第399話 キングエルフさんとエルフリアン柔術

【前回のあらすじ】


 皆大好き、「知っているのか〇電」テンプレ。

 意味深に現れたキャラ・モンスターあるいは必殺技に反応して、それとなく解説するというものだが、あえてそれを知らぬと外しても綺麗に落とせる便利な奴だ。

 しかしながら、使いすぎると新〇劇になるという危険性がある。


 テンプレを使うときは、用法容量を守って正しく使おう。

 katternさんとの約束だ!!


「今さら!!」


◇ ◇ ◇ ◇


 ケロン特選隊。

 彼らは暗黒大陸が誇る隠密機動部隊である。


 そもそもトカゲ人間とはリザードマンの下位種族である。人間以上の筋力と身長、そして機動力を持つリザードマン。対して、トカゲ人間は、筋力・身長ともに人間以下、本来のトカゲに近い虚弱な種族として認知されている。


 しかし、そんな彼らは一つだけ、人間にもリザードマンにも劣らない、大きな種族的な特徴を持っている。


 俊敏性である。


 取り分けて、トカゲ人間は俊敏性が高い。彼らは、瞬発的には弾丸より早く動くことが可能であり、また、その手と足の裏から分泌される粘着液は、重力に逆らいこの世界を天地無用に駆け巡ることを可能にする。


「ケロン特戦隊は、そんなトカゲ人間の中から、選びに選びぬかれた精鋭部隊」


「ケロッケロ!! 息つく間もなく細切れDEATH!!」


「悪いことは言わん降参するんだな」


「第一王女さえ渡せば、お前たちは用済みだ、放っておいてやる」


「けれども、もし、それでも戦うというのなら」


 ぎろり、と、五匹のトカゲ人間たちの目が光る。

 自分の膝ほどの背丈もないモンスターだ。にもかかわらず、睨まれただけで女エルフは自分の全身の毛が揺れるのをたしかに感じた。


 特選隊。どうやらその名に間違いのない、そして、暗黒大陸の刺客として申し分のない相手であることには間違いないようだ。


 どうする。

 女エルフが迷う。

 この鬱蒼と木々の生い茂る森の中、体の小さい彼らの方が格段に有利だ。それでなくても、トカゲ人間。彼らは木々の間を縦横無尽に飛び回り、三次元的な攻撃を浴びせかけてくることだろう。


 そんな攻撃から、果たして第一王女を守れるだろうか。

 逡巡して杖を握りしめる女エルフ。そんな彼女の袖をそっと第一王女が握った。


 その時――。


「ふっ、特選隊だか、貞操帯だか知らないが、なめないでいだたこう」


「ゲロっ!?」


 男戦士が剣を抜いてトカゲ男たちの前に立ちふさがった。


 魔剣エロスを失っても、彼は人類最高の戦士技能8の男である。

 トカゲ人間の俊敏性がどうというもの。彼はひと睨みでゲロゲロと鳴くケロン特選隊を黙らせたのだった。


 トカゲ人間たちも即座に、目の前に立っている男が只者ではないということに気が付いたらしい。


 そして――。


「おっと、忘れないでいただこうか。俺もいるということを」


「……エルフキング!!」


 プリッ!!

 男戦士の隣に立ったのは徒手空拳――ふんどし一つのエルフキング。彼は男戦士が剣を突き出したのと同じように、すっとその腕を伸ばしてトカゲ人間たちに向けると、裂帛の気合を発した。


 ゲロ、と、トカゲ人間たちが苦々しい声を漏らす。


 男戦士の戦士技能もさることながら、このエルフキングが放つ気も間違いなく本物。そしてそれは、敵だけではなく仲間さえも震撼させた。


「なんなのエルフキング!! あなた、そんなナリで戦えたの!?」


「だぞ、なんだかすごい気合なんだぞ!!」


「もしかして戦士技能持ちなんですか!?」


「流石はエルフの中のエルフ!! エルフキング!! 強くなければエルフの王は務まらないということですね!!」


 女エルフたちが盛り上がる中、エルフキングの口角が吊り上がる。

 はぁ、という掛け声とともに、彼は両手を挙げると――そのままターン&どどん〇いのい体勢。トカゲ人間たちに向かって、自慢の尻を突き出した。


 その尻の谷間が木漏れ日を浴びて輝く。


 プリッッ!!

 引き締めるケツの響きにもどこか鋭いモノが感じられた。


「エルフリアン柔術十段!! エルフキングの柔の技を見せてくれるわ!!」


 キメ顔でそう言ったエルフキング。

 男戦士、トカゲ人間たち、そして、女修道士たちが凍りつく。


「……エルフリアン柔術だと!!」


「聞いたことのない武術なんだぞ!!」


「けど、この気合、ただものではありませんよ!!」


「やっちゃってくださいエルフキングさまー!! すてきーっ!!」


 エルフキングを口々にもてはやす男戦士パーティ。

 そんな中、やはり、ただ一人だけ――女エルフだけが死んだ魚の目をしていた。


「……そんな柔術はない!! エルフ文化をねつ造するのいい加減にしろ!!」


 怒りに声が震える。

 女エルフのツッコミがまた、エルフの森に木霊した。

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