第1020話 どエルフさんと懲罰部隊

【前回のあらすじ】


 卑劣!! 音もなく忍び寄る笑いの罠!!


 突如として女エルフたちの前に現われた異世界転移者ドリフター

 その登場に気を取られて油断していた女エルフとその仲間達。


 絵柄のレアリティ弄りから、繋げて飛び出た女エルフのヒロイン適正△弄り。

 てめぇらしばき倒すぞと女エルフが怒ったのも束の間、女修道士シスターと新女王がその笑いの牙に落ちる。


 そう、どエルフ弄り。

 すかさず敵から向いた、身内弄りの笑いの波に二人は耐えられなかった。


 パロディなら耐えられた。

 観客弄りも耐えられた。

 身内ネタだって耐えられた。


 けど、女エルフ弄りには耐えられなかった。

 だって、いつもいつだってどエルフ弄りで腹筋を鍛えられているのだから。どエルフ弄りで鍛えられた腹筋は、それ故に、どエルフ弄りに対して弱かったのだ……。


「いや、だからってこんなオチあります!!」


 そう、異世界転移者のたかしとみゆき。二人は破壊神からの笑いの刺客。

 絶対に笑ってはいけない女エルフ達を笑わせて、懲罰部隊を引き寄せることを目的とした地獄からのお笑い殺戮マシーンであった。


 はたして女エルフたちの運命やいかに。


◇ ◇ ◇ ◇


「さぁ、大人しくケツを出せ!! このメス○タどもが!!」


「いやぁっ!! 私は、私は神に仕える女修道士シスター!! このようなオゲレツ極まりない罰ゲームをして許されると思っているのですか!!」


「えぇい黙れ!! いっちょ前に清楚ぶりやがって!! 服の下にそんなドスケベな身体を隠しておいて、なにがオゲレツ極まりない罰ゲームだ!! 本当は、こうして欲しかったんだろう!!」


「いやっ、やめてっ、あっ、あっ、あぁん!! 私の清楚なイメージが!!」


「そう言いながら、ケツを良い感じに上げてくるじゃないか!! ほーら!! お前の欲しかった一撃だ――!!」


 ぺしーん!!

 ふにゃふにゃの神の注入棒が女修道士のケツをしばきあげる。


 脅された――にしてはやけによく見えるように高く突き上げられたお尻。安産型でどっしりとしたそれが、ぷるりぷるりと肉感的に揺れる。


 いつもの修道服と違う貫頭衣。お尻をギリギリ覆っているその裾がはらりと揺れれば、女修道士の熟れた女の身体が見えそうで――見えない!!


 ギリギリ。

 センシティブのキワキワを狙うのは流石の一言。

 このような窮地にあっても、女修道士は自分の役割を弁えていた。この場面で、どういうことをすればいいのか分かっていた。


 女エルフとは違う、お色気担当としてのプライド。

 それが、尻をしばかれるという、お茶の間のお笑いを誘うシーンでも、しっかりと意識できていた。これがプロ意識。これが聖職者。あっぱれな心意気であった。


「……笑わないんですかモーラさん?」


「やっぱりわざとか!!」


 なんだか余裕のある感じでしばかれたなと思ったらこれである。

 女修道士シスターは本当に分かっていた。自分の立場が分かっていた。

 そして、このタイミングでしばかれると思わせておいて、女エルフを笑わせにいけば画的に美味しいことまで分かっていた。


 さすがの慧眼。さすがの女修道士。

 彼女は破壊神の眷属に襲われるというピンチを、軽やかにこなしつつ、女エルフを道連れにしようとしてみせた。


 長らくパーティを離れていたがその実力は健在。


 実に頼もしい限りだった。


 そして、お話的には頼もしいが、女エルフはいらんことすなとツッコミを入れに行く手ひどい裏切りであった。笑ってはいけないと言っているのに、笑わそうとするとはこれいかに。


