第473話 壁の魔法騎士と裏切りの狼煙

【前回のあらすじ】


 ジョ〇ョは普通に全部読んでおります。

 四部が至高だと思っておりますが、五部のアニメめっちゃ面白いです。


「あらすじ、じゃ、ない!!」


 だってお前、久々に大手を振って、読んでるって言いきれるパロディやったんだぜ。そりゃ、少しくらいあらすじで、ちゃんと読んでるから大丈夫だよと言いたくなるでしょ。


「むしろ読んでないのにパロディするなよ!! そっちのがアカンでしょ!!」


 いいじゃないですか。

 いいじゃぁ、ないですか。


「今、ほんと、さらっと最低なことを言った気がするけど。本当に、そういう姿勢をあらためないと、いろんな所に敵を作るだけよ」


 はっはっは。

 おっとすまない、雑談はこれくらいにさせてくれないか。

 弟が買ってきてくれた、恋愛〇ボの最新刊を読まなくてはいけないのでね。

 恋愛〇ボの最新刊を読まなくてはいけないのでね。


「あ、普通に、萌え四コマネタ引っ張り出してきた。しかも、古い奴」


 古くなんかない。

 アニメ基準で物事を語るのはやめてくれたまえ。

 漫画こそが最新にして至高。そして、大切なものなのだ。


 まぁ、けど、やっぱりなんだかんだでオタクなんですよ。

 という所で、今週末も自由騎士団パート。

 ミクロな戦闘をお送りしましたが、そろそろマクロな視点で戦の大局を見る、そういうフェイズに入ろうかなと思います――。


◇ ◇ ◇ ◇


 暗黒大陸側は二つの将をさっそく投入してきた。

 凶騎士と相対するのは紅色の仮面騎士。事前に男戦士から、壁の魔法騎士が聞いた情報によれば、鬼の呪いをその身に持つ者で、名をエドワルドというらしい。


 鬼の名はシャザック。

 また、男戦士が宿している鬼たちとは違うモノである――とのことだ。


 なんにしても。


「早々に鬼を投入してくるとはやってくれるな暗黒大陸。もう少し、勿体つけた戦いを仕掛けてくると思っていたが、意外に思い切りがいいじゃないか」


 そしてもう一人。

 これは事前情報のない将であった。


 メイド服姿の戦場を駆ける娘。また、あの大魔女ペペロペとは違う、妙な色気を持った彼女は、そのふざけた格好からは想像できない怒涛の進撃と無双を見せつけてくれた。なんとか、そこに大剣使いが駆けつけて応戦してくれたから助かったものの、もし間に合わなければ、無残に戦線が押し下げられていたことだろう。


 なんにしても、言えることはただ一つ。


「狙いはどうも第二部隊にあるようだな」


 暗黒大陸の攻撃は第二部隊に集中していると、壁の魔法騎士は判断した。それは彼に逃し屋が残した最後の情報と相反する事実であった。


 第三部隊が怪しい、これから第一部隊に会いに行く、第二部隊は白だ。


 そう逃し屋は壁の魔法騎士に調査した内容を説明した。

 そしてその直後、第一部隊に裏切られたのか消息を絶った。


 この際、リーナス自由騎士団で裏切る可能性があるのは、第一部隊と第二部隊。あるいはその両方である。第一部隊へと向かう途中で、第二部隊の手の者により逃し屋が始末された。あるいは、第一部隊が彼を欺き、安心した所で彼を手にかけた。どっちにしろ――逃し屋の失踪と、今の事態は相反する状況だった。


 暗黒大陸側の第二部隊に仕掛ける攻撃は、決して手ぬるいものではない。明らかに殺意をむき出しにした、敵対者に向けての者だった。このようなことを、演技でやれるほどに、暗黒大陸の者たちが利口であるとは壁の魔法騎士には思えぬ。

 実際に、彼らは敵対しているとしか見えない。いくら、殺せど殺せど、その魂を持ってして、兵数に還ることができるとしてもだ。暗黒大陸の雇われの荒くれはともかくとして、連邦騎士団がみすみす殺される道理がない。


 必然、裏切り者は二者に絞られた。


 逃し屋が信頼できると評した第一部隊か、まだ未調査だったが怪しいと評した第三部隊か。そして、彼らはまだ、暗黒大陸との戦闘に参加していなかった。


 中央大陸連邦共和国首都リィンカーン南東。

 第三部隊が陣容を並べて、第二部隊の死闘を眺めている。

 そして、そのまま、リィンカーン東の砦の上には、第一部隊が、リーナス自由騎士団と同じく、戦況を確認するために展開していた。


 老将――バルサ・ミッコスの髭が風に揺れている。


「……連邦大陸中央騎士団には、裏切られたことはない、か」


「ゼクスタント団長!! アレを!!」


 その時、暗黒大陸側から大きな咆哮が上がった。

 飛び出してきたのは鬼よりもはるかに大きな巨人である。鋼の鎧で体全体を覆ったそれは、大剣使いが振るう剣よりも大きい、まるで城塞の扉のような分厚い剣を振り回すと、敵味方の分別なく振りまわして進軍する。


 暗黒大陸側、三人目の将の投入。

 戦力的には先に投入された、仮面の騎士、殺人メイドと大差はないが、その巨人の視覚的なインパクトは大きなものがあった。

 時に、戦場というのは、畏怖により覆ることがある。

 人間とそう変わらない存在の無双には、まだ、心が折れることはないだろう。


 しかし、人間を遥かに凌駕する、異形の暴れる姿を前にして、人の心は硝子のように脆い。途端に、恐怖の悲鳴が戦場に木霊した。

 それをまるで、裏切りの狼煙のようにして。


「……動いたか!!」


 ついに連邦騎士団、静観を貫いていた主力二部隊が、大きな動きを見せた。

 暗黒大陸側の兵ではなく、連邦共和国の兵へと駒を進めたのは――。


 逃し屋カロッヂが残した手紙にあった通り。


「裏切り者はお前か!! 第三部隊!!」


 第三部隊であった。

 巨人の咆哮に今、馬の嘶きがまじりあい、狂気が戦場を吹き抜けていった。

 魔法壁を展開する魔脳使いに代わって、壁の魔法騎士が前線に出る、その額を。


 鋭い光が狙っていた。


「団長ォッ!!」


「ツッ!? まだ、敵側に将が居るというのか!!」


 飛翔するのは紙の鳥。

 されど、それは、人の身を切り裂く鋭さを持っている。

 大きな翼を広げたその魔法の使い魔は、壁の魔法騎士の頭を強襲した。


 そして、第三部隊は何者に邪魔されることもなく、その裏切りを開始した。

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