第516話 ど巫女さんと殿の意地
【前回のあらすじ】
暗黒騎士たちを逃がすために単身殿を引き受けた魔女ペペロペ。
そんな彼女に立ち向かったのは、彼女の娘――ウワキツアラスリ魔法少女モーラだった。いま、ウワキツの理を越えて二人の魔女と魔法少女が相まみえる。
「……そういう話じゃないから!! いい所なんだから茶化すな!!」
怒られちまいました。
という訳で、いよいよ見えてきたクライマックス。
暗黒大陸編その結末やいかに――。
◇ ◇ ◇ ◇
「ついにモーラさんがウワキツを解き放ちましたか」
「だぞ!! モーラ、ウワキツ力を爆発させる時がきたんだぞ!!」
「頑張れモーラさん!! そんなウワキツな君も、それはそれで俺はOKだ!! バッチコーイ!! 受け止めてみせるぞ!! ウワキツ!!」
「パーティ揃って全否定しておいて、受け止めるもなにもないでしょうよ!! だぁもう、ちょっと黙っていてよ、良い所なんだから!!」
魔法少女力という名のウワキツの暴力を振りかざして今モーラが立ち上がる。
ワカメさんがその下腹部で蠢動する。
セルロイドをバックにして艶めかしくテラめく。
そう、今、いままでになく魔法少女の力を爆発させて、女エルフは目の前の母に立ち向かおうとしていた。
立ち昇るワカメさんと、魔女ペペロペの黒い修正線。
一触即発。
空気を裂く様な裂帛の気合を受けて彼女たちはそれぞれの眷属を虚空へと差し向けた。激しく打ち合うワカメと修正線。どちらも黒くごんぶとなそれらは、湿った音を上げて中央大陸の空を覆った。
一歩も引かぬ女エルフ。
同じく、食い下がる魔女ペペロペ。
撤退の言葉を受けて、徐々に後退を始める暗黒大陸の軍勢。しかしながら、それに追撃をすることは、縦横無尽に修正棒を振り回す魔女の手により難しくなった。応戦する女エルフ。彼女により、その攻撃を無効化するので手いっぱいである。
万事休すか。男騎士たちが息を呑む。
味方からの援護射撃を受けられない女エルフ。しかし、悲壮感はその顔にはない。長きにわたる宿願である。ここまで待ちに待った、待ち望んだ、母との戦いの場なのである。そして、この機を逃せば、彼女を救うことは難しくなる。
嫌がおうにも力が入る。
決意が鈍る余地もない。
やる、やらないではない。やらなくてはならない。女エルフの手には力が漲り、その体を魔力が突き抜ける。海母神マーチの力が体中に満ちて、今、その全てを配下のワカメに供給して手足のように自在に操る。
神の如き権能を身につけて、女エルフは魔女ペペロペに迫った。
「魔女!! ペペロペぇ!! お
「えぇい、小癪なエルフ娘が!! 邪魔をするな!!」
交わる触手。
昆布と規制線。
絡まりあってお互いの身体を引き裂いて交錯する。
しかし、布と違ってワカメである。
植物である。
海藻である。
見る間に、海母神マーチの権能により、その活力を取り戻したワカメさんたちは、さきほどの大魔女との激突なぞなんだったのかという感じに、たちまちのうちに回復した。
なにと驚きの声を上げたのは暗黒神の巫女。
ペペロペのなんとも言えない絶望に満ちた表情と、ぼろぼろになった修正線を前にして、モーラは勝ち誇った顔をそちらに向けたのだった。
「駄目ね、暗黒神が弱体化したことで、力が弱まったんじゃないかしら、魔女ペペロペ!! こんなにもあっさりと、私からの攻撃を許すなんてらしくないわ!!」
「……何を小癪な!!」
「小癪かどうか、貴方に断じられる状況は当に過ぎた。彼我の実力が逆転したことを認めるのねペペロペ!! あなたには、もう、この私を倒すことはできない!! さぁ、あきらめさない!! ここが観念する時よ!! 返してもらうわ、お
マーチの力を体内に巡らせて、はぁと深い息を吐き出す女エルフ。
一斉に、彼女が操るワカメたちが、暗黒大陸の巫女に向かって飛び交う。
四方八方、天上天下、東西南北、全方位全ワカメ。
まさしくわかめで包み込まんと言うばかりの、怒涛のワカメ攻撃に、あっと魔女ペペロペ流石に息を呑んだ。
伸ばす修正線はか細い。
無理もない。
魔女ペペロペがのっとっている体――大英雄の身体からは、若さが徐々に損なわれている。捨て身の攻撃のツケが、ここに来てまわってきていたのだ。
老化した女体に黒線の効果は薄い。
ギャグ漫画ならばそのまま表示して笑いを誘うシーンである。
故に、黒修正線の威力は鈍る。
あれ狂う鞭の嵐に次ぐ嵐。
応酬する二つの恥ずかしい女エルフたち。
しかして、その怒涛の攻勢はついに一つの決着を見た――。
「そこよ!! ペペロペ!!」
「つっ!! 馬鹿な、この、
ペペロペの修正線を全て薙ぎ払い、丸裸にする女エルフ。
くそっ、と、吐き捨てるようにして言う魔女ペペロペに、トドメとばかりに杖の先を向ける。
さぁ、もう一度と彼女が叫ぼうとしたその時。
「モーラさん!! 後ろです!!」
女エルフの仲間――
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