第七章 魔法少女ウワキツモーラツライ!!

第446話 どエルフさんとセクシーブレイク

【前回のあらすじ】


 モーラさん、魔法少女になります。(二回目一年ぶり)


「うぉい!! 今回はあっさりとボケてきたな!!」


 モーラさん、魔法少女です。(三百歳)


「年齢のことは言わないでよ!!」


 という訳で。

 徒手格闘技ステゴロの使い手である異世界漂流者ドリフターの少女と雌雄を決するため、自分の得意のフィールド――こと、魔法少女勝負で戦うことを選んだ女エルフ。はたして、彼女に勝ち目はあるのか、というか、羞恥心はあるのか。


 いい歳して魔法少女とかお前それはどうなんだ。

 流石だなどエルフさん、さすがだ。(迫真)


「いつもアンタがやらせてることでしょう!!」


 という感じで、久しぶりの魔法少女勝負。男戦士たちが体を張ったら、次は女エルフが体を張る番だ。どエルフさん、今週もはじまります。


◇ ◇ ◇ ◇


「どういう勝負か分からないけれど、いいわよ、その勝負受けて立つわ」


「ふっ、減らず口ね。それもまた良しだわ。魔法少女勝負の準備があるから、こちらも少し時間を貰うわ。一刻後、街はずれ――いえ、港からちょっと行った所にある島の上で勝負と行こうじゃないの」


「巌流島の戦いね。はたしてどっちが武蔵でどっちか小次郎か。ふふっ、面白くなって来たじゃないの」


 そう言って異世界漂流者ドリフターの少女はウィンクをして女エルフたちに背中を向ける。

 少しも異世界に対する畏怖もなければ恐怖も感じさせない堂々としたその態度。彼女は再び人ごみの中へとまぎれると、男戦士たちの前から姿を消した。


 その背中を見送りながら、男戦士が女エルフの横に並ぶ。

 さきほど彼女が魔法少女勝負をすると言い出した時にはいつものこわばった顔を見せた彼だったが、今その表情は、純粋に彼の相棒を気遣う物へと変わっていた。大丈夫かと、男戦士が純粋に女エルフに尋ねる。

 それに対して女エルフは――。


「大丈夫もなにもやるしかないでしょ。アンタらが戦って彼女にケガさせたらそれはそれだし、彼女も思った以上に好戦的だから、アタシが出るしかないじゃない」


「モーラさん」


「どこまでやれるか分からないけれど、バビブの塔での魔法少女勝負もなんとかなったわ。今回もやってやるわよ」


 女エルフが拳を握る。

 にっと笑うインテリ魔法使い。


 決して直接戦闘が得意ではない、むしろ苦手な彼女。そんな彼女の強がりを察しながら、男戦士はその笑顔に応えた。しかし、どれだけ笑顔を作ってみても、その顔が引きつるのはしかたなかった。


「俺がエルフィンガーティト子になって、出るという選択肢も無きにしもあらずなんだぞ」


「ないわよ。というか、どんだけ女装したいのよ」


「しかし、なんといっても魔法少女勝負。相手はピッチピッチの十代っぽい感じの娘だ。おそらく、前回のリリィ戦と同じく、デリケートタイプで攻めて来るに違いない。そこに加えて、あの異世界転移者ドリフターが持つ特異能力だ」


 勝ち目はあるのか。

 男戦士は言葉にせずともそれを女エルフに問うていた。

 しかし、彼女も我に秘策ありという感じに、魔法少女勝負を異世界漂流者ドリフターの少女へと申し出た。そこはそれ、考えがなければそのような無謀なことはしない。


 男戦士をも圧倒したあの腕力。

 女エルフの目をも欺いたあの脚力。

 それに勝る秘策を、彼女は持っているのだろうか。


 忘れたの、と、女エルフが男戦士にウィンクをする。


「私があの時どうやって、奇跡の逆転を起こしたのか」


「……まさか!!」


 そう、そのまさかである。

 あの魔法少女勝負の際、女エルフは安全安心ふりふりタイプの中に、水着を仕込んでジョブチェンジを果たした。具体的には、イベント限定グラ水着により、ルーラーにジョブチェンジ。ステゴロ上等の女格闘家になり、魔法少女をどつき倒した。


 彼女の秘策とはそれだ。

 異世界漂流者の少女が持つ格闘能力に、かつて自分が逆転したあの奇跡の力をぶち当ててて、真っ向から倒そうという訳だ。


 しかし――だからこそ、男戦士の顔色が不安に染まる。


「やはり不安だ。前回がそうだったからといって、今回も思い通りに話が進むとはとてもではないが思えない」


「なによティト。私の水着姿が信じられないっていうの?」


「そういう話ではない。前回も、ギリギリ逆転での勝利だった。そんなあやういモノにすがるような戦い方を俺は信頼できない」


 前衛として戦い、常にパーティの盾となり戦闘をこなしている男戦士。

 だからこそ、彼は女エルフの確実性のない、ギャンブルと言ってもいいような作戦に顔をしかめたのだった。


 男戦士は心の底から女エルフの今回の作戦を心配していた。

 心配しているからこそ背嚢からその装備を取り出してまじまじと確認した。

 バビブの塔攻略の後、しばらく使っていなかったそれを、じっくりと、ねっとりと、嘗め回すように、そして、染みの一つも見逃さぬように真剣に見入った。


 目は血走り、顔は紅潮し、鼻息が荒くなる。

 そして彼は――。


「フォォオオオオーー!!」


 頭からそれを被るとジョブチェンジ――バーサーカーへと変貌したのだった。

 どうやら、今年のイベント限定グラ水着は、男戦士のようであった。


 ずっこける女エルフと男戦士の仲間たち一同。

 いつぞや、百合百合女王国でも見た絵面であった。


「フォォオォオオ!! フォオォオ!! フォォォオオ!!」


「だぁもう!! 何やってるのよこのバカティト!!」


「水着・下着を目にしては被らずにはいられない!! それが男戦士の性というもの!!」


「被るな!!」


「しかも今回はモーラさんエキスが染みていてパワーアップ五割増し!!」


「エキスとか言うな!! やめろ!!」


 とんだ展開に女エルフが男戦士の頭をどつく。

 その時――。


 ビリッ!!


「……えっ?」


「……あっ?」


 残念、虎の子のモーラの水着は、悲しいかな彼女の手により破かれたのだった。

 なんということ、予想外の展開、起死回生の一手に待ったがかかる。どうすると女エルフの顔が青色に染まるその前で。


「いやぁっ!! 乱暴しないで!! モーラさん、いくら俺のイベント限定グラ水着が刺激的だからって、そんなに興奮しなくてもいいじゃない!! ケダモノォ!!」


「――火炎魔法!!」


 残念。水着は消し炭になった。男戦士と同じく消し炭になった。

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