第854話 デビちゃんと超能力殺し

【前回のあらすじ】


 魔性少年ピンチ。

 超能力使いとして一つ上の次元を見せつけてくる魔性僧侶。

 その繰り出す技の全てが、魔性少年を上回る。


 これが真の天才というものなのか。

 矢継ぎ早に繰り出されるその魔技の前に、魔性少年がその膝を折ろうとする。


 その時。

 彼のピンチに頼りになる助っ人が駆けつけた。

 彼と生命を共にする仲であり、ともすると最も親しき姉弟のような仲。


 そんな彼女こそはそう――。


「やめるでゲソ!! コウイチは呂09の大切なコアなんだから破壊されたら動かなくなっちゃうゲソ!!」


 デビちゃんであった!!


 まさかのデビルフィッシュ娘、ここに闘いに参戦!!

 第七部で意味深に出て来た割には、見せ場があんまりなかった彼女!!

 まさかのここで勝負に参戦!!


 大丈夫なのか、この闘いは結構重要な闘い!!


 元ネタで言うと、作中最強クラスのキャラに、さらに仲間内で最強のキャラがぶつかるような場面だというのに、大丈夫なのか!!


「いや、自分で配置しといてそれはどうなのよ。というか、デビちゃんの元ネタの方が弄って大丈夫なの?」


 大丈夫!!

 だいたい八月末の読み放題で、全話読んだので予習はばっちりです!!


 という訳で、デビちゃん無双がここに始まる!!

 今週もどエルフさん、はっちゃけながら始まります!!


◇ ◇ ◇ ◇


「……バカな!! 我が超能力がまったく通じていないだろ!! そんなことがあるものか!! ブッさんと対話してきたこの私を!! 現人神ブッさんの相棒として、幾多の奇跡を見てきたこの私を、こんな小娘が凌駕するのか!!」


「ゲソ? なんでゲソかブッさんとは? 聞いた事のない名前でゲソね?」


 ナチュラルに煽る。


 デビちゃん、その無邪気さ奔放さ故に魔性僧侶をナチュラルに煽った。


 無理もなかろう。

 故郷を追われ、海の底に潜行していたセイレーン科デビルフィッシュ目のデビちゃんである。地上から遙かに離れた海の底では、地上の情報など入ってこない。


 いや、そもそも、ブッさんと彼に師事した魔性僧侶の存在は、東の島国でこそ有名だが大陸ではそれほど有名な存在ではない。

 そういう話題の地方性も、この際はデビちゃんの言葉に鋭さを与えていた。


 自分が生涯を捧げて信じてきたものをけなされる。

 これほど屈辱的なことがあるだろうか。


 魔性僧侶、その眉間に一筋の青い線が走る。

 目を見開いた彼は、それまで自然体に手を下ろしていたのを構えると、目の前に現れた謎の純白の乙女をにらみ据えた。


「我が師、我が人生、我が力を愚弄するか、そこな少女よ――許せぬ、許せぬぞその愚弄。貴様には万死も生ぬるい」


「ゲソゲソゲソ!! 海底温泉ならクッサツ、イカホ、ゲロ、アリマ、いろいろ行ったでゲソよ!! 生ぬるい結構でゲソ!! 深海の冷たさに比べたら、どうということではないでゲソ!!」


