第364話 どエルフさんと完パイ

【前回のあらすじ】


 どエルフさん渾身の【呪いの変換スペルマイグレーション】が炸裂。

 育ての親を白濁に染めて、彼女に正気を取り戻させようとする女エルフ。


「……も……ら」


「……養母おかあさん!!」


「……モーラ!!」


 はたしてその意識が戻ったかのように思ったその瞬間。魔女ペペロペは密かに手の内に握り込んでいた自分の魔法遺物オーパーツにより復活したのだった。


 一転してピンチに追い込まれた女エルフ。

 魔女ペペロペの魔力が彼女と男戦士に迫るというまさにその時――。


絶対領域ハイ・バリアー!!」


 女修道士シスターのバリア魔法が彼女と男戦士を救った。


「だぞ!! 一人だけ抜け駆けするなんてずるいんだぞモーラ!!」


「良い格好をひとりじめなんて――ほんとうにどうしようもないどエルフですね。流石ですどエルフさん、さすがです!!」


「コーネリア!! ケティ!! 貴方たち!!」


 はたして、男戦士パーティ勢ぞろい。

 魔女ペペロペの強襲を前にして役者は揃ったのだった――。


◇ ◇ ◇ ◇


「……ちっ、せっかくのチャンスを。よくも邪魔してくれたわねぇ、忌々しいマーチの狗風情が」


「魔神の走狗である貴方に言われたくありません!!」


「だぞ、魔女ペペロペ!! 観念するんだぞ!! 手に握り込んだ魔法遺物オーパーツでなんとか意識を保ったみたいだが――モーラの魔法でほとんどの魔法遺物オ―パーツは浄化されたんだぞ!!」


「つまり、その一枚浄化すれば――終わりということよね!!」


 再び女エルフが杖を構えていた。

 女修道士シスターたちの登場にすっかりと気を逸らしていた魔女ペペロペ。


 彼女が気づかないうちに、女エルフは再び彼女の母のために編み上げた魔法――【呪いの変換スペルマイグレーション】を詠唱していたのだ。


 残るは手中のパンツ一つ。


「――しまった!!」


「魔女ペペロペ!! 今度こそ本当に終わりよ!! 【呪いの変換スペルマイグレーション】!!」


 女エルフの白濁光線が豊満なる養母に向かって飛ぶ。

 既に白濁光線でビジュアル的にえらいことになっている所に、更に追い打ちをかけるように放たれたそれは――。


「ふんっ!!」


 貧相な緑色の尻により防がれたのだった。


 突然、割って入って来たその謎の尻。

 その持ち主は――。


「私のこと忘れてもらっちゃ困る。ペペロペ様、大丈夫ですか?」


「……えぇ、助かったわ。流石ねゴブリンティウス」


「ゴブリンティウス!?」


 それはローブを身に纏ったゴブリン。

 魔女ペペロペと共に現れたが、今の今までまったくその気配を感じさせなかった、謎のゴブリンであった。


 突然横やりを入れられたこともそうだが、せっかくのチャンスを無為にしたこともある。

 忌々し気に女エルフが舌打ちする。

 そんな彼女に向かって謎のゴブリンは、どこか勝ち誇ったような顔をした。


「対ペペロペ様の魔法遺物オーパーツ専用の解呪魔法。しかし、他の人間には効果がないのであれば、誰かが盾になればいいだけ!!」


「……痛い所を突いてくれるわね。けど、ペペロペの魔法遺物オーパーツは殆ど浄化したわ。そんな状態で私たちに勝てると思っているの?」


「そもそも勝つことが目的ではない。我らの目的は――」


 こっちだ。

 そう言ってゴブリンが持ち上げたのは、持ち主を失った剣であった。


 そうそれこそは、男戦士が女エルフを守る為、咄嗟に放り出したもの。

 彼の剣術と相まって、比類なき力を発揮する魔剣――。


「のわぁっ!! てめぇ、汚い手で俺様に触るんじゃねぇ!! 俺様に触っていいのは、かわいこちゃんとうるとらかわいこちゃんと俺様が認めた野郎だけだ!!」


「エロス!!」


 エロスであった。

 ゴブリン男の口角が吊り上がる。同時にでかしたわぁんと魔女ペペロペが、魔剣エロスを手に取ったのだった。


 彼らの目的がエロスとは。

 そもそも、魔女ペペロペとこのゴブリンは、白百合女王国から逃げ出した第一王女の身柄を抑えるために、ここに現れたのではなかったのか。


 困惑、そして魔剣エロスをみすみす盗られてしまった不覚から、男戦士が顔をくしゃくしゃに歪める。

 そんな彼の隣で――。


「どういうことよ!!」


 女エルフが叫び声を上げた。


 ふふっと微笑んだのは魔女ペペロペだ。

 ほぼほぼ白濁光線により無力化されたにも関わらず、彼の魔女はまだ余裕の態度を崩していない。


「言葉のとおりよん。今回、こうしてここに姿を現したのは、お姫様を返してもらうためじゃないわん。もちろんその身柄は後々いただくとして――宣戦布告と、それに伴って、貴方たちの大切な決戦兵器を減らすため」


「決戦兵器!!」


「もしかしなくても、エロスのことなんだぞ!!」


「……ふふっ、中央大陸の連中にはもったいない、太くて立派な剣」


「おわぁーっ!! セレヴィの身体で触れるな!! やめろこらぁっ!!」


 その時だ――。

 気落ちしていた男戦士が、はっと正気を取り戻した。そして、この機を逃すなとばかりに彼は声を張り上げる。


「エロス!! お前は魔剣だろう!! その力で――魔女ペペロペの身体を乗っ取るんだ!! 今ならパンツ一枚、お前ならば勝てるはず!!」


「……そうよエロス!! 養母おかあさんの身体を奪い返して、お願い!!」


 かつて男戦士の身体を奪い好き放題に操った魔剣である。

 男戦士を認めたことにより、今は相棒ならぬ愛剣として彼に従っているが、その魔性の力は当然健在である。


 魔女ペペロペと同じく、その持ち主の身体を乗っ取ることなぞ造作もない。


 そうかその手があったかと、魔剣エロスが任せろと声を上げる。

 まさしく天啓、知力1にも関わらず、男戦士は起死回生の一手を閃いた。


 ――かに思えた。


「させないわぁん!! エロス、貴方を封じる手を考えてないとでも思って!!」


「なにっ!! まさか、お前、浄化魔法を――」


「そんなまどろっこしいことする必要もないわ――だって、こうすればいいだけだもの!!」


 もふり。

 ぽよよん。

 たわわな音と共に、魔剣エロスは魔女ペペロペによって囚われた。


 魔女ペペロペ――その身体が持つ、二つのたわわなデカメロンが、魔剣エロスの刀身を優しく包み込む。その瞬間、あふぅと情けない声が剣から昇った。


「これぞ奥義――魔剣パイ取り!!」


「……完敗、いや、完パイだぁ」


「「「「エロースッ!!」」」」


 魔剣エロス、乳に沈む。

 それはだって仕方なかった。だってスケベ剣なのだもの。

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