第353話 ど男戦士さんと謎のオカリナ

【前回のあらすじ】


 厨二病ってほんと難しいですね。


「角〇のサイトで一ツ〇と〇羽の危険なパロやっておいて言う事がそれか!!」


 この作品には過激なパロディが含まれます、とか書いて置けば大丈夫ですよ。

 ポプテピ〇ックだって大丈夫じゃないですか。


「おい!! 竹〇房まで巻き込むな!! おい!!」


 あとは秋田〇店だけですかね。

 モーラさんに「なんだァ? てめェ……」とか言わせておけばいいですかね。


「言わんから、絶対に言わんから!! というか眼帯なんて付けないわよ!!」


 まぁ、さんざんこれまでパロディやっといて、今更ですよね。

 皆さんもパロディはほどほどにね!!


「なんだァ? てめェ……」


 モーラさん、キレた!!


◇ ◇ ◇ ◇


「……よかった。あのまま剥げたままだたったらどうなるかと思ったわよ」


「眼帯外した途端に髪がにょきにょき生えてきて気持ち悪かったですね」


「剥げたり、白髪化したり、不思議な眼帯なんだぞ。一度しっかりと研究してみたいけれど――自分で身に着けるのは遠慮願いたいんだぞ」


「ござる。ちょっといいかなと思ったけれど、冷静になって考えると、やっぱりないでござるなぁ」


「よねぇ。私もどうかと思うわぁ。自分で持ってるのもちょっと嫌な感じだもの」


 女性たちから口々に不評を受ける【江戸者伊達スエドモンダンテス】。

 散々な目にあったにもかかわらず、そんなことはないと眼帯を庇う男戦士と青年騎士。男はいくつになっても子供なのだなと、女エルフたちは苦笑いをした。


 かくして、今度こそ暗黒大陸と対決するにあたっての懸念事項は払拭された。


「プリケツちゃん――もとい法王ポープリーケット。それと、クリりん」


「……はい、ティトさん」


「なぁーに、ティトちゃん?」


「儀式魔法【漢祭】について確かに請け負った。これよりここで起こったこと、連邦首都リィンカーンへと戻り次第、連邦騎士団及びリーナス自由騎士団へと報告させてもらうが、よろしいな?」


 顔を見合わせる法王ポープとオカマ僧侶。

 二人はその言葉を待っていたとばかりに口角を釣り上げた。


 男戦士へと返す言葉はもはや聞くまでもない。


「……もちろんです。むしろ、騎士団の方々によろしく事情をお伝えください」


「こんな厄介な話に巻き込んじゃってごめんなさいねティトちゃん。エロスの持ち主である貴方なら、きっとうまくやってくれると信じているわ」


 ばちりとウィンクをしてみせるオカマ僧侶。

 気味の悪いその反応に、うげげげとエロスはえずいたが、男戦士はけろりとした感じで受け止めた。


 眉一つ動かさない男戦士の姿に、ほう、と、感心するオカマ僧侶。


「なるほど、あのエロスが大人しく相棒になる訳だわ」


「なんじゃー、文句あるかー。ワシとティトは強い絆で結ばれたエルフメイトにしてソウルフレンドなんじゃい。魂の友なんじゃい」


「あぁ。お前のような話の分かる魔剣、なかなか愛剣にできるものではない」


「ティトとワシはズッ友じゃよ!! ズッはズブリのズッだけどね!!」


 普通に生きてりゃ魔剣なんかと相棒になることなんてない。

 そんなことを言いたげな女エルフの生温かい視線を背中に受けながら、和気あいあいと談笑する魔剣と男戦士。


 妬けるわね。

 ぼそりと二人に聞こえないように呟いたオカマ僧侶の表情は、物悲しくもあり、一方でどこか安堵しているようにも見えた。


 この調子ならきっと大丈夫だ――とでもいう感じに。


「ティトちゃん。エロスのこと、くれぐれもよろしくね」


「言われなくとも大切に扱わせて貰うさ」


「おいティト、俺様がお前に使われてやっているってことを忘れるなよ。あくまでワシのが上なんだからのう。なんたって戦士技能レベル10だから。戦士技能レベル10だから。はい、ここ大事なことだから二回言いました、テストに出るぞー」


「こんな調子だけど、悪い奴じゃないから」


「知っている」


 それと……と、少し戸惑う様子を見せてから、オカマ僧侶は胸元から、また一つアイテムを取り出した。

 それはとても小さな陶器製のオカリナ。


 また何か呪われたアイテムではないか。

 女エルフたちが身構える中、男戦士はそれをあっさりと受け取る。


「物怖じしないのね」


 少し腑に落ちない感じでオカマ僧侶が言う。

 しかし、渡したそれをいきなり吹こうとした男戦士を、彼女はその手を掴んで止めた。オカマではあるが、その手つきはまさしく女性のように優しく――男戦士は軽やかなその指運びに少しだけ胸をときめかせた。


「駄目よティトちゃん。これは、いざという時の切り札。儀式魔法発動に際して、どうにもこうにも行かなくなった時に吹きなさい」


「……吹けばどうなる?」


「最も頼りになる私たちの知り合いが駆けつけてくれるわ」


 最も頼りになるの知り合い。

 なんともぼやかした言い方が気になったが、男戦士も女エルフも、そこは喉まで出かけた言葉を引っ込ませた。


 きっとそう言わなければならない、かかる事情があるのだろう。


「大丈夫、それ自体はなんの変哲もない笛だから」


「そうなのか」


「何か魔法がかかっている訳じゃないの? それこそ、特定の人物にしか聞こえないとか? どこに居ても聞こえるとか?」


「本当に、なんでもない普通の笛よ」


「だったらだったで、そんなの貰って意味あるの?」


「あるわよ」


 そう言って、オカマ僧侶が遠い目をした。


 何が来るのか、誰が来るのか。

 詳しく告げず、彼女は続ける。


「魔女ペペロペ――セレヴィがいる限り、アイツはきっと戦場へと現れるわ」


「……お母さんと関係のある人物なの?」


「えぇ、そうよモーラちゃん。彼は貴方と同じ。セレヴィを救うために――うぅん、困ったエルフ娘を救うために、その後の人生を捧げると決めた男よ」


「そんな偉大な男がこの世には居るのか」


 一度会ってみたいものだ。


 そう言って――ちょこざいにも笛を吹こうとする男戦士を、また、優しい手つきでオカマ僧侶は止めるのだった。


「大丈夫、それは貴方たちがよく知っている人よ」


「え……」


「ますます気になる。いったい誰なんだ。誰エルフスキーなんだ。吹かねば」


 オカマ僧侶が握りしめた笛を強引に引き寄せる男戦士。

 やめなさい、吹きたい、やめなさい、吹きたい、というコントのようなやり取りを経て――。


「あぁもう、やめろっつってんだろっ!! しつこいんだよこのダボがぁっ!!」


「へぼぁっ!!」


 オカマ僧侶は男戦士の頬を全力で叩いたのだった。


「……ザマないわね」


 女エルフが白けた顔をする。

 吹き飛ばされて床に倒れる男戦士。

 魂が抜けて昇天しようとする彼に、あらやだいけないと、すぐにオカマ僧侶、そして、法王ポープが回復魔法をかけようと駆け寄った。

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