どエルフさん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、奴隷狩りに襲われていたエロい女エルフを助ける。エッチなエルフたちとはじめるきままなハーレム冒険者生活。~
第834話 ど男騎士さんとえらいこっちゃ
第834話 ど男騎士さんとえらいこっちゃ
【前回のあらすじ】
そう、皆さん、気がついていただろうか。
実はちょいちょい、試練の数字がずれていたことに。
あるでばらんの時から実はナンバリングがおかしかったことに。
賢明な聖闘士○星矢の読者諸君はお気づきのことだろう。
そう、黄道十二宮の初戦の相手はアルデバラ○さんではない。
一番最初に彼らの前に立ちはだかったのは――牡羊座のム○である。
「もう一人おらんかったか? 塔に入った時に、もう一人? 第一階にも、○金闘士が居るはずなんだわ、確か」
「「……なんだってぇ!?」」
一階はなんていうかエントランス的なものだと思っていた。
そこには試練の○金闘士がいないと思っていた男騎士達。
そこに突然、突きつけられる衝撃の事実。
まさかの痛恨のミス、一階の○金闘士を倒し損ねていた事に、試練をクリアしていなかったことに、男騎士達は気がついたのだった。
なんというトリック。
おそるべきミステリー。
いや、筆者がぼけているので、これミスなのか、わざとやっているのか、わかんねーなと思った読者の方々も多かっただろう。
実際の所、筆者はボケているので、そんなに気にしなくていいぞ!!
「えばって言うことか!!」
という訳で、ボケ倒しメタファンタジーどエルフさん、今週もはじまるよー!!
◇ ◇ ◇ ◇
だばだばだばと試練の塔を駆け下りる男騎士と女エルフ。
たった二人、巨蟹宮に残ったパーティのリーダーと副リーダーは、これまで通過してきた双児宮と牡牛宮を足早にすり抜けて第一階へと舞い戻った。
たしかに、言われてみると第一階も各宮と同じような造りになっている。
人の姿は見当たらないけれど、第一階も試練の間としての風格がある。
迂闊。
本当に迂闊。
「入ってすぐ、螺旋階段があったから、これはすすめと言うことかと思って登っちゃったけれど、ここも普通に試練の間だったなんて!!」
「それならそれで何か一筆書いてくれていればいいのに、なんて不親切な試練の間なんだ。おかげで、大幅にタイムロスしてしまったじゃないか!!」
さぁ、出てこい最初の試練。
男騎士と女エルフが試練の間に響き渡るように声を張り上げる。
しかし、彼女たちの誰何に答えるものはない。
いや、そもそもそんな者が居たならば、とっくの昔に男騎士達は気がついているはずなのだ。そういう奴が見当たらなかったから、ここが試練の間だと気がつかずに、スルーしてしまったのだ。
どこだ、いったい、どこに居る――。
男騎士達が神経を研ぎ澄ます。
その時、知能レベルの高い、女エルフが、何かの察知判定に成功した。
彼女の長い耳もまた、判定有利に働いた。
「待って!! 何か聞こえてこない!! 人の声が!!」
「人の声だと!!」
「静かに……この声、とてつもなく静か、まるで、何かを刺激しないように、気を遣っているぼそぼそとしたしゃべり声。すすり泣くような声の出所は――」
そこよ、と、女エルフが指さした先。
はたしてそこにあったのは――。
トイレであった!!
男性女性のマークが描かれた、共用のトイレであった!!
ほったてられた感じのトイレであった!!
男騎士と女エルフが固まる。
突然訪れた沈黙の中に、確かに女のすすり泣くような声が聞こえてくる。
なるほどなるほどこれはしかり。
トイレの中に居たとあっては、気がつかないのは道理。
そして、そんな所に籠もっているのであれば、自ずと状況も察せられた。
女エルフと男騎士、二人はトイレの前へと近づく。
赤くなっているドアノブの上の表示。
入ってますよというのは、問いかけるまでもなく分かったのだけれど、男騎士はガンドレッドで覆った手の甲で、その木製の扉をこんこんこんと叩いたのだった。
しばらくして、か細い女性の声が返ってくる。
「は、はいって、ます……すみません、お腹の調子が悪くって」
お腹の調子が悪い。
幽霊にもそういう概念があるんだと、男騎士と女エルフが戦慄する。
魂になったとしても、人間は生理現象から解放されることはないのかと思うと、ちょっとした絶望が男騎士達の胸に去来する。
しかしながら、そんなことで戸惑っている場合ではなかった。
今、彼らは、仲間の命を救うための試練の最中なのだから――。
「すみません、つかぬ事をお伺いしますが」
「あ、す、すみません、もしかしてトイレ使いたい感じですか? あ、痛い、いたたた、あいたたた!!」
「いえ、そうではなくて」
「申し訳ないんですけれど、四階のキダローさんのフロアにもトイレがあるので、そちらを使っていただければと――あ、ヤバい、ヤバいヤバい、これヤバい奴!! あっ、あっ、あっ!! おっ、おごごごごぉぉごおお!!」
トイレの中でヤバい事になっていらっしゃる。
男騎士と女エルフ。
二人は、冒険者にしては珍しい、根っからの善人である。
人の心の悲しみに寄り添うことが出来る、高い共感性を持った冒険者である。
冒険の途中で、ちょっと胃にキツいものを食べてしまって、あるいは腐り具合が度を過ぎた者を食べてしまって、体調を壊してしまうというのはよくあること。
そして、そのせいで、一日くらい便座から離れられなくなる。
それもまたよくあること。
魔法でも直せない、胃の問題はデリケートな事案であった。
故に、二人は強く出ることができなかった。
自分の身に、トイレの中の○金闘士の惨状が重なりすぎて。
「……む、無理しなくて、いいですよー」
「……が、頑張ってくださーい」
「あ、ありがとうございます。すみません、こんなことになってしまって。あ、申し遅れました、私、このフロア担当の○金闘士――んぐっ!! んっ、ふぅん!!」
「無理して喋らなくても!!」
「体調の悪い時に無理しちゃいけませんよ!! 身体優先で!!」
「はぁ、はぁ……。お優しい、方なのですね……。すみません、私が、昨日、うっかりと、消費期限が切れたラム肉を食べたばっかりにぃぃいん!!」
「だ、大丈夫ですかぁ!!」
「気を確かに持ってください!!」
「……だ、大丈夫。大丈夫です。胃が弱いのは、昔からです。あ、あらためて、私が、白羊宮の○金闘士。アリエルウウウウウンンっン!!」
凄絶な音が白羊宮に木霊する。
水っぽい、音から察するに、病状はかなり深刻なようだ。
これはいろいろと、大変だろうなと、男騎士と女エルフは顔を合わせた。
「操る妖怪は『トイレの花子さん』。さぁ、いざ、尋常に勝ブ(規制音)――!!」
「「いいから!! いいから休んでアリエルさん!!」」
男騎士と女エルフ、こればっかりは仕方ない、ここでちょっと一休みするかと、塔攻略もまだ序盤だというのに諦めて休憩モードに入るのだった。
弱った敵を倒した所で、名誉にはならないから。
いや、弱った敵というか――。
「これはちょっと、ほんと、敵ながら心配になるわよ」
お腹の調子の悪い相手を前に、早く勝負しろなんていう度胸はなかった。
お腹の調子が悪いまま戦って、えらいことになる未来が見えてしまった。
ヒーロの変身バンクと同じく、お腹の調子が悪いときに戦うことは紳士協定的に言ってNGなのだった。
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