どエルフさん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、奴隷狩りに襲われていたエロい女エルフを助ける。エッチなエルフたちとはじめるきままなハーレム冒険者生活。~
第691話 ど青年騎士さんとからくり艦隊これくしょん
第691話 ど青年騎士さんとからくり艦隊これくしょん
【前回のあらすじ】
襲い来る肉スライム。
すわ、逃げることもできずここに青年騎士落命かと思われた時、彼の身を救った影が一つ。それは茶色いフードを被った女からくり。
どことなくからくり侍を彷彿とさせる彼女は野太い鎖鎌を振り回して敵を断つ。
肉スライムを細切れに変えて、青年騎士を蹴り飛ばして戦線離脱させる。
からくりの身体をしならせて月下に舞う。
八面六臂の活躍をみせた彼女は、青年騎士の前にかばうように立ちはだかると――。
「からくり艦隊これくしょん、白露型三式時雨参る」
からくりらしく、無表情で名乗りを上げるのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「……ははは。なるほどやってくれるじゃありませんか。からくり艦隊これくしょんさんとやら。しかし、私の身体を砕いたくらいでいい気になってもらっては困りますね」
時雨と名乗ったからくり娘。
その眼前で、肉スライムこと道化のジェレミーが声を上げる。
すっかりと人の形を保つことを諦めた暗黒大陸の刺客は、肉塊と判別のつかないそれの中から、確かに人の顔だと判別できるものをはやすと、その二つ名に負けない気迫でもって、からくり娘を畔けるように笑った。
何度も言うが、彼は肉スライムが人間の形を成した化け物である。
スライムの身体は流体。一見すると肉の塊のように見えるが、それひとつひとつが単細胞生物。
あくまで主食となる血肉の形容をそれらしく残しただけの異形である。
青年騎士が渾身の一撃で繰り出した我流バイスラッシュ。
しかし、その斬撃を受けても絶命せず、肉スライムはその命を繋いだ。そもそも、スライムに通常攻撃など効くはずがないのだ。
故にからくり娘の攻撃は不毛。
すぐにも肉スライムは寄り集まると合体し、元の道化の姿に戻る――。
「……なんですと?」
かに思えた。
しかし、肉スライム。
その体が寄り集まっても、再びつながることはない。
つるりつるりとお互いの上に乗っかろうとしては滑り落ち、地面の上を転がっている。
これはいったいどういうことか。
目を見開く青年騎士。
その前で、しゃらりとからくり娘が鎖鎌を鳴らした。
その鎖の部分に月光に煌めいて濡れる何かが見える。
液体。
しかしながら肉スライムから滴る消化液ではない。
むしろ、その消化液を分解しているそれは、月下にもそれと分かる白い煙を微かに放っている。
「スライムの倒し方は知っている。分離剤を塗布した武器で攻撃すればいい。そうすれば、切断面の再生を防ぐことができる。あとは、他の部位で再生結合するより前に、切り刻んでやればいい」
「……なんと、対策済みでしたか」
スライムを倒す方法はいくらかある。
一つは、スライム核と呼ばれる、唯一スライムにある固体部分を破壊することである。これを破壊されると、単細胞生物であるスライムは群体としてのまとまりを失い、次々に分解して自壊するという特性がある。
一つは、スライムを火炎魔法で強制的に焼き尽くすというモノ。単細胞生物でも、活動不能になる状態まで焼き切ってしまえば問題ない。強引ではあるが、強力な火力を出す道具や、それを起こせる魔法使いがパーティー内に居れば、まずまずポピュラーなスライムの倒し方であった。
そして今、からくり娘が使ってみせたのは、三つ目の方法。
スライムが合体再生しないように、分離液を使って攻撃をするというものだ。
前者と比べるといささか手間に思え、確実性に劣る技であるが――その一方で、自身の使い慣れた武器にそれを塗布するだけで威力が出るというものでもある。
しかしやはり、冒険者でも一分の者しか使うことのない、秘奥のような技。
月下。
再びからくり娘の瑪瑙の瞳がきらめく。
鎖と鎌をふりまわして、三つ編みおさげの少女からくりは、かたりかたりと身体を震わせる。
それは、決して笑うことのできない身体で、目の前の化け物の愚かさを笑い飛ばしているようにも見える。
「
「えぇ、てこずりましたよ。ですがほれ。私のような異形の相手は、いささか彼らも初めてでしてね。それはもう、濡れ手に粟という感じで」
「ふん、言ってくれるな外道」
「よいではないですか、貴方にとっても敵には変わりないでしょう。しかし厄介厄介。からくり艦隊これくしょんですか。貴方たちのような者が、他にも何人もいると思うと――」
わくわくしますね。
そう言い捨てるや、幾つもの肉体に分かれたジェレミーが一斉に襲い掛かる。
会話による油断。
合体できないと見るや、すぐさま、個別で攻撃を仕掛ける狡猾さ。
普通、スライムというのは、核を持つ部分しか変形・行動できないものだというのに、その認識を逆手に取った強襲。
トリッキー、卑劣、あるいは狡猾。
道化に恥じない一手を繰り出したジェレミー。
だがしかし。またしてもその凶刃は、他の者の手により防がれた。
炸裂するのは朱色の砲丸。びっしりと経文が書き込まれたそれは、ジェレミーの肉スライムの身体を焼き切る。
阿鼻叫喚。
悪魔の叫び声と共に、月下に再び舞うのは違う少女の陰。
紅色の瞳を光らせて、短い黒髪に金色のかんざしを刺した彼女は、手に持った二つの筒の先を、肉塊に向かって狙い定めた。
「南無八幡大菩薩」
砲身から噴き出される煙と焔。飛び散るは幾つもの鉛玉。散弾の雨霰をぶちかまして、少女は中空で弧を描いて両の脚で着地。そのまま、地面をすべるようにして、フードの少女の近くにたどり着くと、カタリカタリと口元を揺らした。
からくりに表情筋はない。
けれども、確かにその少女の横顔は、笑っているように青年騎士には見えた。
「抜け駆けは卑怯だ時雨。まだ、我々は正体を黙っておくべきところだろう」
「……夕立」
「白露もご立腹だぞ、勝手な行動は慎めと。なので、共同戦線と行こう」
筒の中身を振るって捨てて、すぐさま早合を籠める夕立。
はたして、彼女たちは何者なのか。
そして、この尋常ならざる強さはなんなのか。
そもそも彼女たちは――。
「君たちはレースの参加者なのか?」
自分の状態を差し置いて、聞かずにはいられなかった青年騎士。
しかし、それに無言の背中で応えて、少女からくりたちは駆けだした。
「やってくれたなぁ!! ぐそぉおおおおっ!!」
「左は任せる」
「分かった。どちらが仕留めても文句は言うな。早い者勝ちだ」
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