どエルフさん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、奴隷狩りに襲われていたエロい女エルフを助ける。エッチなエルフたちとはじめるきままなハーレム冒険者生活。~
第987話 どエルフさんと絶対に笑ってはいけない
第987話 どエルフさんと絶対に笑ってはいけない
【前回のあらすじ】
なんだかんだとアリスト・F・テレスたちに言いくるめられて、破壊神たちの都市に破壊工作に侵入することになった男騎士一行。
テロ活動なんて主人公達のやることじゃない。
大河小説ならまだしも、これはおちゃらけライトノベル未満WEB小説どエルフさん。ヘビーな上になんとも合理性にかけるその行いに、女エルフは声を上げたが、いつものようにそれは男騎士達によってスルーされた。
はたしてどうなることやら。
そもそもこんなトンチキ連中に、そんな破壊工作なんて高度なことができるのか。
そんな疑問もある中、アリスト・F・テレスの使徒であるマザーコンピューターはこの作戦のコードネームを、女エルフ達に開示した。
そう、それこそは――。
「「「「密着二四時間。絶対に笑ってはいけない秘密戦隊???」」」」
「まーた、ヤバそうな展開になってきたじゃないのよ。なんでこう毎回、普通に冒険しないかしらね、この作品は」
またなんともヤバそうな展開を匂わせる、酷いコードネームなのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「えー、と言うわけでですね、皆さんにはこれから破壊神ライダーンの組織の人員に化けてもらいまして、都市に侵入して貰いたいと思います」
「いや、化けて侵入して貰いたいと思いますって。そんな気軽に」
「それでは、それぞれの変装衣装を用意いたしましたので、そちらの脱衣所で着替えてください」
そういうや、暗い広間に突然、五つのボックスが現われる。
人が着替えるのにはうってつけ、入り口がカーテンで遮られたそこには、男騎士達ご一行のネームプレートがでかでかと掲げられていた。
そこで着替えろというのか。
いや、まぁ、変装しなくちゃいけないのは分からなくもないのだけれども――。
「なにこの壮絶な茶番感は。私たち、これから何をさせられようとしているの?」
「だぞ、変装衣装を用意しているなんて、なかなか準備がいいんだぞ」
「なるほど、これを用意するために一晩私たちをここに宿泊させたんですね」
「不安はありますけれど、ちょっとワクワクしてきましたね。いったいどんな衣装なんでしょうか」
女エルフを除いてメンバーは全員なにやら乗り気のようである。
これまた回避不能の流れかなと女エルフはため息を吐く。
しかしながら、彼女もこれまで幾度となく、理不尽な展開に挑んできたリアクション芸人ならぬリアクションエルフだ。この明らかにおかしい状況、そして、コテコテなノリに一度立ち止まって、彼女は冷静に男ダークエルフに声をかけた。
「ねぇ、別にやるのはいいんだけれど、少し質問させていただいていいかしら?」
「えぇまぁ、構いませんよ。答えられる範囲でなら」
「ありがとう。それじゃまず、コードネームについてなのだけれど」
笑ってはいけないとはどういうことなのか?
