第877話 ど新女王さんと連携技

【前回のあらすじ】


 ハシリ家コンペイ。


 そう、大喜利は六人いなくちゃ始まらない。

 桃色、水色、黄色に緑、紫ときて橙が座る。


 それが大喜利の大正義にしてスタンダードなスタイルである。


 完全にノーマーク。

 まさかまさかの末席に、座っていたのはロボット野郎。

 そして、トラックが変形したかのようなフォルムのイカした奴だった。


 彼は、極悪非道の初見悪口という暴挙に出た蠍の王スコーピオンキングに宣戦布告をすると、ワンコ教授に共同戦線を求めてくるのだった。


 しかしながら――。


『せーのー!! オプティマース!!』


 彼の持ちギャグに声を合せるものはいない。


 ロボットだからか、コンボイだからか、滑りっぱなしの暴走特急。

 はたして、ハシリ家コンペイに未来はあるのか。

 このキワモノ揃いの大喜利はたしてどうなってしまうのか。


「久しぶりに投げやりなギャグになったわね。どうしたの?」


 これ書いている週に、FG○のぐだイベとファイナルギアのリリースが重なって、ゲームするべきか文章書くべきか迷ってたらこれです。


「……真面目に文章書こうよ」


 とりあえず、小林団子ちゃんかわいい!!(来週まで続くかな)


◇ ◇ ◇ ◇


「さて、挨拶も終わりました所で、大喜利はじめさせていただきたいと思います。皆さん、これがどのようなものかおわかりですよね?」


 今更ではあるが、スフィンクスが参加者にルール確認をする。

 ここまで巻き込んでおいてほんといまさらである。


 知らないと言えばどうなるのか。ちょっと言ってみたいような気がしないでもなかったが、そこは新女王もワンコ教授もぐっと堪えた。もちろん、蠍の王スコーピオン・キングやその他の参加者は何も言わない。


 それでもまぁ、お約束というものはあるものである。


「えぇ、私がさまざまなお題を出しますので、皆さんがそれにおもしろおかしくお答えいただくというものになります。これだと思った方から挙手してください。面白かったら座布団一枚、とくに面白ければ二枚。逆に、これはダメだと思ったら座布団を没収。最終的に、十枚座布団を集めた者が勝ちになります」


「……だぞ、本来大喜利はシーズンを通して十枚集めるはずなんだぞ。短期間で十枚なんて、なかなかできるものじゃないんだぞ」


「ケティさん、いきなり弱気に――どうしたんですか、さっきまでの余裕は」


 紫ファラオの毒舌と、その後にやってきたコンペイ野郎のとんちきぶりに、すっかりとペースを乱したワンコ教授。


 頭が良いということは、まともな神経をしているということ。

 冒険野郎達が醸し出すトンチキワイルドなノリについていけないのはやむなし。


 特にコンボイ野郎。

 コイツが出しゃばってきたのが逆によくなかった。


 アクションアクティビティPharaoにより、覚醒していた獣人としての意識。それが鎮まるのと共に冷静さを取り戻したワンコ教授。彼女は、もはやどうしてこんなことをやっている状態になってしまっていた。


 むぅ、と、新女王。

 ワンコ教授の意気消沈振りに顔をゆがめる。

 とはいえ、この大トンチキを前にして、気落ちするなという方が無理というものだろう。どうしたものかと頭を捻ったその矢先――。


「それではさっそく、第一問行ってみましょうか」


「うえっ、早い!!」


 スフィンクスが早速話を進めはじめる。

 これは気落ちしている場合ではないと新女王。すかさずワンコ教授の肩を叩くと、すっかり気落ちした彼女をなんとかたきつけようとするのだった。


「えっと、ケティさん、あれです。確かに酷い弄られかたをしましたけれど、それはそれ。私も協力しますから、一緒に頑張りましょう」


「……だぞ」


『そうだ狗族の少女よ!! コンペイも君の味方だ!! 三人で力を合わせれば、ファラオトロンなんて敵ではないさ!!』


「……とりあえず、あのコンペイさんは置いておきましょう。話が混乱しますし」


 協力芸というものがある。


 先ほど、蠍の王スコーピオン・キングが見せた毒舌ブラックネタもそうではあるが、一人では成立できないようなネタを、二人協力してやるなんてことも大喜利では許されている。

 もちろん、そんなネタばかりでは、観客も審査員も飽きてしまうが、それでも話のバリエーションが増えるのは強みだ。


 その点、ファラオはこれこの通り。

 観客にこそ味方は多いが、並んでいる者達の中に仲間がいるとは思えない。

 唐突に、新参者をブラックネタで弄ることはあっても、協力して大きなネタをやれるような底力は無い。


 新女王とワンコ教授。

 二人が協力すれば、付け入る隙は充分にある。


「だぞ、まぁ、エリィがそう言うなら、頑張ってみるんだぞ」


「ここまで私はろくにお役に立てていませんから、協力させてください。ほら、それに、なんか私、強制的に与太郎ポジションにされちゃいましたし。弄っても問題ないというか、いや、与太郎本当は嫌だけれど、もう運命というか」


「……だぞ、ごめんなんだぞエリィ。僕が間違っていたんだぞ」


 いえいえそんなことはありませんよと言いつつ、新女王の顔は死んでいる。

 彼女は彼女で与太郎ポジション。ケティと同じく、周りから弄られる立場である。そして、死にかけネタで弄られつつも尊敬されている緑ポジションと違い、黄色ポジションはほんとうに救いがなかった。


 与太郎になってしまったが最後、どこまでも与太郎で通さなければならない。

 そんな悲しい宿命を背負ってしまったポジションだった。


「エリィ・スパゲッティでも、エリィ・マカロニでもなんでもネタにしてくれちゃって構いませんよ。不味くて誰も食べないネタとか」


「……だぞ、エリィ」


「猿ネタとかもいいですし、ケティさんのポジションと同じ、死にそうネタでもいけますよ。あ、二人仲良く三途の川をみたいなので行ってみますか」


「ごめんなんだぞ。僕だけいじけて悪かったんだぞ。協力して、なんとか蠍の王スコーピオン・キングたちに勝つんだぞ」


 つらいのは自分だけではない。

 死んだ顔をしていたワンコ教授の顔に生気が戻る。

 それと同時に、新女王の顔に死相が浮かぶ。


 はたして、Pharaoから打って変わって大喜利。

 さきほどよりもよっぽど土気色が増した表情の男騎士パーティ二人。その孤独な闘いが今ここに始まろうとしていた。


「えぇ、では、第一のお題――」


「やりましょう、ケティさん」


「だぞ。頑張るんだぞ」

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