第352話 ど青年騎士くんと白髪効果

【前回のあらすじ】


 大魔法【漢祭】を執り行う上で重要な【厨二病の紫褌】の装着者。

 それにふさわしい厨二病患者を作り出すという魔法遺物オーパーツ江戸者伊達スエドモンダンテス】。


 この効能が本物であることを確かめるため、オカマ僧侶からそれを借り受け装着した青年騎士であったが――。


「クッ、クッハ!! クハハハハハッ!! クハハハハハハハッ!!!!」


 彼の美しかった金髪はみるみる白髪化し、白桃のような肌は白みを帯びた。

 おまけに、まるで復讐鬼アヴェンジャーのような笑い声まで上げだして、これはいったいどうなるんだ――という所で引いて終わった前回。


 おめでとう、作者は【次回に続く】を覚えた。


「単に綺麗にオチを付けられなかっただけでしょう!!」


 はい、すみません。


◇ ◇ ◇ ◇


「……なんということだ!!」


「嘘ぉん。本当になんか厨二病キャラっぽくなっちゃたんですけど」


「だから言ったじゃない、嘘っぽいけど本当だってぇ。モーラちゃんてば疑り深すぎよぉ。そんな狭い了見じゃ、狙った男の子も逃げちゃうわよぉ?」


 オカマ僧侶に痛い所を突かれる女エルフ。

 しかし、今はダメージを受けている場合ではない。


 変化してしまった青年騎士。彼の無事を確認しなくてはいけない。


「……えっと、大丈夫? ロイド?」


 女エルフが尋ねる。いつもだったら、折り目正しく――。


「はい、大丈夫です、モーラさん。ご心配ありがとうございます」


 なんて答えるロイド。

 だが――。


「……」


 どうしたことだろうか。

 白髪化したせいか、そんな愛想は返って来ない。

 まずいんじゃないかこれ。そう女エルフが思ったその時だ。


 だらりとロイドが突然に手を降ろしたかと思うと背中を丸めた。


 白い髪をカーテンのようにして、顔を隠す青年騎士。

 そして――。


「……僕を喰おうとしたんだ。僕に」


「アカーン!! それ、厨二病で括ったらいろいろアカン奴やぁっ!!」


 いきなり言ってはいけない強烈なパロ台詞をぶっこんで来たのだった。


「仕方   ね?」

   ないよ


「アカーン、仕方なくない!! 地の文も合わせてなに遊んでんだアカーン!!」


「落ち着いてくださいモーラさん!! さっきから何をアカーンアカーン叫んでいるんですか!! というかモーラさんが一番アカーンですよ!!」


「何がじゃい!! どう見てもこっちのがアカンやろ!! 他の出版社やぞ!!」


「だぞ。何を言ってるのかさっぱりなんだぞ……」


「おろぉ。弱ったでござるよ」


「こらそこぉっ!! からくり侍!! お前もしれっとネタ仕込むな!! それも違う出版社やっちゅうねん!! それで今ちょっとデリケートな奴だから!! ロリがどうとか言っている状況で、触れると火傷するような奴!! アカーン!!」


 すぐさま青年騎士から眼帯を引きはがす女エルフ。

 すると、先ほどまでの厨二病っぷりはまるで嘘のよう。

 すぐに彼の髪の色は元の金髪に戻り、肌には血の気が戻った。


 同時に、青年騎士は正気に戻ったように、目を剥く。


「……はっ、僕は、いったい、何を」


「僕は、いったい、何を、じゃ、ないわ!! アカーン!! その眼帯、付けると危なくなる奴やから、ギリギリまで使ったらアカーン!!」


「そんな!! せっかくこれで僕も皆の役に立つことができると思ったのに!! あんまりです!!」


「役に立つどころか爆弾だわ!! お前、この小説公開停止にするつもりか!!」


 息巻いて青年騎士を説教する女エルフ。

 しかしながら、魔法遺物オーパーツ江戸者伊達スエドモンダンテス】の力が本物であることは、これで証明された。


 懸念していた五人目の益荒男は、これで探す必要がなくなった。

 めでたしめでたしである。


「これで後はビクターとヨシヲ、ハンスと合流すればいいだけか」


「だぞ。暗黒大陸側が攻撃を仕掛けて来るより早く、なんとか合流しなくちゃいけないんだぞ」


「皆さん、今頃どこに居らっしゃるんでしょう?」


 女修道士シスターの問いに頷いたのは妹の法王ポープである。

 そこは任せてくれとばかりに、大陸はおろか世界に対して影響力を持つ教会の主が力強く返事をした。


「……それについては教会の手を使って探させましょう。なんにしても、まずは中央大陸連邦国首都リィンカーンに力を集結させることです」


「そうね」


「だぞ」


「頑張りましょう皆さん!! 絶対に、儀式魔法【漢祭】を成功させて、暗黒大陸からの敵を押しのけるんです!!」


「「「「おう!!」」」」


 女エルフたちが女修道士の言葉に合わせて声を上げた。

 しかし――。


「一、二、三、四……一人足りない」


「だぞ?」


「そう言えばティトさんの姿が」


「ないでござる!!」


「まさか……ティトさん!!」


 はっと女エルフが気が付いた時には、青年騎士から引き剥がした【江戸者伊達スエドモンダンテス】が無くなっていた。


 迂闊。

 厨二病アイテムに男心を踊らされたのは、青年騎士だけではなかった。

 もし、男戦士がさっきの調子ではっちゃけたら――取り返しがつかない。


 探せ、探せ、探せ。

 男戦士は――どっちだ。


 と、その時。

 暗い【教会の闇】の部屋の隅に眼帯を付けた男戦士の姿を女エルフは見つけた。


 青年騎士と同じくその体は白くなって――いない。

 代わりに、頭から毛が抜け落ち、前歯が出っ張り、そして白Tシャツに腹巻という、なんとも特徴的な姿に代わっていた。


 はい、もう次の台詞は想像できますね。


「立て、立つんだ〇ョー!!」


「アカーン!! 一ツ〇と〇羽の両グループを敵に回したら、アカーン!!」


 いやまぁ、確かにそっちも眼帯キャラですけど。

 白髪化するのは教え子の方ですよ――。

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