、そのためにももう少し情報が欲しかった。このままのこのこと工場に侵入しても、何もできずに作業員になるのがオチというもの。


 そこに加えて、変に侵入したら改造される危険性まである。


「とりあえず、工場に突撃するのはまた後よ。ティトたちと合流してからにしましょう。ここで焦っても仕方がないわ」


「ですね」


「ほら、あっちにおあつらえ向きな酒場があるわ、そこで情報収集を――」


『怪人工場で働きたい、将来は自分も立派な怪人になりたいと思ったそこの貴方。理想の怪人になれる、怪人ARを最寄りの説明所で開催しております。是非そこで、ご自身が望む理想の怪人になってみませんか……』


 しかし、その場を去ろうとした女エルフの脚が急に止まった。視線は再び、怪人工場のホログラム。そこで活き活きとした顔で拳を握りしめる、やたらと爽やかなポーズを決める怪人に、女二人はちょと魅入ってしまった。


 理想の怪人。


 怪人AR。


「……まぁ、実際に改造されないなら、いいかもしれないわね」


「……ちょっとくらい、様子を見るのも偵察かもしれませんね」


 ごくりと、真面目な女二人が、ちょっと浮ついた顔をしていた。好奇心は猫をなんとやら、どうやら怪人のお誘いは予想以上に人の心の闇と親和性がよさそうだった。

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