女エルフはまず、そのふざけきったコードネームの核心に触れた。
まだかろうじて笑ってはいけないと付いていなければ、納得できるコードネームではあった。それならば、まぁ、異議を差し挟むまでのことはなかった。
けれども笑ってはいけないという言葉で、いろいろと台無しだった。
そのせいで、女エルフもちょっと一言物申さねば気が済まなくなった。
いったい笑わないことと、破壊工作にどんな関係があるのだろうか――。
「えぇ、それについては、説明しようと思うと非常に難しいのですが」
「そんな複雑な事情があるの?」
「どういうことでしょうか。まさか、笑うという行為が、ここでは特別な意味を持つとかそういうことですか?」
「だぞ、古来より笑うという行為は、友好を示す人類の数少ない共通の仕草なんだぞ。もちろん、他にもいろんな意味があったりするけれども」
「それで一発なにかおかしなことになるなんて、考えられませんね」
良い感じに女エルフに援護射撃が決まる。
さっきは勢いで押し流されたのに今度は止めてくれるのかと、女エルフもまたなんだか複雑な顔をしてそれを受け止める。
はたして男騎士パーティの疑念を一身に受けて男ダークエルフが頭を掻く。
まぁ、信じがたいことかもしれませんがと前置きして、彼はその笑ってはいけない事情について語った。
「破壊神ライダーンは冷酷な神です。彼は、自分が作り上げる新たな人類に、感情というものを求めていないのです。人類は、この世界に繁栄するのに必要な機能さえ持ち合わせていれば良い。そういう思想の下で彼が治める三都市は運営されています」
「……ふぅん、なるほどね」
「たしかに笑うという行為は、感情を激しく揺さぶられる行為」
「それで笑うことを禁止するってことなんだぞ? 横暴なんだぞ!!」
「そうですそうです!! 人間なんだから、笑いたいときに笑うのが当たり前じゃないですか!! 神様だからっってなにさまですか、そんなの!!」
すかさずブーイングを振りまく男騎士パーティ。まぁ、破壊神ライダーンとは縁もゆかりもない、男ダークエルフに言っても仕方がないのだが。
ただまぁ、笑うことが禁じられているのはなんとなく納得できた。
「それでですね、その三都市で笑ってしまった人間は、懲罰部隊によりすぐに捕まって罰せられてしまうのです」
「なにそのディストピア。地獄じゃないのよ。笑ったくらいで罰されるの」
「やはり許せませんね、破壊神ライダーン。そのような横暴、許せません」
「だぞだぞ!! 笑っちゃうことくらい別に生理現象なんだぞ!!」
「それで、その罰とはいったいなんなんですか!! 銃殺刑ですか!? それとも禁固刑ですか!? まさかとは思いますけれど――エロ漫画みたいなやらしい刑じゃないですよね!! こう、捕まっていろいろされちゃうような!!」
なんだか一人、やけに食いつく新女王。
少し興奮している彼女に、何を言ってるのよと女エルフがすかさずツッコミを入れる。確かに、ちょっと異常な食いつきだった。
まぁ、エルフが捕まるのは、エルフ好きが喜ぶ共通イベント。
懲罰部隊出動と聞いて、少し女エルフがあられもない目に合わされる姿を想像してしまったのかもしれない。
ごめんなさいお義姉様と謝る新女王に冷たい視線を向ける女エルフ。
けどまぁ、大事ですよどんな罰かはと
で、どうなのよと女エルフが尋ねると、またしても苦々しく顔を歪めて、男ダークエルフは心底言いづらそうな顔をした。
「えぇ、まぁ、その。懲罰部隊の罰は、いささか特殊といいますか」
「なに、そんなにヤバいの? 死んじゃう系の奴?」
「なんと野蛮な」
「だぞ、懲罰なのに殺しちゃたら意味ないんだぞ!! 僕は研究者として学者として、懲罰による死刑については断固反対なんだぞ!!」
「むち打ちですか!! 市中引き回しですか!! プラントに強制送還ですか!! はぁはぁ!!」
「エリィ、アンタは黙ってなさいな」
おしいと男ダークエルフが指を鳴らす。
何が惜しいのか、どう惜しいのか、誰の発言が惜しいのか。
順番的には新女王の会話が近い。まさかと女エルフの顔が青ざめる。
男ダークエルフは苦笑いと共に、その刑罰の詳細を告げる。
はたして、それは――。
「懲罰部隊は――笑ってしまった市民に対して、柔らかいスポンジバットでケツバットをお見舞いするんですよ」
「割と、しょうもない罰!!」
なんともタイトルから想像できる、分かりやすく見栄えのいい罰であった。
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