第365話 ど魔剣さんと魔剣パイ取り
【前回のあらすじ】
「これぞ奥義――魔剣パイ取り!!」
「……完敗、いや、完パイだぁ」
スケベ剣倒すにゃ刃物は要らぬ。二つのおぱーいがあればいい。
魔剣エロスは、たわわに実った魔女ペペロペの身体――セレヴィに包まれ、封じられてしまったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「エロース!! なにやってるんだエロース!!」
「おっぱいに包まれたくらいでなにを呆けてるのよ馬鹿魔剣!!」
「だぞっ!! 気合が足りないんだぞ!! 諦めるななんだぞ!!」
「そうですよエロスさん!! エルフのおっぱいくらいで情けない!! というか、挟めないモーラさんに失礼ですよ!!」
「お前が一番失礼じゃぁい!! わざわざ言わんかったら分からんことやろ!! コーネリア!! というか、なんでエロ剣を胸に挟まなくちゃいけないのよ!!」
おっぱいに挟まれたくらいで力を失ってしまうとは情けない。
蕩けたような声を上げて無力化された魔剣エロス。そんな彼に向かって、女エルフたちは非難囂々、辛辣な言葉を浴びせかけた。
しかし分かってやって欲しい。
魔剣の気持ちという奴を。
二つのマシュマロおっぱいに包まれれば、そりゃ、魔剣だってやる気も失くす。
いや、むしろ違う方のヤル気が出るというもの。
それは元男として、どうしようもないことだった――。
「あへ、あへあへ。なんという極上のハリ。これが夢にまで見た、セレヴィのおっぱい。いかん、ワシ、もう魔剣なのに、なんだか気持ちよくなっちゃいそう」
「うふふふっ、いいでしょうエロス。これが貴方が生前夢にまで見た、大魔法使いの身体の味よん。もっと存分に味わいたいんじゃなくって?」
「……いいのぉ!!」
「いいわよぉん」
「わぁーい!! 話が分かるぅ!! ペペロペいい魔女じゃん!! ひゃっほうマシュマロおっぱい最高なりぃ!!」
「なにやってるんだエロース!!」
「ちっともよくないわよ!! 正気に戻りなさい、この駄剣!!」
女エルフが叱責するが、魔剣は少しも正気に戻る素振りはない。
いやむしろ、よりいっそう気持ちよさそうな声を上げはじめた。
あへあへあへへと上る間の抜けた声に男戦士たちが頭を抱える中――。
「ふふっ、これで、魔剣エロスは封じさせて貰った。さて、中央大陸の皆さん、改めてここで宣戦布告をしよう」
ローブを着たゴブリンが、魔女ペペロペに代わって男戦士たちの前に出た。
剣を交える前に、魔剣エロスが忠告した通りだ。
このゴブリン、只者ではない。
「我こそは暗黒大陸の外交ゴブリン僧。ちゃっかりゴブリンティウス」
「ちゃっかりゴブリンティウス!?」
確かに、ちゃっかりと魔剣エロスを簒奪した所からして、その二つ名は間違いではなさそうだ。それにしたってもうちょっと、マシな二つ名はなかったのだろうかと、微妙な空気が辺りに漂う。
女エルフ、男戦士、
そして、後方に待機している、女軍師、魔脳使いを見渡して、ゴブリンティウスはその白い剥き出しの歯を輝かせた。
「稀代の魔剣エロスを失ったそちらは大きく戦力を削がれたことになる。対して、こちらには、暗黒剣を使う暗黒騎士、そして、一時的に力を封じられたが魔女ペペロペさまが居られる」
「……何が言いたいの?」
「ふふっ。もはやわざわざ、私がそれを口にせずとも分かっているだろう、セレヴィの娘モーラよ」
女エルフの素性をずばりと言い当てて、得意げにほくそ笑むゴブリン男。
このゴブリン……と、女エルフが杖を握りしめる。
だが、彼女の魔法よりも早くゴブリンは髑髏のあしらわれた杖を振った。
ゴブリンと魔女ペペロペに青白い光が降り注ぐ。
それは転移魔法の光。
魔剣エロス簒奪という目的を果たした彼らに、もはや留まる意義はなかった。
「待ちなさい!! 逃げるつもり!?」
「逃げようとも――そしてここに宣戦布告をしよう!! 我ら暗黒大陸の兵は、これより三日後、ここ中央大陸連邦首都リィンカーンに攻め込もう!! それまでにその腹を決めておけ!! 降伏か!! それとも滅亡か!!」
白百合女王国の第一王女――エリザベートを差し出して降伏するか。
それとも、押し寄せる暗黒大陸の兵と正面からぶつかり大陸の塵と化すか。
降伏か滅亡か。
実に分かりやすく突き付けられた終戦の条件に、男戦士たちが眉根を寄せた。
「そのような条件が飲めると思っているのか!!」
「飲まねば滅ぶだけ!! さて、稀代の名剣を失って、いったいどれだけの抵抗をすることができるかな――中央大陸の現代の勇者よ!!」
よく考えることだ。
徐々に霞むように消えていくゴブリンの声。
うふふふと怪しく微笑むペペロペの声。
そして――。
「あへあへ~エ~ルフオッパ~イボインボイ~ン」
ササキエルの街に伝わる伝統歌。
それを口ずさむエロ魔剣の声が――完全に消え去った時、男戦士たちは暗黒大陸からの使者に敗北したことをまざまざと思い知った。
「くそっ!! なんてことだ!!」
「エロスさんが奪われてしまうだなんて!!」
「だぞ!! これは、大変なことになってしまったんだぞ!!」
「――そうか?」
皆が敗北の悔しさに打ちひしがれる。
そんな中、女エルフだけ死んだ魚の目をしていた。
そう、女エルフだけが、死んだ魚の目をしていた。
魚だなどエルフさん、魚だ。
「――どうでもええわ。そんなツッコミも、あのエロ魔剣も」
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