第889話 ど男騎士さんと魔剣合体

【前回のあらすじ】


 アーサー王伝説にはアーサー王伝説をぶつけるんだよ!!


 振れば飛び出す光子ビーム。

 伝家の宝刀誰でも知っている伝説の剣。その中でも選りすぐりの一振り『特選エクスカリバー』で、ソードビームを放ってくるアーサー・カエサル・ラムセス・シャルルマーニュ・サカノウエ・ダビデ・バフバリ・アレクサンドロス・ゲントゥク。


 岩でできた扉さえも壊してしまう恐ろしい熱量。その前に、男騎士たちが戦意を喪失しかけたその時、彼の愛剣がまだ諦めるなと彼らを励ました。


 人の希望を束ねし大英雄。

 しかしながら、それは彼らにしかできないことではない。

 妖怪バンコの力を頼らなくても、人々の思いは束ねることができるのだ。


 そう言って、魔剣が呼び出したのはピンク色の十三の人影。


「これなるは人が望みし十三の希望の姿!! 十三人の希望を導く性騎士たち!!」


「性騎士だって!?」


「あ、これ、いつものダメなノリの奴」


「この世界に生きる男達が好みしエロスのジャンルを守護する英霊にして騎士!! その名を――エロ卓の騎士だ!!」


 十三人のエロ卓の騎士であった。


◇ ◇ ◇ ◇


【英雄 エロ卓の騎士: 男達が好みしエロスのジャンルを守護する十三人の騎士にして英霊。それぞれがそれぞれ、決して譲ることの出来ない好きなジャンルを持ち、その発展のためならば命を惜しまない――という者達である。かつて、大規模な抗エロ活動が起こった際に立ち上がった彼らは、長く苦しい闘いの末に男達の尊厳を守り、現在までそのエロスのジャンルを守り続けることに成功したという。しかしながら、その後壮大な内ゲバの果てに全員が野に死に絶えた。死して後反省した彼らは、今はそれぞれのジャンルの守護騎士となり、この世の男達の全ての希望を背負って立つ者、あるいはジャンルを背負って立つ者にその力を与えるという】


「……まーたこんなろくでもないものを」


「ろくでもないとはなんだモーラちゃん!! 男達にとって、時に譲れないジャンルというのは存在するのだ!! そして、そのジャンルが衰退しないように、保護していくのは紳士の務めなのだ!!」


「そうだそうだモーラさん!! 男には男の世界があるのだから、そこは黙っていて貰おうか!!」


「そんなひどい奴らの力を借りなくちゃいけない身にもなりなさいよ!!」


 女エルフの言うことはごもっともであるが、それはそれとして、手段を選んでいる場合でもないのは事実。


 目の前の、人の希望を手繰り寄せて力へと変える大英雄に対して、正面からぶつかりあうためには、同じく、人々の希望が必要不可欠だった。

 いや、人々の希望というよりも、男達の希望。

 あるいは欲望の力を借りるしかなかった。


 死んだ目をする女エルフ。そんな彼女に対して、あのエロ卓の騎士が味方してくれるなんてと、なぜだかちょっと興奮気味の男騎士。


 さもありなん。

 エロ卓の騎士は、この世界に生きる男達にとってすれば、まさしく男の中の男と言って良いような、尊敬に値する英雄なのだ。

 誰もが知っている尊敬に値する漢たちなのだ。


 自らの信じるエロスのジャンルに殉じた騎士達。

 そのエロスの尊厳を守るため。あるいは、自分たちの生きる今では無く、未来のために、より豊かなエロスのために、その身を捧げた尽忠報エロの騎士たち。

 彼らを尊敬しない男たちなどいるだろうか。


 いない、断じていない。


 この世に溢れるエロスを、エロ卓の騎士はその身を挺して守ってくれたのだ。

 根絶やしにされそうになる、エロスのジャンルを彼らはその剣と身でもって守り抜いてくれたのだ。感謝、そう、感謝しかない。

 そのエロスに、日夜というか主に夜、お世話になっている男達にとって、彼らはもはや無条件に平伏する存在だった。


 そんな彼らが――。


「力を貸してくれるというのか、エロス!!」


「あぁ!! 秘法中の秘法だがな!! ぶっちゃけ、みだりに使うモノじゃないが、この世界の危機というのなら仕方がない!! 奴らも力を貸してくれる!!」


「こんなにありがたく心強いことはない――!!」


「そうかなぁ?」


 しらける女エルフを余所に、さぁ、剣を構えるんだと魔剣が叫ぶ。

 果たして、男騎士の周りに現れたピンクの影。その一つが、ゆっくりと男騎士の方に近づいてきた。


 その姿は影法師。

 おぼろげな輪郭が浮き上がるだけで、顔の形も定かではない。

 だが、匂い立つエロスの芳香と気配は、男騎士にも分かる。


「この濃厚かつロイヤリティ溢れる香り。間違いない。王女さま・お姫さまジャンル大好き。陵辱ものからラブラブものまで幅広く守護する根っからのお姫さまスキーこと――みだれスロット卿!!」


『よく気配だけで気がついたな。いかにも、私が王女さま・お姫さまジャンルをこよなく愛する騎士。高貴な王女としっぽりするためなら、たとえ主君だろうと裏切る覚悟の、みだれスロットである』


みだれというかみだらじゃないの?」


 余計なことを言うなと、女エルフに釘を刺す男騎士。

 そんな中、次々に十三騎士が、男騎士に歩み寄ってくる。


「この背徳感溢れる感じ!! 寝取り寝取られどちらも大丈夫!! 特に媚薬や催眠で好きでもない男と……な展開については一家言ある男!! 寝取りの取リスタン卿!!」


『寝取る時の罪悪感、そして、寝取られる時の敗北感。どっちに転んでも私は嬉しい(ビクンビクン)』


「聖なる杯を探して三千里!! 世界の果てで見つけた伝説の名器を持ち帰った筒に選ばれし男!! 後世の筒文化の発展に寄与し、そして、筒を使ったプレイの開発と一般化に貢献した筒の申し子!! TENガラハッド卿!!」


『聖杯を求める旅は苦難と我慢に満ちた旅だった。しかし、そんな苦難と我慢が、筒を使った時の最高のエッセンスだって、気づいたんですよね』


「女好き好き大好き!! ハーレム展開ならこのお方!! 騎士なのに王だからその特権でやりたい放題!! しかしながら、乙女から老母、醜女から美人まで、オールオーケーのその懐の深さに、男として敬意を感じる!! けどペドだけは許さない、絶対にだ!! アンタが大将こと――ペリノア王!!」


『名前のせいでよく誤解されるけれど、そういう趣味はないから!! どうも、守備範囲は十八歳から八十歳まで、ペリノア王です!!』


 錚々たる男達。

 男が惚れる、見事なエロス快男児達。

 その魂が次々に現れ、男騎士にその力を託していく。


 そんな中――。


「やっぱり、思った通りろくでもないわ」


 女エルフは白目を剥いて魂の抜けるような台詞を吐き出すのだった。


 確かに、女の目からすれば、ろくでもないことこの上ない光景であった。

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