第745話 ど海援隊と月光力

【前回のあらすじ】


 この話をカクヨムに投稿するころには、鬼を滅する話は完結しているだろうか。

 まさかの続編とかになっていないだろうか。

 稼ぎ頭だからって延命処置なんて昭和のジャン〇みたいなことはしないで。

 むしろ綺麗に終わらしてこそあの作品。


 がんばれがんばれ長男。

 僕も応援しているぞ。

 そんなことを考えながら、週末に筆を走らせているkatternであった。


「うぉい!! また、ひどい、パロディ!!」


 集英〇さんの投稿小説サイトとかに移動した方がいいんじゃないかなって、最近ちょっと思っています。まぁ、ないんですけれどね。


 そして、このタイトルである。

 何が起こるか、そろそろお察しであろう。


「……もう、ほんと、この作者は」


 しかしこの歳――三十越えて――ジャン〇本誌をまた読みだすとは思いませんでしたよ。呪〇高専という素敵な存在も教えてくれるし、チェンソーも。


「それ以上いけない」


◇ ◇ ◇ ◇


 男騎士たちが小野コマシスターズことからくり艦隊これくしょんに攻撃を仕掛ける中。


 同盟を結んだ勢力の中でも最も力を持っている勢力――勝率いる威臨社の甲板では異様な光景が広がっていた。


 セーラー。

 セーラー服である。


 そう、海の男と言えば、かつてはセーラー服を着ていたもの。

 その純白の制服に身を包んで、甲板の上を駆け巡って、やれ銃座へ、やれ探照灯へと走り回ったものである。


 それは紛れもない真実。

 かつてセーラー服は確かに男のための制服だったのだ。


 しかしながらこの世界においてその歴史は通用しない。

 そう彼らが着ているセーラー服には、漏れなくミニスカが付属していた。


 ちょっと時代遅れ、今どきはブレザー服の方が多い。

 むしろこの手の制服は、もっぱら特殊なお店でしか見なくなった。


 そんな感じのセーラー服に身を包んで、男が五人立っていた。


「いやー、久しぶりにこの制服に袖を通すな。感慨深いぜ」


「何を懐かしがっとるじゃ。まったく、なんでワシまでこげな格好」


「そうかい旦那? さっきまでアンタがしていた格好と、そう変わらねえような気がしますぜ。まぁ、ワシらとしては本物に袖を通せて感無量ってもんですが」


「同じく」


「森松がまさか本当にセーラー戦隊になれるだなんて。ダメ、ちょっと、刺激が強すぎて――むーりー」


 店主、謎の暗殺者、そして小清水次郎長の一味。

 彼らは、いい歳したおっさんが身を包んではいけないコスチュームに身を包み、目を合わせてはいけない感をこれでもかと漂わせて、甲板の上で意気込んでいた。


 まるでこれから、最後の戦いに向かわんとする、そんな面持ちである。


 ちなみに。


 月が店主。

 水が小清水。

 火が謎の暗殺者。

 という配役である。そこは影の主人公にして、かつての歴史の立役者である、店主を立てた配役であった。


 しかし、ここで考えてみて欲しい。

 このヤバい格好でヤバい思想のヤバい年齢のオッサンたちを、率いる男はいったいどうしたのかと。


 最年長、おそらく彼らと同じ服を着たならば、いくら熱風吹きすさぶ南国の船の上とはいっても、体調を崩すかもしれない。どころか、着ただけでおじいちゃん大丈夫ですかといろいろ疑われる感じのある、勝はいったいどうなるのだろうか。


 まさかタキシードに身を包むのか。

 ここに来て、そんなあからさまなパロをしていいのか。


 そんな疑惑を漂わせながら――。


「みな、支度はできたな。海援隊、ここに再結成、壮観この上なし」


「「「「「ちび勝ムーン!!」」」」」


 勝もまたセーラー服に身を包んで現れた。

 しかも、なんかこう、本当に身に着けたらヤバい感じのセーラー服であった。


 店主たちが着ているのは、まだ、実在性が証明できる感じのヤバさだが、勝の着ているのは実在するはずがない、ファンタジーの中だけにしか存在しない感じの、そんなセーラー服であった。


 え、この背丈でセーラーとか、どういう私立小学校です。

 もしそんなものがあるのなら一意に特定される激レアセーラーであった。

 そして、ぴっちりセーラーであった。


 爺――勝は健康的に太陽の下で臍を出しながら不敵に笑う。

 ピンク色のスカートを振りまいて、その中からちょっと薄汚れたふんどしを覗かせながら、彼は腕を組んだ。


「今ひとたび、我らが海の上でこの衣服に身を包む日が来ようとは。護国のためにと滅私奉公にて着込んだものだが、はてさて奇縁とはこのこと。よもや、一度も江路幕府のために使うことのなかったこの力、明恥政府のために使うとは」


「勝さん、それはいいっこなしぜよ」


「そうじゃ大将。ここは禍根を捨てて、戦うときじゃぁ」


「全ては東の島国の未来のために。古き因縁は今は忘れて、共通の敵を倒しましょう、旦那!!」


 うむと頷く勝倫太郎。

 かつて東の島国を、大陸の脅威から守らんとした男は、その為に用意した魔法の制服――男用魔法少女服(矛盾)に身を包んで、しっかりと頷いた。

 見つめる先は水平線。

 その彼方に、彼らの敵はある。


 彼らの国を密かに今牛耳らんとする脅威。

 覇道の走狗たちが。


「行くぞ皆の者!! ムーンパワー!!」


「「「「メカップ!!」」」」


 謎掛け声とともに海原に飛び出す変態おっさんども。

 そして、彼らは魔法少女よろしく、水面を低空飛行で浮揚するのだった。

 なんでそんなに低空飛行する必要があるんですかという感じに、低空飛行で海を飛ぶのであった。


 パンツじゃないからとか、全力全開とか関係ない。

 なんていうか、根源的な魔法少女力を背負って――。


 オッサンたちは今蒼海へと飛びたつ。


 その姿は。


「……気持ち悪」


 クルーから見てもなかなかに地獄の光景であった。

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