第632話 ど大性郷さんとアローハの姿

【前回のあらすじ】


 ヌーディストビーチにテンション上がる男騎士。


 しかし現実は残酷。

 裸の園に居るのは、男、漢、♂ばかり。


 そう、遮るものもない青空の下で、異性の裸に出会おうだなんてそんなうまい話があるはずがない。まかり通るはずがない。いくらフィクションでも許されない。乳首券は発行されない。


 ヌーディストビーチなんてものは存在しない。

 あるのはただの裸で入れる海水浴場。

 男女が別れて入る感じのビーチであった。


「ティトさん!! 僕は、僕は憧れの、眼鏡系インドア派ドスケベ女子が、勇気を出してヌーディストビーチにやって来ていると信じて!! 信じて貴方について来たのに!!」


「ちっちゃいのからおっきいのまで、たわわたぷんな女の子たちが丸出しで待っていると思っていたのによう。どうすんだよ。俺の刀身から湧き出るこの剣気を。このオーラを。どうしてくれるっていうんだよ」


 怒る青年騎士、嘆くエロ魔剣、そして絶句する男騎士。

 彼らは残酷な現実に打ちのめされた――。


「いや、普通よく考えたらわかるでしょう」


 そして違う方向でヌーディストビーチを楽しむことにした。


「あぁ、なんて解放感」


「まるで社会の窓を開け放つような心地」


「すべてをさらけ出す勇気。ヌーディストビーチで俺たちは一つ大人になった」


 世の中、なかなか裸のままで外に出れる場所は少ない。

 青空の下、生まれたままの姿でびろんびろんする解放感に、男騎士たちは浸るのだった。


 浸って、その心の中に渦巻く、どうしようもない絶望感を誤魔化すのだった。


「「「……うぅっ、ヌーディスト」」」


「しょーもなー」


◇ ◇ ◇ ◇


「ふふっ、ティトどんたちもヌーディストビーチに幻想を持っていた口でござるな」


「性郷どん」


 ぶるん、大きなふぐりを振るわせて、男騎士たちの背後に現れたのは大性郷。


 ヌーディストビーチにざわめきが起こる。

 男ばかりの園の中にあって、その裸体はあまりにも魅力的だった。


 いや、実際にはその股間が実に魅力的だった。


 常人の三倍。


 まるで買い物袋をぶら下げているような、おそろしいふぐりの姿に、男たちは息を呑む。自分のそれと比べてあまりに大きいそれに抱くのは畏怖。同時に敬意。

 動くたびに激しくのたうつそれを、股間に常にぶら下げているという一つの事実。


 考えられるだろうか。

 想像できるだろうか。


 まるでスイカでも入れているような巨大な袋が、常に自分の股の間で揺れているということを。


 余人のサイズにしても時にもてあます男のふぐり。

 それをこうもダイナミックにぼよよんぼよよんと振り回し、モーニングスターのように揺らめかせる。

 もはや肉の凶器。

 股間にぶら下がった殴打アイテム。


 男としての器の違いをまざまざと見せつけられて、男騎士たちは生唾を飲み下した。


「これが、東の島国を導いた英雄の器」


「なんと大きく逞しいんだ」


「ちん〇だけは鍛えようがないとはよく言ったモノだけれど、ふぐりだって鍛えようがない。病気で大きくなったのかもしれないが、あの慣性制御は間違いなく無窮の鍛錬により身に着けたもんだぜ。ティトよ、あの男、相当な使い手だぜ」


 あぁ、と、男騎士が魔剣の言葉に同意する。


 するとその時――。


 おや、大性郷の身体に変化が。


「見てください!! ティトさん、性郷どんの股間が!!」


「……なんだと!!」


「こないな場所で進化勃〇しただと!!」


 いったい何が彼の身体に起こったのか。はたして、何が彼の股間の海綿体に血液を送り込んだのか。そこについては定かではない。


 しかしながら迸る彼の中の血潮が、股間に流れ込んだかと思うと、見る見るうちにふぐりとふぐりの間にあるそれの中を駆け巡った。


 巨象。

 まるで静かに佇む巨体の四つ足の獣のようになる大性郷の下半身。

 いったいそれを象と喩えたのは誰だったか。しかしながら、そうとしかいいようがないくらいに、大性郷の股間は超進化していた。


 これが――。


「大性郷!!」


「アーッローハーッの姿!!」


 大性郷のふぐりはヤシの樹に進化した。

 南国の陽気とヌーディストビーチの開放的な空気が、彼の股間のモンスターを目覚めさせたのだった。

 そう、股間ポケッ〇の中のモンスターを。


「ふっ、そんなまじまじと見られては照れるでごわす」


「チンミチ。こいつら、本当にまともに戦える奴らなのか。こんなことでいちいち驚いて」


「ニシー!!」


 そう。

 勃〇した訳ではない。

 大きくなったのは他でもない。大性郷の股間に住まう寄生獣。それが動きだしたからだ。少し考えれば分かること。けれども、何も知らなければ分からないこと。


 うねりうねりと天を穿ちのたうつ寄生獣モンスター


 そのつぶらな瞳がぎょろりと目を剥いて、男騎士たちをシリアスにねめつけた。


「気をつけろよお前ら。何か、嫌な視線がさっきからこっちを向いている」


 獣がその鎌首をもたげたのは他でもない。

 その本能が危機を感じたからだ。


 しかし、男騎士たちはその言葉を受け止められなかった。


「……なんてことだ、これが伝説の誕生!!」


「……英雄の帰還!!」


「……バーにフグリでバーフグリ!!」


 それが大性郷の寄生獣によるものだと分かっても、何かの危機だと察しても、そのエスニックダイナミックな圧巻の演出を受け止めるのでいっぱいいっぱい。


 おそろしいものを見た。


 人間は驚き・感動により時に行動不能に陥るものである。

 男騎士たちはまさしく今その状態だった。

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