第986話 どエルフさんとスパイ大作戦

【前回のあらすじ】


 破壊神ライダーンは三つの力を持っている。

 一つは、怪人製造基地都市ダイナモ市の怪人たち。

 一つは、破壊兵器工廠都市イーグル市の破壊兵器。

 そして最後の一つは、頑張れロ○コン村のポンコツロボット。


「待ってよたけしくん!! おーい!! 止ってー!!」


 ロ○コン村の名前を冠したそいつの名はロ○コン。

 赤くて丸くて大きな鋼鉄の守護神。ここ、人類始まりの密林において、破壊神ライダーンの三都市を、その身ひとつで守っているスーパーロボットだった。


 とてもそうはみえないけれども。


「……あんなおひとよしな奴が敵?」


「……だぞ。これまでもとぼけた奴とは戦ってきたけど、今回は段違いなんだぞ」


「……なんか、こっちが悪者になった気がしますね」


「止ってよー!! ぎゃぁーっ!! 野生のゴキブリぃ!!」


 という感じで、誰が思ったか気づいたか、仮面のライダーやゼロゼロのナンバーズ、戦隊ヒーローを差し置いての赤ロボットのパロディ襲来。

 今回のラスボスは、なんともマヌケな赤だるま。


 こっちのボスは青だるまと、ロボット赤青対決がここに勃発。

 はたしてどちらが真に人類の友と言えるロボットなのか。そんな不毛な代理戦争がはじまってしまうというのかどエルフさん。


 今週もトンチキ展開ぶっちぎり、ボケとパロディを加速させてお送りします。


◇ ◇ ◇ ◇


「以上が、頑張れロ○コン村および破壊神ライダーン陣営の戦力状況です。理解していただけたでしょうか?」


「……まぁ、理解はできたけれども」


「そうですねぇ。なんというか、理解はできても納得できないというか」


「だぞ、これ、本当にそんなたいそうな敵なんだぞ?」


「おマヌケ面白集団にしか見えないのですけれど?」


 これまでの経験が女エルフたちにはあった。

 今まで嫌というほどおマヌケ集団と戦ってきた経験が、過去が、知識が、彼女達にはあった。だからこそ、この展開を前にして感じてしまう。


 これまたいつものしょーもない奴なんじゃないの、と。


 それはもう彼女達にとっては宿命。このトンチキファンタジー作品の主人公として選ばれてしまったからには、逃れらないし培われて当然の感覚であった。

 むしろここまで酷い冒険をしてきておいて、あからさまなこの展開に疑問を抱かない方がどうかしている。知力の低い男騎士ならばともかくとして、そこそこ頭のいい女エルフ達なら気づいて当然の疑問だった。


 そんな問いかけに、沈黙する男ダークエルフ。

 なんで沈黙するのか。どうして沈黙するのか。やっぱりそうなんじゃないのか。

 というか、当然のように反論する材料くらい用意しておいて欲しい。こんなトンチキを見せられた後で、そういう疑問が飛んでくるのは誰だって考えられるだろう。


 冷ややかな空気が場に流れたその時だった。


「みんな、ここはマザーコンピューターとマイコーの言うことを信じよう」


「いや、信じようって言ってもティト」


「ここは俺たちの常識もとどかないような神代の土地だ。あれやこれやと無闇に考えるだけ不毛というものだろう。アリスト・F・テレスは信頼できる神だ。ここは一つ、相手の素性に不明瞭な所があっても、素直に彼らに従おう」


「……でも」


「俺が今まで間違ったことを言ったことがあるか? モーラさん、思い出してくれ」


 割と、いつも間違えている気がするが。

 間違えた上で、いろいろと面倒をかけられている気がするが。


 女エルフが男騎士にじとめを送ったのは仕方なかった。実際、そんな視線を送られても文句が言えないくらいに、男騎士は女エルフにやらかしていた。

 しかし、その視線が彼に伝わることはない。


 なぜなら男騎士はアホだから――。


 そして――。


「そうですね。仕える神を疑うなどあ修道女シスターにあるまじき行為。ティトさんの言うとおり、ここは素直にその言葉を信じるべきでしょう」


「だぞ。思うところは確かにあるけれど、ここは信じないと話が始まらないんだぞ」


「まぁ、私は冒険については素人ですから。リーダーのティトさんがそう言うなら、黙って従うまでです」


「はい出た、おなじみのこの流れ、私以外のみんなが納得して話が進む奴。私は全然承諾していないのに、なんかもう承諾したことになっちゃってる奴。ほんと、パワープレイ勘弁していただきたいんですけれど」


 他のメンバーが男騎士の発言に同調して女エルフの待ったを無しにする。

 彼女の意見が無視される流れになる。

 いつもの展開である。


 これが発動してしまってはもはや女エルフにその流れをどうこうすることなどできない。派手にギャーギャー騒げば騒ぐほど、どエルフだなというオチに向かってひたすら墓穴を掘ることになる。


 悲しいかな女エルフはそれを自覚していた。

 自覚していて、なぜか止めることができずにいつも弄られ倒していた。

 そうは行くかと身構えるのだけれど、見事に釣られて醜態をさらしていた。


 なので分かる。

 この流れが良くないことが。

 彼女には直感で理解できた。

 そして、もはやどんな異議を唱えたところで、アリスト・F・テレス側に与して、破壊神ライダーンと戦わなくてはならないことも。


 はぁ、と、女エルフがため息を吐き出す。すると、それを受けて男騎士が何やら頷いた。女エルフが納得してくれたのだと判断したのだろう。

 もう少し、自分を弄るためのからみがあるかと身構えていた女エルフは、少し拍子を外されたように顔をしかめた。

 まぁ、そういうこともあるかという顔をするより早く、それでは話を続けますねと男ダークエルフが話を元に戻した。


「ずばり、みなさんにやっていただきたいことは一つ。この三つの都市に侵入して、内側からその都市機能を破壊していただきたいのです」


「都市に侵入する?」


「だぞ?」


「つまりそれは?」


「立派なスパイ活動、テロ活動じゃないですか!! ちょっと、そんなの認められませんよ!! どう考えても悪役の所業じゃないですか!!」


「正義の前には小さなことは言っていられません。数と科学力で劣るこちらは、それをテロルで補うしかないのです――そう、題してこの作戦は」


 男ダークエルフのタメと共に、女エルフたちの前に照射されていたホログラムが崩れる。森林の景色がかき消えたかと思えば、次に表示されたのは大きなテロップ。

 そこにはこの世界の文字で、でかでかとこう書かれていた――。


「「「「密着二四時間。絶対に笑ってはいけない秘密戦隊???」」」」


「まーた、ヤバそうな展開になってきたじゃないのよ。なんでこう毎回、普通に冒険しないかしらね、この作品は」

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