第528話 ど男騎士さんと魔剣

【前回のあらすじ】


「仲間が増えるぜ!! やったねエロスちゃん!!」


「だからそういう今どきの若い子には分からないネタを引っ張って来ても……」


 まぁネタの鮮度はともかくとして。

 女エルフたちは再び魔剣エロスを旅の友に加えることになったのだった。


 先週がギャグ回だったからその反動か。

 それとも、作者が疲労の限界で、いろいろとパワーが出せなくなっているのか。なんにしても、ちょっとストックの力を借りつつ、ぼちぼち無難な展開でお送りします。


「ていうか、本当になんか疲れてない?」


 ――疲れております。

 やっぱり肉体労働はキツいっすね。


「あぁ、そういう。前職がホワイトカラーだったんだから、もう少し仕事を選びなさいよ。馬鹿ねぇ」


 ――ねぇ。


「あ、これ、ちょっと触れたらいかん奴や。本編行ってみましょうか」


◇ ◇ ◇ ◇


「つう訳で、俺様も戦線に復帰だ。【漢祭】の効果が切れたから、また喋る剣状態だけれど、それでも旅のアドバイスくらいはできるで。頼ってくれてええのよ」


「あぁ。エロスが再び力を貸してくれるとなれば百人力だ」


「実際、暗黒大陸との戦いでは大活躍だったしね。アンタが復活してくれなかったら、養母おかあさんを助けることも難しかっただろうし、魔神を封印する隙を造るのも難しかったように思うわ」


「だぞ!! これからの神々の謁見に、既に神々と顔を合わせているエロスの存在は大きいんだぞ!! どうぞよろしく頼むんだぞ!!」


「おうバシッと俺様に任せておけ!! あのアホどもが隠れている場所はだいたい把握しているし、奴らの性格についてもだいたい理解している!! マーチとⒶ以外は基本的に、人間の思考の範囲外にある一癖も二癖もある野郎どもだが――まぁ、それでも俺たちのときにもなんとかなった!! 今回もどうにかしてやんよ!!」


 頼もしい。

 だが、同時にその神に対する悪辣な評価に不安にもなる。


 いったいどれだけの目に合わされたというのか。

 まぁ、それはおいおい聞いていけばいいだけのことだろう。


 オカマ僧侶の手から再び愛剣を受け取る男騎士。彼に握られて、インテリジェンスソードが怪しく光り輝く。

 紅色の刀身を光らせて、魔剣エロスはがははと笑った。


 かくして頼もしい伝説の生き字引――かつての大英雄スコティの魂が宿りし魔剣エロスが旅の仲間に加わった。


 男騎士たちパーティの中でも最古参の仲間である女修道士シスター。そんな彼女を失い、大きく編成が変わったが、彼が要れば百人力である。

 いや――。


「しかし、実の母親に向かって白濁破壊光線を発射するとは、モーラちゃん見かけによらずなかなかエグいことするよな。ちょっと俺様もびっくりしちまったよ」


「エグって……!! あれは、その、必要上仕方がなくって!!」


「それにしたってもっとこう魔法の練り方ってもんがあるでしょうよ。なに、白い破壊光線を浴びせるって。発想がもうちょっと病気染みてるんだけれど。いくらペペロペのしつこい呪いを解くにしてもさ、こっちはせめて普通の魔法を練ろうよ」


 ぐぬぬと眉を顰めるモーラ。

 しかしながら魔剣エロスの言うことはごもっとも。


 なんであんな魔法を練ったのか、用意したのかと今更ながら問い詰められるモーラ。そして、容赦なくそれを糾弾するエロ剣。

 いや、エロ剣をしても――。


「ぶっちゃけね、そういう特殊なシチュエーションに需要があるのは俺様も理解しているよ。親子〇とかさ、姉妹〇とかさ。けどさぁ、そりゃお前、二次創作とか年齢制限のある作品だからこそじゃないのよ。こういうしっかりとしたファンタジー作品で、そういうのってよくないと思うのよ」


「……はい」


「そこに加えてさ、主人公にこう迫る感じの奴ならまぁわからんでもないけど――義理の娘と義理の母だよ。そりゃどうってもんですよ」


「そうなんですけど!! けど、助けたい気持ちに偽りはなくって!!」


「助け方ってもんがあるでしょうが。まったくもう、あんな風に養母を白濁破壊光線まみれにして、絵面的にどえらいことですよ。ほいで魔法名。白濁破壊光線ってぼかして呼んでるけれどさ、正式名称についてはどうなのよ」


「――魔法の改変スペル・マイグレーションです」


「なんでそんなおあつらえな名前つけちゃうかな!! これ、真ん中に点がなかったら放送できないよ!! というか、改変マイグレーションって当て字もちょっと微妙だよね!! 改造カスタムとか他にもいろいろ名前は選びようがあったよね!! なんで改変マイグレーションにしたの!! そういうとこ、そういうとこよモーラちゃん!!」


 顔を真っ赤にして俯く女エルフ。

 徹頭徹尾正論をまくしたてる魔剣に気圧されてその表情が青みがかる。

 もはや完全に魔剣エロスにいいくるめられた女エルフ。


 しゃなりとその場に膝をついて崩れおる彼女に向かってインテリジェンスソードが心の声で語りかける――。


「やれやれ。流石だぜどエルフさん、さすがだ」


「お前がそのポジ引き継ぐんかーい!!」


 かくして、棒の代わりにツッコミを入れる剣が仲間に加わったのであった。

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