「どこまでも舐め腐りおって!! ならば、さらに我が奥義の深淵にてお相手しよう!!」


 魔性僧侶再び構える。

 両手に揺らめくのは光の帯。


 再び、その超能力を可視化させて、その身体にまとわりつかせると、彼は神妙な顔と共にそれを手繰った。


 虚空に、光の帯が描き出したのは、大いなる巨人の御影。

 燦然と発光し、膨よかな笑みを浮かべるのは間違いない。


 慈愛の表情と姿により、この世に迷う魂の一切、全てを救おうとした現人神。


「……なっ!! まさかこれは!!」


「そう、我が超能力は師の御影を讃え弔う法悦の力なり!! ひれ伏せ、これこそが東の島国を救った現人神の神威である!! 妙技――ビッグ・ブッさん!!」


【妙技 ビッグ・ブッさん: 魔性僧侶の超能力により、生前のブッさんの姿をこの世に映し出すという、超荒技である。思い出補正で少しばかり顔がスリムになっている。また、ビッグと名の付くとおり、20倍スケールという人間を超越した巨躯で現れるブッさんの前に、多くの人間が腰を抜かしてそれを見上げることになる。動きを封じられた相手は、そのままブッさんにやられるがまま、なすがまま。インパクトと確かな攻撃力を兼ね備えた、強力な超能力攻撃である。なお、股間のガードは意外としっかりしている。男なのに、巨人娘みたいなことを気にする、繊細な心をしたブッさんである】


 フロアを突き破ろうかという光の巨人が現れる。


 どこからともなく差す後光と、全てを救わんとするその慈愛の微笑みが辺り一帯に降り注ぐ。なんということ、こんなものに迫られてひるまぬもののあるだろうか。


 しかし――。


 やはり深海からの使者、デビ娘である。


 地上より幾千里離れた場所に住む、深き者達にはその威光など関係ない。


 否、深海には光など届かない。

 ただ、闇があるんだけなのだ。


 迫り来るビッグ・ブッさんの拳。

 それに対して、デビちゃんは自慢の八つの触手を使って受け止めた。


 人間の指は五本、デビちゃんの触手は八本。

 三本の差が、そのまま力の差となって、ビッグ・ブッさんの身体を打ち砕いた。


 バカな、と、狼狽える魔性僧侶。

 その前に、今度は変わってデビちゃんが腰に手を当てて立ち塞がる。


「ゲソゲソゲソ!! メガロドンやシロナガスクジラの方が、よっぽど怖いしインパクトがあるじゃなイカ!! というか、ただ拳をぶんぶんするだけなんて芸がないでゲソね!! それで本当に、救世主だったゲソ!?」


「バカな!! ビッグ・ブッさんの神威にも耐えて、なおかつ、あの質量にも耐えるだと!! なにより、ビッグ・ブッさんの手には、ありとあらゆる存在を調伏する、摩訶不思議魅了光が走っている!! なぜその魅了が効かない!!」


「……なるほど!! そういうことだったのか!! ようやく、デビちゃんに超能力が効かない理由が分かりましたよ!!」


 なに、と、魔性僧侶が叫ぶ。

 げそ、と、デビちゃんが首をかしげる。


 唯一得心した、魔性少年が、にやりと微笑めば、光の巨人の姿が消える。


 激戦の余韻に揺れる処女宮。

 その中で、ゆらりと立ち上がった魔性少年は、その長らくの同居人――セイレーン科デビルフィッシュ目のデビちゃんの白い身体を見て頷いたのだった。


 そう。


「デビちゃん。どうやら貴方は、私の強すぎる超能力を常に浴びていたことにより、超能力を相克する力を手に入れていたようです」


「……ゲソ?」


「そんなバカな!! そんなことがあるはずが!!」


「潜水艦呂09の中で、数代にわたって過ごし続けたセイレーン科デビルフィッシュ目です。彼らは、超能力で駆動する、潜水艦の中で常にその力を浴び続けた。そして、それを無効化するために、身体が適応していったのですよ。そう、彼女が使う八本の触手、それは全ての神秘を破壊する、魔性の器官になったのです」


 あえて言うならそう、こう言うべきでしょう。

 神妙な顔で言う魔性少年。


 息を呑む、魔性僧侶とデビちゃん。


 その、デビちゃんの身体に秘められた、神秘のパワーの名は。


「超能力殺し【そのゲソでぶっ壊す】!! 略して【そゲぶ】です!!」


「おぉ、かっこいいでゲソー!!」


「いや、ちょっと、ちょっと待て!! いいのか、それ、ここでやってしまって!!」


 唐突のKAD○KAWA看板作のパロディであった。

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