第616話 どエルフさんといざ海の果て
【前回のあらすじ】
なんやかんやで引っ張っていたミッテル使徒九傑。
その意味がようやくその一角であるハゲ修験者から語られる。
彼らはミッテルに見込まれて、定命の身から外れ彼の神に代わって世界で起こる戦を監視する者たちであった。
はたしてその名が記された巻物を渡される男騎士たち。
彼ら全員に会った時、はたして戦神ミッテルは男騎士たちの前に姿を現すだろうと、ハゲ修験者は約束するのだった。
しかし――。
第一席 伏龍宰相 コウメイ
「「なんか見知った名前が一番上にある!!」」
既に倒しちゃったか感のある名前が一番上に来るうすら寒さ。
はたしてこれ大丈夫なのか。コウメイ倒しちゃってるけど問題ないのか。後付けで設定を追加すると、いろいろと矛盾が発生するけど、主人公たちがそれをあっさりと見抜いてしまっていて問題ないのか。
しかし、それよりも問題なのは――。
☆ 講談社ラノベ文庫新人賞用の原稿が終わらない――(三ヶ月経っても続きが書けていない)!!
筆者の、公募原稿の進捗であった!!
「って、うぉーい!! 関係あるかーい!!」
最近ちょっと展開が荒いなと思っていたらこのザマです。
絶賛公募であがいている上に、就職してちょっとリズムがまだつかめていない感が半端ありません。いやはや、やっぱり兼業しながらそこそこの量と質をアウトプットするのって難しいもんですね。いや、まぁ、僕の場合は質の方はちょっとあかんかもですが。
「卑屈になる必要ある!? 読んでくれてる読者さんのために、そこはもうちょっと胸を張ろうよ!!」
☆ いつもついてきてくれてありがとうございます!! これからもどうぞよろしく!!
という感じで、第六部いよいよクライマックス。
さてさて海の向こうの第七部にはいったい何が待っているのか――。
◇ ◇ ◇ ◇
「それじゃぁ出港するよ!! アンタ達、陸に忘れ物はないだろうね!!」
「大丈夫だ、問題ない!!」
「問題がある返事!!」
「大丈夫ですよアンナさん。さぁ、出発しましょうか」
「だぞ!! いざゆかん、紅海の果て!! 東の島国なんだぞ!! サムラーイ、ニンジャー、ゲイシャーが僕らを待っているんだぞ!!」
「そして島国で独自に進化を遂げたエルフたちも!! 和服エルフとかそういうのって密かなニーズがあると思うんです!! どう思いますかねお姉さま!!」
まったくこれから世界を救いに行くという緊張感のない男騎士たち。
しまりのないその返事にたははと苦笑いする女船長。
仕方ないわねという感じに、その視線に女エルフが頷くと、彼女は手を挙げた。すると、その合図に合わせて、船の側面に備え付けられた大砲から音が飛ぶ。
大英雄たちの出航を国に知らせる礼砲である。
気づいた者たちの数は少ない。
出立する彼らに手を振る者はほとんどいない。大概の者たちが、なんだろうかと奇異の視線を向けるだけである。
無理もない。
今、白百合女王国は復興の最中である。彼らには、そんなことに気をかけている時間さえないのだ。
けれども、そんな彼らが一瞬でも、自分たちに目を向けたのが嬉しいのだろう。
新女王は船の縁からこっそりと、その顔を覗かせて港に集まる人々を眺めてほくそ笑んだ。まだ、復興は最中である。しかし、港を眺める彼女の民たちの顔に、もはや戦に疲れて未来に絶望した色はなかった。
彼らの目の中には、新しい女王の下に紡がれる、輝かしい未来が浮かんでいる。
「みなさん、しばし待っていてください。私が必ず、この世界に平和をもたらしてみせます。貴方たちの平和を、必ず掴んで帰って来ますから」
「……エリィ」
「ですからその間――お母さまのことをよろしく」
最後の最後でそういう小ボケはいいのよと、女エルフが義妹の頭を小突く。
あははと笑ってとぼける新女王。その笑いがまた仲間たちの間に伝播する。
いよいよ、パーティらしくまとまってきたものだなと、男騎士が嘆息する中で、海風を切って船はいよいよ動き始めた。
目指すは紅海の果て。
東の島国。
その島国の中でも冥府の島として畏怖される場所。
黄泉平坂。
常世の国。
その名を、ラ・バウル。
「待っていろ、冥府神ゲルシー!!」
遠き水平線の彼方。男騎士の視線の先にそれはまだ見えない。
しかし確かに彼はそれを捉えていた――。
◇ ◇ ◇ ◇
「……さて。行っちまったか」
出港する男騎士たち。
それを見送る一つの影があった。
この国の者たちは先にも言った通りである。船を見送る余力もなければ、そこに誰が乗っているか知っている者もいない。
であれば、その出港を知っているのは誰ぞ。
答えは一人しかいない。
「ふっ、東の島国か。また因果な地にアイツらも向かうことになっちまったようじゃねえか。まぁ仕方ねえ、アイツ等の行動力は俺も認める所だからな」
港の係留杭に足をかけて格好をつける。
葉巻を加えて一人カモメに向かってニヒルな笑みを浮かべる。
こいつを知っているとどうなるの。
知らんのか――。
「この店主が沖まで泳ぐことになる――とはな!!」
店主であった。
そう、いつだって、男騎士たちの心強い(?)味方。
頼れるドラ〇もん的狂言回し。どんなアイテムでも出してくれるいぶし銀。
この作品の静かなレギュラーキャラクター。
変態店主その人であった。
さて、それじゃいっちょ泳ぎますかとおもむろに服を脱ぎ出す店主。
すると、そんな彼の前に三つの魚影――ならぬ人影が海の中から近づいた。
「お待ちしておりましたぜ、旦那ァ!!」
「ついに大海を渡るんですね!! しかも東の島国に凱旋とは!!」
「こいつは皆も喜びますぜ!! 俺ら湖賊もわざわざ海に出た甲斐があったってもんだ!!」
「リャン、ウー、チー。わざわざ来てくれたのか、お前ら」
それはどうやら店主の知り合いらしかった。
むくつけき、褌の水夫たち。
ねじり鉢巻きに分厚い胸板が似合ういかにもブルーワーカーな彼らは、こっちに来いよという感じに熱い視線を店主に送る。
やれやれとその視線に応えてから店主は――。
「あいつらにとっても試練の渡海だが、俺にとってもこいつは試練の旅になっちまいそうだな」
ざぶんと、港に向かって飛び込んだのだった。
起きる白波。
波止場に寄せる飛沫。
しかし、その中から。
むくつけき男たちがスプラッシュと顔を出す。
立ち泳ぎ。古式泳法により、見事なシンクロ率を見せた水夫たちは、すかさず店主をその腕の上に載せるのだった。
そう、そのまま東の島国に向かうぞという感じで。
「さぁさぁ、旦那のお帰りだ!!」
「我ら漁師のゲンさんの腕の見せ所!!」
「アゴナシ水運の力を見せてやろうってもんよ!!」
今、言われてみると、皆顎がない。
そしてどことなく髭が濃い。いや、顔が濃い。体毛も濃い。そして、なんだか馬鹿っぽい顔――。
やめよう。
危険なパロ。
とにかく、そんな嵐の予感を匂わせつつ、ここに第七部の幕が上がるのだった。
【第六部完】
【第七部 パイ〇ーツ・マルミエヤン・ドットコムに続く】
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