第600話 ど禿修験者さんと今川ファンタジスタ

【前回のあらすじ】


「儂も、魔法少女プリキュ〇になれる!!」


 プリキュ〇は魔法少女ではない。


 根本的なところを勘違いしている出雲虎ではあるが、その目は本気である。

 国を想う気持ちが、魔法少女になる力に繋がるのであれば、自分もそうなれる。

 信じて疑わないハゲ修験者の気持ちが奇跡を呼ぶのか――。


 次回!! 褌の交換!! これが儂の水着礼装イベント限定グラじゃ!!


「次回じゃないわーい!! あかんやろ、このネタは!!」


 ☆ アカンですかねカドカワさん。(問われても困るだろ)


◇ ◇ ◇ ◇


「はぁんぬぐぅぬぅわぁああああああっ!!!!」


「なっ、なにぃいいいっ!!」


出雲虎しゅつうんこさんの身体が光って唸る!! 私たちを倒せと轟き叫んでいる!!」


 そう、奇跡が起きた。

 出雲虎ことハゲ修験者の気持ちが天に通じたのか。

 それとも、彼の持っている神通力がそれを起こしたのか。

 その原理・原則・方式については定かではないが、たしかにハゲ修験者の身体は黄金色に光り輝いていた。


 その光まさしく摩訶不思議如来光。

 神々しくジューン山の頂を黄金色に染め上げて、ハゲ修験者の身体が宙を舞う。雲一つない青空に浮かび上がった中年修験者は、かっと口を開くと一言。


「うーまーいーぞー!!」


 意味不明な言葉を吐いた。


 いったい何がどうなっているのか。

 分からない女エルフ。困惑する第一王女。もはや彼女たちの知性では判断不能の状況に、魔法少女勝負を自ら仕掛けたことも忘れて、彼女たちは青い顔をした。


 まずいことになってしまった。


「だぞ!! なんてことなんだぞ!! あれはまさかの【今川ファンタジスタ】!!」


「知っているんですかケティさん!!」


 そしてそんな二人をフォローするように言葉を発したのはワンコ教授。


 なんでも知っている便利な解説役。

 本作品の良心というか雷電。

 彼女はいつものように濃い顔になると、だらだらと汗を流して解説を始めた。


 そう、ハゲ修験者の身体を、光って唸って宙に浮かせてなんだか壮大に見せている魔不思議如来光――【今川ファンタジスタ】についての解説を。


「だぞ、あれなるはどんな理不尽で不可能な設定も、演出の妙で押し切ってしまう力業。たしかな経験と実績に裏打ちされた無茶ぶりのファンタジックな解決策」


「ファンタジックな解決策!?」


「そのアクロバティックでパワフルなプレーはまさしく海道一の弓取りと言われたイマガワの如く。その名にあやかって名付けられた虚構魔法――それが【今川ファンタジスタ】なんだぞ!!」


「まったく説明になっていないけれど、なんだかその言葉の響きを聞くだけで、あぁ、なるほどと感じてしまう説得感!!」


【虚構魔法 今川ファンタジスタ: 次ガンダ〇やるならプロレスだぞ。そんな大御所からの無茶ぶりをこなせる奴はこいつしかいなかった。派手な演出。痛快な話運び。視聴者の心を掴んで離さないその妙。まさしく神業。そう、それこそはガンダ〇新世紀を切り開いた剛の者の御業。彼の有名監督から、ガンダ〇というコンテンツを切り離すための禊。そう、Gガンダ〇は駄作ではない。駄作になることを強いられていたんだ!! ガンダ〇的にはNGかもしれないが、これがありならもうなんでもアリだろうという、そういう空気を作り出すために、必要な布石だったのだ!! 後のWもXも00もAGEも、彼が切り開いたからこそ続くことができた!! つまりGのGはグレートですよイマガワ監督のGなのだ!! あともしかするとジャイアントのGかもしれない!! え、街道一の弓取りイマガワはどこ行ったって!? しーるーかーそーんなーもーん!!(エコー)】


 その時、火山ではないはずのジューン山の頂上に激しい揺れが巻き起こった。


 天に輝くハゲ修験者。

 地に揺れるジューン山。


 まるで世界全体が、これから起こる出来事に恐怖しているようである。


 たまらず第一王女が女エルフの手を握り締める。

 魔法少女になり、女王としての真の威厳を獲得してなお、まだ揺れるのは人の心。その心に優しく寄り添って、女エルフは大丈夫よと語り掛けた。


 しかし、握り締めるその手も震えている。

 彼女もまた、得体の知れないこの展開に、自我を保つのでやっとであった。


 はたして天から降り注ぐ摩訶不思議如来光と地の振動が共鳴したかと思ったその時であった。ぼこりぼこぼことジューン山の赤味の薄い地面が割れたかと思うと、そこからひょっこりと何者かが顔を出す。


 それは触手。

 まるで植物の根のようなうじゃりうじゃうじゃとした緑の蔦。

 そしてそこから現れる、真っ赤な薔薇のような鋼のボディ。


 そう、それなるはまさしく、規格外のガンダ〇――もといロボット。


「おぉっ!! まさか、これなるはミッテルさまが造りたもうた鋼の巨人!! 我が魂の慟哭に応えて姿を現すとはまこと意気天に通ずるというもの!!」


「ミッテルの鋼の巨人!?」


「なんてこと……まさか、この最後の最後という状況で、そんなものが出てくるなんて!!」


 鋼の巨人がジューン山に赤い薔薇を咲かせる。

 開かれたつぼみから顔を出したのは――そう!!


「……ウホっ!!」


「……いい顔の男!!」


 ピンク色の花粉をばら撒いて開花した、これまた濃ゆい男の顔であった。


 デビルガンダ〇。

 趙〇明。

 いいえ、違います。


 ここはそうジューン山。

 そこに封印されている鋼の機体の名は――。


「見てください、鋼の巨人の腕になにやら文字が刻まれています!!」


「あれは、まさか――!!」


「……バ・ラ・ザック!!」


薔〇族バラザク!!」


 魔改造されてもう元ネタも分からなくなったザ〇。

 バ・ラ・ザックであった。

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