第626話 どエルフさんとニシー
【前回のあらすじ】
海で漂流しているどざえもんを拾った男騎士たち。
しかし奇なるかな、そのどざえもんは男騎士の知り合いにして、
なぜ現在の東の島国をまとめているはずの性郷がこんな所でどざえもんになっているのか。東の島国はどうなっているのか。
事情を問いただすうちに、性郷が時代の変革についていけなくなった人々をなだめるために在野に下ったことを男騎士は知る。
彼の献身虚しく、東の国では不満分子による暴動が発生。
その名を――。
「性難戦争でごわす!!」
はたして、どんな戦いなのか。
七人の特殊な性的嗜好を持った英霊たちが、国を巡って争うのか。
それとも字面があれなだけでやっぱり史実っぽい戦いなのか。
なんにしても――絶句。
突然介入してきたにしては、見事なまでの色ボケをかます性郷隆盛。流石の大英雄にまちがいなかった。
そう――。
流石だな性郷さん、さすがだ。
「……これ、やっていいパロなの?」
一年前にせご〇んやってた頃から、やりてぇやりてぇ思っていてようやくやれたんですよ。放送も終わったし、大丈夫大丈夫。
「筆者の家に薩摩隼人がカチコミかけないか心配」
☆ やめてね――!!
◇ ◇ ◇ ◇
「性難戦争の勃発により、おいどんたちは故郷の擦摩に立てこもった。そこで、現行政府に対して抗議の意味を込めて、三十一日涙のオナ禁活動を断行した!!」
「……そんな!!」
「七日でも辛いというのに!! その三倍だなんて!!」
男騎士と青年騎士が絶句する。
その横で、何事かしらと船倉から出てきた女エルフが汚いものを見る目を向けていた。
ワンコ教授は、聞いてはダメです、見てはダメですと
女エルフだけが意識が向けているとはいえ、この公衆の面前である。
それでなくても、どき、女ばかりの海賊船の中である。
そんな中でオナ禁とかいう言葉をはばかりもなく発することができるのは、流石の大性郷。人間が大きくなければできない――いや、肝っ玉が大きくなければできない、そんな芸当であった。
性郷隆盛。
ずんぐりむっくりのその巨躯と強い意志を感じさせるその男。
まさしくこの東の島国に唯一の英傑に違いなかった。
しかも――。
「性郷どん、こんなことを言うのは、いささかなんというか君にとって申し訳ない気がするのだが」
「ティトどん。気にせずよか。ワイの身体のことじゃろう。じゃっとん、だからこそオナ禁が意味を成す。あの大性郷、おおふぐりの隆盛がオナを禁ずるとなれば、皆もおいの艱難辛苦を汲んでくれるというもの」
「……どういうことなんですか、ティトさん?」
聞く必要あるか。そんな感じでまた、汚いものを見るような女エルフの目が青年騎士に飛ぶ。もうその回答については、大性郷の台詞の中に入っていた。
おおふぐりである。
【キーワード おおふぐり: おおきな金〇の古風な言い方だよ。下ネタ漫画や小説なんかでは蜂に刺されて大きくなるとかよくある感じのネタだよ。顎がなかったりするゲンさんの漫画で読んだから間違いないよ】
「性郷どんの金〇は常人の三倍あるんだ」
「……常人の三倍」
「寄生獣でごわす。男の海綿体にだけ寄生するミミズ型のものでのう、名を海綿蟲と申す。擦摩の離れ島にて隠棲している折に罹患してのう。その頃より、人の三倍あるふぐりを股に激動の時代を駆け抜けてきた」
「そんな、人の三倍もあれば走るのも困難だろうに」
「そう、そして、人の三倍もあるから、溜まる量も三倍なんだ」
「……出る量は!?」
「五割増しにごわす」
「それは――男として羨ましいような、けれども羨ましくないような!!」
羨ましくないだろう。
病気になった人の気持ちを考えてやれよ。
女エルフはともするとギャグにはつきものの不謹慎な感じのその会話に、白い眼を向け続ける。白眼視を続ける。流石だなどエルフさん、さすがだと、弄られ続ける毎日への腹いせとばかりに彼女は非難の視線を仲間に浴びせ続けた。
女ばかりのこの海賊船の上で、なんという会話をしているんだ。
もはや見過ごすことはできない。
無言で彼女が杖を取り出したその時であった――。
「チンミチ、どうした、何かあったのか」
「あぁ、ニシー。ちょっと古い友達に遭ってな。つもる話をしていたところだ」
ひょっこりとまたぐらの間からなんだか可愛らしいポークビッツが飛び出していた。
三倍のふぐりにはちょっと似合わない、可愛らしい親指サムが飛び出していた。
その指の腹には一つの目と口。
肌色よりもピンク色が鮮やかな、不思議なミミズがそこには居た。
「紹介しよう、ロイドどん。これがおいの身体に寄生した海綿蟲のニシーだ」
「海綿蟲の……ニシー!?」
「ほう。こいつはなかなか人間にしては利口そうな顔をしていやがるな。どこぞのボンクラ冒険者とはちょっと違う感じがするぞ」
「おいおい、それは誰のことだニシー」
「うむ? なんだ、懐かしい声がすると思ったら、お前も居たのかティトー。相変わらず、アホが人間の顔して歩いているような間抜け面だな。少しは成長しろ」
「すまんな。お前のように大きくなったり、小さくなったり伸縮自在だったなら楽なんだがな。なかなか人間はそんな風にはできていないんだ」
飛び出してきたピンクの猥褻物と和気あいあいと話をし出す男騎士。
驚きながらもそれを受け止める青年騎士。
そして、なんだか誇らしげに腰を突き出す大性郷。
女エルフは思わず手にしていた杖を落として、白目を剥いた。
「チン〇やん!!」
「どうしたんだ、モーラさん!!」
「何をいきなり――ハレンチですよモーラさん!!」
「いきなり初対面の人間に向かってその口の利き方はなんでござる。この性郷、ふぐりと心の大きさには自信があるが、骨とチン〇と礼儀には太い筋を通す主義」
「いや!! ふにゃふにゃやん!! 筋、通ってないやん!!」
だらり首をもたげるニシーは確かにふにゃふにゃ。
重力によって垂れ下がっている、中年にありがちな気合いの入ってないものだった。
「……おい、小娘。誰がふにゃふにゃだ。お前、死にたいのか?」
「やめてくれニシー!! 彼女は俺たちの大切な仲間だ!!」
「そうでごわすニシー。むやみに暴力を振るうんじゃない」
男騎士と大性郷に止められるピンク色の何か。
やれやれという感じに彼は鎌首をもたげ――ようとしたけれどもたげられず、しなだれたまま、雫を払うように揺れると女エルフを睨みつけるのだった。
「チンミチとティトーが言うからやめておいてやるが、口は慎めよクソエルフ。お前たちなんて、俺が本気になったらすぐに肉片なのだからな」
「いや!! お前が慎め!! そんな危険なパロディをして!! 講談〇が怒ったらどうするんだ!!」
もっともな言い分であった。
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