第六章 燃えよティト!! 復讐のG幻流!!

第722話 ど女エルフさんと呂09

【前回のあらすじ】


 みんななんでイカちゃんのこと忘れてしまうんや。

 あんなに可愛い可愛い言うてたやないか。

 ワイは悲しい。あんなに可愛かったイカちゃんが、すっかり過去の嫁扱いされているのが悲しい。いつまでも愛でられるべきキャラクターやのに。

 なんで、なんで……。


「いや、言うてアンタもこのパロやるまで忘れてたでしょ」


 忘れていたでゲソ。


 という訳で。


 死んだかと思ったかどエルフさん。

 そんなもん、この小説の主人公である彼女が簡単にくたばるはずがない。フナ虫の如き生命力で生き残るに決まっている。


 お通夜モードの男騎士たちには悪いが、女エルフはまだくたばっていなかったんだな。


 けど、そんなことよりイカ――デビちゃんですよ!!

 うん、語尾がゲソなだけで、こんなに可愛くなるんだから、ほんと不思議!!


「そりゃ、ねぇ。その語尾使うキャラなんて、この世界で」


 と言う訳で今週。(雑導入)


◇ ◇ ◇ ◇


「ゲソゲソ、ゲショゲショゲソー」


「ゲショゲ、ゲショゲショゲショー」


「「「ゲソー!!」」」


 なんか小さいデビちゃんが女エルフに対して敬礼をしている。

 もうそれだけでなんていうかいろんなものが許せてしまう。そんな光景であった。そう、ちっちゃいのは可愛い。デビちゃんも可愛い。可愛いのがちっちゃくなって更に可愛くなるのだから、その破壊力は抜群なのは言うまでもない。


 事実、あれだけデビちゃんの登場に文句を言っていた女エルフも――。


「なにこの可愛い生命体。ここは天国なの、天国よね、きっとそう」


「潜水艦呂09の中でゲソ。説明したでゲソ」


 ほっこり顔。

 もはや、細かいことはいいんだよという感じで、すっかり心を許していた。


 女エルフが目覚めたのは海底を行く潜水艦――呂09。

 はっきり言って、潜水艦なるものがどういうものか、皆目見当もつかない女エルフたちだったけれども、とりあえず海に落ちて死んだと思っていたが助かったのは間違いないらしい。


 それでまぁ、力を貸してもらえるというものだから、借りれるものは借りておけと彼女はデビちゃんに素直に協力を申し出たのだった。


 この変わり身、そして、節操のなさ。

 流石だなどエルフさん、さすがだというものである。


 というのはさておいて。


「ゲソゲソ。この一番数の多い、帽子をかぶっているデビルフィッシュ娘は、マーリンデビルフィッシュゲソ」


「……マーリンデビルフィッシュ」


「そして、こっちでパンを焼いているのがベーカリーデビルフィッシュでゲソ」


「……ベーカリーデビルフィッシュ」


「そして我が艦の頭脳ともいえる研究班。それを担当しているのが、この、プロフェッサー」


「もういい、分かった、安定のFG〇ネタは分かったから!! とりあえず、よしましょうこの話は!! 可愛いは正義、それでもうおしまい!!」


 なんかバリエーションがいろいろあるデビちゃん達がやって来るのを前にして、自分の理性が保てないであろうことを察した女エルフは強制的に説明を止めた。


 それは賢明な判断であった。

 ただでさえ可愛いデビちゃんが、さらに可愛いバリエーション一枚絵で現れるのである。


 その衝撃たるや、冬コミがあれるというもの。

 とにかく話の本筋に戻ろう。


「この潜水艦呂09っていうのはいったいなんなの。どういう存在な訳」


「ゲソ。それについては、我々もよく分かっていないんでゲソ」


「分かっていないの!?」


「ゲソゲソ。陸地での生活が脅かされた、我々セイレーン族デビルフィッシュ科の者たちは、西の海での生存競争に負けて流れ流れて紅海は南の方まで移動したんでゲソ。けど、南の海は危険で――」


 なんか可愛い見た目に反して苦労はしているのねと、ちょっとかわいそうな気分になる女エルフ。そんな彼女の憐憫の視線に、ちっとも気づかず話を進めるあたり、やっぱりちょっと抜けているのは間違いない。


 少し足りていなくて、一生懸命なのは可愛いの条件。

 女エルフは、意味もなく頷くと、ファーストコンタクトの衝撃をひとまず置いておいて、デビちゃんの話をしっかりと聞くことにした。


「ゲソ。それで、どこかに安全に暮らせる海域はないかと、わずかになった同胞たちと共に海原をさまよっていたら、偶然見つけたのがこの呂09だったんでゲソ」


「へー。それじゃ、自分たちで作った訳じゃないんだ?」


「ゲソ。こんな神造兵器、ドワーフでもないと造れないでゲソよ。あ、けど、メカニックデビルフィッシュは、ちゃんとメンテナンスしてるから安心してほしいゲソ」


 にっこりと笑うデビちゃんだが、それに対して女エルフは真顔を返していた。

 その返答の中に、何やら聞き捨てならない言葉を彼女は拾ったのだ。


 偶然だろうか。

 神造と、彼女はこの潜水艦のことを言った。

 だとすればこれは、からくり侍たちと同じく――。


「もしかして、これを造ったのはライダーンじゃない!?」


「えっ? いや、確か違ったでゲソよ?」


「……違うの? もしかしてセンリたちに何か関係のあるものかと思ったけれど」


「うーん、そういう難しい話は、艦長の吾輩よりもこの艦の補助プログラムに聞いた方が早いでゲソね」


「……補助プログラム?」


 なんだそれはと眉をしかめる女エルフ。

 そんな彼女の横で、潜水艦の冷たい天井に向かって顔を向けたデビちゃん。


「リッスンローレライ、お前を造ったのは誰なんだゲソ」


「……わぁ、また、なんか懐かしいフレーズが。そして、そんな暮らしの便利ロボットみたいな聞き方」


 どうやらそれは、この船自体に棲みついているモノらしい。

 まぁ、神造の兵器であれば、そういうこともあるだろうかと思った矢先――。


「オーケー、キャプテン。ワタシを造ったのは、戦の神ミッテルです」


「……えっ?」


 女エルフはなぜかその声を聴いて、表情をこわばらせた。

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