第601話 どエルフさんとハニワ原母
【前回のあらすじ】
残された最後の奇跡。
国の荒廃を憂いたハゲ修験者。その魂の咆哮がジューン山に木霊する時、遥か太古に封印された伝説の鉄の巨人が目を覚ます。
まるで薔薇のつぼみのようなその巨体。
巨大ロボとは人型でなければならないというその概念を根底から覆す圧倒的な異形感。そうそれこそはまごうことなき触手の巨人。
モビルスー〇はともかく、ガンダ〇という概念を最初に破壊した多脚型にして触手型の異形。声なき地球の代弁者。そしてか弱き者たちを守る守護の盾。
そう――。
「見てください、鋼の巨人の腕になにやら文字が刻まれています!!」
「あれは、まさか――!!」
「……バ・ラ・ザック!!」
「
バ・ラ・ザック。
魔改造されたザクであった。
「って、なんだおいこの展開!! エリィの魔法少女化が一日で霞む事態やないかい!! 二十を越えた乙女が、魔法少女になるのって精神的にきついんやぞ!! そこん所わかっとるんかーい!!」
そんな風に責められても困る。
もう作者さえ、今回の部にどういう収拾を付けていいのか、分からなくなってきているのだから。
迷走に迷走を重ね、面白い方に面白い方にと話を転がし続けたツケが、今ここで帳尻合わせのように襲い来る。あぁ、こんなことならもっとかっちりプロットとキャラクターを組んでおくべきだった。
いやはやここまでキャラクターたちが暴走し始めるとは。
無念――。
「なに諦めてんのよ!! これ、ちゃんと落としどころはあるのよね!! このままバッドエンドで終わりとか、そんなことないわよね!!」
それは今日のお楽しみ。
さてさて、いよいよクライマックスも近づいてまいりました。
魔法少女バトルから一転、巨大ロボバトルにハッテンしたどエルフさん。
はたしてそのケツ末はいかに。
「微妙にセンシティブな言葉を選んで使うなァ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
巨大な華型鋼の巨人。
その姿はまるでたおやかな薔薇のよう。
無数の茨を身に着けた緑の触手をうねらせて、ジューン山に咲いた鋼鉄の徒花。そして薔薇の中に輝く、
この作品のパロディの濃さと偏向ぶりは今に始まったことではない。
三十年代前半世代をターゲットにしつつ、そこそこ流行ったネタと作者の好きなネタを掛け合わせて、知っている人は知っている感を醸し出しつつニッチな所を狙いに行く。
そういうスタンスで今までやって来た。
今回も知る人なら知っている大御所監督をフィーチャーし、分かりやすいガンダ〇ネタから、ちょっとマニアックなジャイアントネタと絡ませて、そこで手打ちにするはずだった。
しかし、どうしてこうなった、混ぜてしまった趙〇明。
そして、ジューン山。
今や『屍〇』と『銀河英雄伝〇』のコミカライズ化で次々と成功をおさめ、コミカライズをやらせれば随一ではないかと目される、活き馬の目を抜く漫画家の出世作。当時、女子ウケはよかったようだが、男子ウケはあまりぱっとせず、ジョ〇ョと同じで読んでいると、友達から首を傾げられた作品からチョイスする勇気。
そして、方やネット上で一大ブームを巻き起こしたものの、今やその存否すらも分からない謎の漫画家。ネットのミームの海に消えた彼が、唯一この世界に残した大きな爪痕にして代名詞。そして時代を象徴するまさしく顔。
そんなものを混ぜ込んで、カオスにならない訳がない。
「……もう、おしまいよ!!」
「お姉さま!! こればっかりは、流石に私たちの手にも余ります!! ここは一旦体勢を整えて、出直すとしましょう!!」
「さーせーるーかー!!」
すかさず、逃げ出そうとした魔法少女たちを囲い込むバ・ラ・ザックの蔓。
