第398話 ど男戦士さんとケロン特選隊だって!?

【前回のあらすじ】


 連邦騎士団第一部隊団長の老騎士に迫る逃がし屋。

 しかし、彼は老騎士に自分が密偵であることを悟られてしまう。


 だが老騎士は逃がし屋をそうだと告発せず――逆に自分のスパイとして動くことを求めてきた。


 内偵に向かう先は、連邦騎士団第二部隊。

 調査対象は団長である凶戦士。


「カーネギッシュは、先代の第二部隊の将――黒い死神ヨハネ・クレンザーが暗黒大陸に密かに渡り拾ってきた子である」


「……なんですって」


 逃がし屋の口から思わず演技ではない声が漏れる。

 という感じで、連邦大陸騎士団側もどんどんとキナ臭くなってくる中、ふたたび視線は男戦士たちの方へ。


 現れたトカゲ男たちはいったい何者なのか。

 そして、こんなの出していよいよこの小説は大丈夫なのか。

 カドカワさんというか吉〇先生はゆるしてくれるのか。


 そうだ、久しぶりにマンコンやりましょうよエースさん。俺また、面白い原作小説書きますんで。(ハードル上げる奴)


「近況コメント欄でやれ!!」


 という感じで、今週もすっとぼけ全開、どエルフさん始まります。


◇ ◇ ◇ ◇


「ケロン特選隊だと!?」


「知っているのティト!!」


 男戦士がオーバーリアクションを見せる。


 フリッ。

 風のパンツをはためかせて、彼は胸を張りだすと――ホットでリミットな感じのポーズを取ってみせた。森の中をさわやかな風が吹き、男戦士のパンツを揺らす。


「――知らん!! はじめて聞く名前だ!!」


「なんでタメた!!」


 女エルフの厳しいツッコミが男戦士に入る。

 そんな怒らなくてもいいじゃないかとしょげた視線を返す男戦士。そもそも暗黒大陸の敵を知っている方がどうかしている。よく考えればおかしい話である。

 なのにひっかかった自分も自分だと、女エルフはとりあえず自分を責めた。


 そんな彼女が自戒した直後に。


「ケロン特選隊だと!!」


「知っているのキングエルフ」


 男戦士の隣に並ぶようにキングエルフが立った。


 プリッ。

 男戦士が風にパンツをなびかせたのと同じように、彼もまた尻をプリめかせて褌をたなびかせキメ顔をしてみせた。


 しかし、男戦士の時と違って女エルフの反応は冷ややかである。

 無理もない――。


「知らん!! ティトと張り合いたかった!!」


「だと思ったわ!!」


 エルフの森に引きこもっているキングエルフだ。暗黒大陸が攻めてきていることも知らなかったというのに、どうして暗黒大陸の将兵について知っているというのだろう。

 声を上げたその時から、女エルフはキングエルフの発言を疑っていたし、そんなことだろうなと思っていた。


 そしてその想像通りに、彼の言葉は空虚に森の中に響くことになった。


 すると。


「ケロン特選隊ですか!?」


「なんでアンタが叫ぶのよコーネリア!!」


 間を見計らったように、そして、男戦士とキングエルフの後ろに続く感じに、女修道士シスターが歩み出た。


 はたして彼女が、ケロン特選隊を知っているというのか。

 教会は中央大陸を超えて、あまねく世界にその情報網を広げている。

 今回の暗黒大陸の侵略についても、女修道士シスターはともかく、教会はその動向を抑えていた。ならば、暗黒大陸の兵について、彼女が知識を持っているのは、おかしくないように女エルフには思えた。


 ここ一番、男戦士やキングエルフの時とは違って、真剣な顔をする女エルフ。

 はたしてそんな彼女に、真剣な顔をした女修道士シスターが顔を向ける。


「――知りません。聞いたこともない名前だったので、確認してみました」


「まぎらわしい!!」


 ごめんなさいと舌を出して謝る女修道士シスター


 こいつ絶対わざとだろう。

 そんな怒りの視線を彼女に注ぎつつ、女エルフはため息を吐き出した。


 もうないだろう、そう思ったその時。


「だぞ!! ケロン特選隊なんだぞ!!」


「知っているのケティ!?」


 一番知っている可能性が高いワンコ教授が叫び声をあげた。


 考古学者。古今東西の文化に詳しい研究者であるワンコ教授。

 冒険者としては頼りなくても、こと伝承やアイテムの鑑定といった、サポート周りでは頼りになる。まさしくパーティの知恵袋だ。


 そんな彼女ならば、暗黒大陸のことについてちょっと詳しくてもおかしくない。


 今度こそ、本当にケロン特選隊の素性が明らかになる――。

 女エルフが唾を飲み込み握りこぶしを作った。


 そして――。


「だぞ!! 聞いたことないんだぞ!! ごめんなんだぞ!! なんか、キャラ的に言わないといけない気がして、つい言っちゃったんだぞ!!」


「やっぱり知らなかった!! しょうがない、考古学者だもの!! けど、ちゃんと謝るところは偉いわ、ケティ!!」


 やはり知らなかった。

 学者がなんでも知っているというのは勘違いである。彼らにも専門というものがあり、それ以外の知識については、意外とそこら辺の人とどっこいどっこい、ともすると劣っていたりするものなのだ。


 ごめんなさいなんだぞと女エルフの前で涙を目の端に浮かべて俯くワンコ教授。

 そんな彼女を、いいのよいいのよと慰めて、女エルフは穏やかに笑った。


 子供相手にガチギレするほど、女エルフも大人げを忘れていないのである。


 さて、いよいよ、皆、言い切ったかな。

 コメディパートもこれでおしまいか。

 そう思って女エルフが顔を上げたその時。


「け、ケロン特選隊ですってぇっ!!」


「えぇっ!? エリィ、貴方まで言うのぉっ!?」


 最後に残された女エルフの義妹スール。第一王女が声を上げた。

 これは思わぬ伏兵。男戦士たちのボケ倒しには慣れている女エルフだが、第一王女がボケてくるとは思っていなかったのだ。


 そして、そんな彼女にどういうリアクションをしていいのかも分からなかった。

 黙りこくる女エルフの前で、ごくりと、第一王女が喉を鳴らす。


 絶対に知っているはずがない。

 温室育ちの王家のお嬢様が、暗黒大陸の秘密を知っているはずがない。

 そう思いながらも――女エルフは義妹に一応その視線を向けた。


 そして。


「ケロン特選隊!! 暗黒大陸にその名を知られたトカゲ人間の戦闘集団!! トカゲの亜人特有の機動力を活かした電撃戦・隠密行動を得意とし、神出鬼没に活動する暗黒大陸の遊撃部隊!!」


「知ってたァ――――ッ!!!!」


【キーワード ケロン特選隊: 暗黒大陸にその名を知られたトカゲ人間の戦闘集団。トカゲの亜人特有の機動力を活かした電撃戦・隠密行動を得意とし、神出鬼没に活動する暗黒大陸の遊撃部隊である】


「フレーバーテキストとほぼ一致ィ――――ッ!!」


 どうして知っている第一王女。

 彼女はケロン特選隊の正体について、ずばり言い当ててみせたのだった。


 しかし、この際は、彼らの正体なぞどうでもいい。

 この土曜日午後からのお楽しみ的な、コッテコッテの大阪のノリに、思わず、女エルフは足を滑らせるのだった。


「知ってた――――ッ!! なんでじゃァ――――い!!」

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