第643話 どエルフさんとヤクカツ
【前回のあらすじ】
「タイトルぅぅううううう!!」
謎のセーラー服美中年戦隊(自称)三人組と遭遇してしまった女エルフ。
この作品の中でもぶっちぎりの変態ぶりを披露して、濃い圧をかけてくる彼らに女エルフは匙を投げた。
ただの自己紹介だというのに、もうその時点で匙を投げた。
こ〇亀で言ったら海パン刑事的なポジションのキャラクター。
いや、月光刑事的なポジションのキャラクター。
それが一気に三人も出てきたのだ。
こればっかりはもう、変態の相手はお手の物、どんなド変態プレイだろうと笑顔で捌いて見せる熟練の女エルフでも仕方なかった。
変態にも限度というモノがあるのだ。
「タイトル!! もう最近、タイトルが息してない!! もうちょっと穏当なのにしなさいよ!! タイトルだけで不安を与える作品なんてそうそうないわよ!!」
果たしてこの変態達、いったいどのような素性の者なのだろうか。
この物語における目的とはいったいなんなのだろうか。
分からない、謎のセーラー服美中年戦隊(自称)の目的が分からない。
「だから!! タイトル!! もっと公序良俗を意識して!! ヤクカツって!!」
はたして、バンナ〇に喧嘩を売って大丈夫なのかな?
そんな感じで、今回もカクヨムの無宿無頼の風来坊小説はじまりはじまり。
「ほんと、いつ追放されても文句言えないわよ、バカーっ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「えっ!? 新政府になってから、海賊活動が厳しく取り締まられて、廃業の危機!?」
「だぞ!! シノギのために陸に上がってアイドルをやるしかない!?」
「
「頑張るなァ!! おい、セ〇まで敵に回してどうするのよ!! 危険なネタばっかり詰め込みやがって!! ガバガバか!! この作品のコンプライアンスはガバガバか!!」
「……危ねえ橋を渡っているのは百も承知」
「……あぁ、ともすれば下着が見えるこの稼業。しかし、恥を偲んでもやらねばならねえ時がある」
「……むーりーを承知で道理を引っ込ませなくちゃならない時もあるんですよ。けど、やっぱりむーりーには違いないんですけど。むーりー」
「分かってない!! お前ら、自分たちがどれだけヤバい存在なのか、まったく自覚していない!!」
机を叩いて談判する女エルフ。
しかしながら、次郎長たち美中年戦隊はきょとんとした顔をしていた。
いったい何がヤバいのか。
彼らは少しも理解していないようだった。
まるで、こんなの別に普通だろうという感じでセーラ服美中年戦隊をしていた。
ウワキツ展開には定評のある本作品であるが、これはウワキツどころではない。男騎士の女装を通り越してHENTAI案件である。
いい歳したおっさんが、ミニスカセーラーで酒場で世の無常を儚んでいる。
こんな案件があっていいだろうか。
いいはずがない。
地獄、地獄である。
事実、絡まれてしまって動くに動けなくなった女エルフたちを除いて、酒場からは人の姿が消えていた。面倒事はたくさんという感じに、周囲から人の気は消えていた。店の店主さえも、今日はもうどうにもならんという感じで店の奥に引っ込んで、強い酒を呷っていた。
酒、飲まずにはいられない。
「という訳で、僕たちはヤングでクールなアイドル活動を始めた訳ですよ」
「略してヤクカツ!!」
「……薬でも広域指定暴力団の略でもない、健全な略称なんですぅ」
「ヤングでクールとかいう言葉を選んでいる時点で何かがおかしいのよ!! それでなくてもなんでそんな不穏な文字をピックアップするかなぁ!! 発想が健全じゃないのよ発想が!!」
そう言って、美中年戦隊をなじる発想がどピンクなことに定評のあるどエルフ。
お前がそれを言うのかという視線が
ため息。
むくつけき男たちにより絡まれた女エルフたち。
エロ漫画に出てきそうな輩たちに、すわ乱暴されるのねかと思いきやさにあらず。そこは熟練の冒険者。
女エルフが魔法を炸裂させると、陸に上がった海賊たちは割と簡単にやられた。
すぐに白旗を上げて降参した。
「ふっふーん、まぁいいでしょう。陸の上は海賊にとってはアウェーですからね。今回は僕たちの負けとしておいてあげますよ」
そんな感じで、小清水次郎長は自らの負けを認めると、素直に女エルフの前でお縄についたのだった。
そう、どったんばったんはもう既に過去の事。
お説教タイムへと場は突入していた。
小清水次郎長率いる美中年戦隊。
それらがずらりと膝をそろえて女エルフたちの前へと正座している。
紅海を荒らして回ったむくつけき海賊も、マジ切れの女エルフの前には意外と手も足も出なかった。
さて。
「まぁ、アンタたちがそういうトンデモ衣装をしている理由は分かった。それについては目を瞑るとしましょう。私たちも鬼じゃない、個人の自由は尊重します」
「そうでしょう。ふっふーん、僕は何を着ても可愛いですから」
「とりあえず、そのキャラクター性は封印しろ。いいこと、次郎長。分かったわね」
「分かりやした姐さん。分かりやしたから杖をおろしてくだせえ。もうこれ以上、火炎放射器リアクションをする体力的な余裕はねえんでさぁ」
こってりと女エルフにしぼられた小清水次郎長たち。
小清水という響きが想起させるアイドル像に危惧を感じた女エルフが早急に手を打つと、彼らはすごすごとその言葉に従ったのだった。
別に倒してしまって店から放り出しても構わない。
だが、そうしないのには女エルフたちにも訳がある。
彼らがどうしてそんな格好をしていたのか。
憤りを漏らしながら酒場に入って来たのか。
そこを根ほり葉ほりと聞き出したのにも、もちろん当然のように意味はあった。
女エルフたちは紅海を安全に行く方法を探していた。
そう、紅海の潮の流れと航路を知り尽くした、熟練の航海士を求めていた。
どうと女エルフが目配せをしたのは、この手のことにはおそらく鼻の利く
大陸最大の組織の頂点に君臨する彼女は、うぅんと唸ってから頷いた。
それは了承の意味を含んだ頷き。
すぐにその意を汲んで、女エルフは次の言葉を繋いだ。
「あなた達が憤っていること、そして、海賊行為ができなくて困っていることはよくわかったわ。そこでどうかしら、ここはひとつ海賊の仕事とは違う仕事をしてみるというのは?」
「他の仕事だってぇ?」
「なんでいなんでい、いきなり話が明後日の方向に行くじゃないか」
「……アイドルだって満足にできない森松に他の仕事なんてむーりー」
あらそう、なら野垂れ死になさいなと冷たく突き放す女エルフ。
交渉術については本来であれば法王や女修道士の領分なのだが、ここは女エルフが強気に出た。はたして、そんな強気がいい方向に転がったのだろう。
しばし顔を見合わせて唸った次郎長たち。
彼らはしぶしぶという感じに女エルフの方を向くと、詳しく話を聞こうじゃないかと言い出したのだった。
ふっとほくそ笑むのは女エルフ。
かくして、変態海賊たちの囲い込み――もとい、不安だった紅海の航海方法を女エルフたちは手に入れたのだった。
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