鋼の巨体が蠢いて彼女たちの身体を戒めようとする。
流石というべきかなんというか。魔法少女に触手という、鉄板の展開を弁えている容赦もなければ隙も無い攻撃であった。
しかし、女エルフも第一王女も、今や立派な魔法少女。
そんな簡単に触手にねちょられるような女ではない。
すかさずハイメガ粒子砲を炸裂させて天に向かって飛翔する。
巨大な華を見下ろす形になった彼女たちは、宙に浮きながらどうしたものかと首を傾げた。
「……やっぱり無理ですよお姉さま」
「そうね。まさか、ミラクルとはいえ、こんな厄介な化け物モンスターが出て来たら話が違ってくるわ」
「魔法少女がプロレスするならともかく、鋼の巨人でプロレスするだなんて」
「こっちにも同じだけの鋼の巨人がなければフェアじゃないわ。無効試合よ」
ちょっと待って欲しい。
先に魔法少女勝負という、圧倒的に自分たちに有利な条件で戦いを挑んだのは彼女たちの方である。それを棚に上げて、自分たちだけ不利な状況になればすたこらさっさと逃げだすとは、まっこと卑しきゲスの極みではないだろうか。
流石だなどエルフさん、さすがだなですまされない。
無視できないゲロ以下のゲスさがそこにはあった。
そこまで落ちたからどエルフさん。
まさか勝てない試合からは逃げ出すとは、臆病風もここに極まれりだな。
呆れてものも言えなくなる。
そんなひどさだ。
とはいえ、そこは彼女たちが主人公側。
彼女たちには勝たなければならないという使命があった。
なにより、ここで迂闊に手を出して、手痛い敗北を喫してしまえばそれこそ白百合女王国正規軍は再起不能になる。
安全牌を切るのは仕方ない。
たとえ臆病者の誹りを受けようとも、それは仕方のない選択だった。
女エルフも諦めた。
第一王女も諦めた。
地で彼女たちを見守るワンコ教授、法王もまた諦めた。
第一王女の姉妹たちもまた、こればかりは仕方ないと俯いた。
率いている白百合女王国に忠誠を誓う兵たちも、のたうち回る緑の蔦を前に、完全にその士気を失っていた。
そう――。
すべてのその場に居る人たちが、圧倒的なミッテルの力の前に諦観していた。
その場に居る人たち、だけが。
「なぁーにしょぼくれた顔してんだい!! アンタ達!! 地面から巨大な鋼の巨人が現れたくらいでそんな顔するんじゃないよ!!」
「そ、その声は!!」
「お義姉さま!? どうしたんですか!? いったい何が聞こえたというのですか!?」
唐突に女エルフの耳に響く声。
それは、ここぞという時に頼りになる、女エルフの力強い味方。
誰に対しても逞しい肝っ玉母ちゃん。
そして、女エルフのもう一人の母親的ポジション。
そう、その声は――蠢く茨に覆われた大地を引き裂いて、響いて来た。
「サッチィイイイイ!!」
パチン。
女エルフが指を鳴らせば、地面を裂いて現れる。
あぁ、それなるはボンキュッボンに大地のバブみを具現化したもの。
黄土色の母なる埴輪。
二つのアフロ〇イエースを携えて、〇ンバスター立ちをきめて地面から現れたその精霊の名を、女エルフはよく知っていた。
そして、まさかここで助け舟をだしてくれるとはと、今更ながらその存在を逞しく思った。
それなるは彼女が契約した大精霊。
土の精霊王――サッチーの声を放つ大埴輪であった。
「鉄の巨人には土の巨人をぶつけるんだよぉ!! 乗りなモーラ!! それとモーラの義妹ちゃん!! 二人まとめて面倒見てあげるわよ!! あたしを誰だと思ってるんだい!!」
ギラりと眼が光る大埴輪。
かくして、ここにロボットプロレス頂上決戦の主役は整った。
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