 女修道士シスター

 分かっているし空気は読んでいるけれど、手ひどい裏切りだった。


「いやぁー、せっかくお尻を叩かれるなら、面白い方がいいかなと思いまして」


「いいわけあるかい!! あと面白いっていうかエロいでしょアンタの場合!!」


「けど、何も言わずに黙ってお尻を叩かれる方が、逆にエロくありません?」


 そんなことないだろうと言いかけて女エルフが口ごもる。

 確かに、女修道士シスターほどの美女が、黙って尻を叩かれたらそれの方が逆にセンシティブ。もちろん騒いでもセンシティブには変わりないが、こんな誘い受けのようなムーブをかませば、そりゃシリアスなムードも吹っ飛ぶというもの。


 確かに一理はあった。


「ねっ? 黙って叩かれてエロい空気になるよりは、こうして騒いだ方がまだ健全というものでしょう?」


「いや、そうは言うけど絶対アンタ、やりたくてやってるでしょうよ?」


「そんな!! 私がこんなエロムーブを好きでやっているだなんて!! やりたい訳ないじゃないですか!! こんな恥ずかしいこと!!」


「あ、いや、ごめん、そういうことじゃなくて」


「羨ましいんですねモーラさん!! さては、私が自然な流れでエロムーブしたことが羨ましいからそういうことを言うんですね!!」


「違うわい!! はいまた、そうやって隙あらば狙ってくる!! だからほんと勘弁してちょうだい!!」


 やっぱりこいつ苦手だと女エルフが辟易とした顔をする。

 そんな隠さなくっていいじゃないですかと女修道士がすり寄る。

 敵に攻撃されているというのに暢気なやりとりであった。


 まぁ、言うて尻を叩かれるだけ。

 別に命を奪われるだけでもなければ、何か強烈な呪いをかけられる訳でもないのだ。よくよく考えればそんなに怯えることでもないのかもしれないと、女エルフは妙に達観した気持ちでため息を吐いた。


 だが――。


「嫌っ!! 嫌です!! こんな汚れ役みたいなこと!! 私は白百合女王王国の女王なのですよ!! 貴方たちのような下賤な輩に尻を叩かれるくらいなら!!」


「うぁああああっ!! こっちはガチで嫌がってる!!」


 新女王はどうかな?


 冒険に次ぐ冒険で、酸いも甘いもかみ分けた女修道士はともかく、新女王はこういう経験はまだまだ少なかった。一応、こんなんでも王族なので汚れ役はどうかなと、それなりに配慮されていた。


 なので舌を噛み切らんばかりの嫌がりっぷりを見せる。

 これはまずいと慌てて女エルフと女修道士がすかさず止めた。


 あと少し、気がつくのが遅かったならどうなっていたことやら。女エルフが新女王の口にハンカチを突っ込み、女修道士がその腕を後ろから戒める。いったい誰が懲罰部隊か分からない――そんな状況で、もがもがと新女王は暴れ回るのだった。


「落ち着きなさいエリィ!! ダメよそんな命を粗末にしたら!!」


「そうですエリィさん!! 生きてこそですよ!! 冗談ならくっ○してもいいですけれど、本気でやってはいけません!! くっ○は、止められるか快楽落ちするまでがワンセットなんですからね!!」


「カジュアルくっ○でも同人導入くっ○でもありません!! 一国の主として、人に尻を叩かれるなんて屈辱、受け入れることなどできません!!」


「いや、アンタが笑っちゃうからいけないんでしょ。受け入れられないなら我慢しなさいよ」


「お姉さまの痴態を前にして我慢なんてできる訳ないじゃないですか!!」


 べちり!!


 女エルフが尻をはたきあげる。

 あぁんという気持ちの良い声ときもちのいい顔を浮かべる新女王。

 これでいいかしらと懲罰部隊に視線を向ける女エルフ。少し戸惑い、仲間内で協議した懲罰部隊の面々は、死なれると流石に困るのでという顔をして頷いた。


 どうやら、セルフしりペンもOKらしい。

 幸か不幸かは分からないが、新女王がガチくっ○する展開だけは防がれた。


「はぁはぁはぁ、お姉さまのお尻ペンペン――イィッ!!」


「次はグーで行くからもうやるんじゃないわよ」


 そして新女王もご満悦なのだった。

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