第447話 どエルフさんと泳いで参った
【前回のあらすじ】
今年の
「要らんわ!! そんな気色悪いもん!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「おわぁー、水着!? 水着が破れた!?」
「嘘でしょ!? 私たちの切り札が……どうすんのよ、これ、ティト!!」
破れた水着を前にして狼狽える男戦士と女エルフ。
すっかりとバーサーカー状態だった男戦士も正気に戻るくらい、ビリッビリに女エルフのビキニは破れ、そして、燃えていた。
すかさず女エルフが、
【コノソウビハキカンゲンテイノタメシュウフクデキマセン】
「なによその初めて聞く設定!!」
システム妖精がそんなことを囁いて、あっけなく修復は失敗に終わった。
どうするんだこれと、男戦士と女エルフが顔を見合わせる。
「まて、落ち着くんだ!! まだ胸当てが残っている!!」
「「ビクター!!」」
そう言ったのはことのの次第を見守っていた隊長である。
彼は男戦士に近づくと、その背嚢から残っていた胸当てを取り出した。
破れ、消し炭になってしまったビキニのパンツ部分。しかし、このブラ部分が残っていれば。なんとかなるかもしれない。
そう思った矢先――。
「URYYYYYYYY!!」
ヨシヲがビクターの手の中にあるブラに向かって飛び込んだ。
まるで吸血鬼化した浮浪者に殴られて吹き飛ばされたように飛び込んだ。
なんということだろうか。
またしても、かつて白百合王国でみたことのある光景である。この男戦士とヨシヲは、下着を見るや被らずにはいられないのか。
そういう特殊な性癖でも持っているというのか。
なんにしても――残念残された胸当て部分も、ヨシヲによる突撃で無残にも破壊されてしまったのだった。
ぼろぼろになった白い水着。
それが海風に吹かれて空に舞う。ひらりひらりと風に揺れるそれを見送るように、女エルフと男戦士は無表情で空を見上げた。
女エルフ破れたり。
物理的にも水着破れたり。
戦わずして
まるでコントのようであるが――残念ながらこの小説はギャグファンタジーなのよね。
もはや予定調和であった。
「どうすんのよ!! これぇっ!!」
女エルフが我に返って叫んだ。
ででーんと集中線を顔に集めて壊れた顔をして叫んだ。
それはそうであろう。というか、ヨシヲが突っ込んできた時点で、そこはツッコむべきであった。いや、そもそもなんで突っ込んでくるのか、どうしてわざわざ破壊しに来るのか。
思わぬ味方の行動にパニクる女エルフ。
それに遅れて男戦士もその場にうずくまって頭を抱えた。
「うぁあぁっ!! なんということだ!! どうして、どうしてこんなことに!!」
「ヨシヲあんたなにやってるのよ!? 最後に残った
「す、すまないでござる!! どうやらタナカの呪いと、以前受けたペペロペの呪いが作用して、一時的に過去の呪いの状態が再現されてしまったようでござる!! すまぬでござる、にんにん!!」
「すまぬでござる、にんにん!! じゃないわよ!!」
そんな都合のいい話があってたまるか。
今にも殴り掛からんと女エルフがヨシヲの首根っこを持ち上げる。
その肩が怒る。大きく揺れて怒る。仲間相手に拳を振り上げるのはどうかというものだが、彼女の気持ちは推して測るべきであった。
もはやここに、女エルフの命運は尽きた。
魔法少女勝負。水着なくしては彼女はただの三百歳魔法少女(笑)。
そんな年増の女エルフに、まともに現役魔法少女と言える、
万事休す、八方ふさがり、もはやこれまで、ちゃんちゃん。
お通夜ムードが男戦士たちの間に漂うかに思えたその時。
「待たれよ!! 既に
「「そ、その声は!?」」
聞き覚えのある野太い声。
どうして、なぜ、その声が。
中央大陸は男戦士たちが拠点としている街から遠い、西の王国の港町でその声が聞こえるのか。そもそもどうしてこのタイミングで、その声が聞こえてくるのか。
雑踏の中に突如立ち昇ったその声の先を確認するより早く。
「きゃぁっ!! へっ、変態よぉっ!!」
「しとどに濡れた紺色の服を着た変態が居るわ!!」
「なんというか許されない格好よ!! よくわからないけど、許されないビジュアルをしているわ!! お見せできないよとテロップを入れられる感じだわ!!」
つんざくような女性の悲鳴が上がる。
同時に、ざざと左右に割れた人の波の中から――まさに、今、海の中から出てきたという感じに、紺色をしたパンツとタンクトップが一体となった服を着て、汚らしい脛毛と胸毛をぼろりんと出したおっさんが、男戦士たちの前に現れた。
そう、彼こそは間違いない。
「道具屋!! そう道具屋の店主!! エルフの危機と聞いて、中央大陸の沿岸を泳いで参った!!」
「「へ、変態だぁーーーーっ!!」」
当作品随一の変態にしてトラブルメーカー。
エルフが好き過ぎちゃって、エルフ専門店はもとより、エルフ喫茶まで始める困りもの。
そして溢れるバイタリティを持ち合わせたナイスガイ。
スクール水着に身を包んだ道具屋の店主がそこには立っていた。
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