第六章 魔法少女ウワキツモーラスタンバイ!!

第251話 どエルフさんと肉体言語

【前回のあらすじ】


 昭和の魔法少女という感じだったリリィは、魔法少女バトル前にメイクアップ。

 デリケートタイプの際どい衣装にチェンジして見せたのだった。


 対して、急遽魔法少女になることになったモーラさん。

 無難に安心安全ふりふりタイプを選んだ彼女だったが――。


「てめえら、許さんぜよ!!」


 少女鉄仮面。


 なぜかスケベエ刑事こと、セーラー服に鉄仮面という昭和の学園バトル少女漫画的なコスチュームに変身してしまうのであった。


 まぁ、なんと言ったらいいでしょう。

 本当になんかそういう怪しい店みたいな展開になってきましたね。


「よいこの読者がおるかも知らんだろう!! そういうこと言わなーい!!」


◇ ◇ ◇ ◇


「ふぅん、なんだか知らないけれど、安心安全ふりふりタイプにしては、気合の入った感じのコスチュームじゃない」


「そうかしら。私にはもう、この世の悪意しか感じられない、最悪のコスチュームにしか思えないけれど。というか、さっさとこのリングから降りたい気分だわ」


「そんなことないぞモォーラさん!! 似合ってるぞぉー!!」


「そうですよモーラさん!! なんかそういうお店で出てきても、十分通用する感じの――なんか危なさがありますよ!!」


「うっさいボケ!! そんなんこっちは求めておらんのじゃ!! というか、仲間に向かってそんな声援あるか!?」


 男戦士と女修道士シスターのどこかずれた声援にブチ切れる女エルフ。

 まぁ、実際、目の前の魔法少女と違って、女エルフの方には言葉にしにくい、妙な危うさがあったのは事実である。


 そうなんというか、このキャラがこれ着たらアカン感である。


 例えるならばそう、17年FG○水着イベ頼光マッマのごとき衝撃――。


 私服以外の服を着るという行為自体が、もうなんというかアウト。

 という感じの、そういう危うさである。


 まだ、あっちは胸があるだけマシだが――。


「あぁん!?」


 はよ進めろやという感じで、女エルフが虚空に向かってメンチを切る。

 彼女、最近第四の壁を平然と破って来るから怖いわ。


 いやはい、流石にちょっとふざけすぎました。


 FG○やってない人は、「源頼光 水着」でググってみようね。

 ちょっと複雑な気分になれると思うよ。


 と、最低限のフォローを入れておきつつ――本題へと戻ります。


 両者、それぞれのコーナーに背中を預けて睨み合う。


 魔法少女勝負というよりも、プロレスのような雰囲気。

 まさしく、その空気に合わせたように、カーンと、始まりを告げる鐘の音が七階フロアに木霊した。


 魔法少女勝負開始である。


「さっそく、私の方から行くわよ!!」


 先攻を取ったのは――大人げなく魔法少女の方。

 彼女はいきなり、ロープを蹴って跳躍すると、空中殺法を繰りだしてきた。


 魔法少女といえば空を飛ぶもの。

 そして、飛びながらビーム砲を撃つものである。

 

 古来より、そういう風に魔法少女とは決まっているのだ。


 どうしていいか分からず身構える女エルフ。

 そんな彼女に向かって魔法少女は――。


 杖ではなく自分の手を突き出した。


「な、なにぃっ、なんだぞ!?」


「ケティさん、これはいったい――魔法少女勝負とは、全力全開のハイメ○粒子砲をぶつけ合う、魔力と魔力のぶつかり合いではなかったのですか!?」


「だぞ――これは間違いない!! 魔法少女勝負の中でも、更に危険とされる、ルール無用の無制限バーリートゥードゥ魔法少女勝負!! なんだぞ!!」


無制限バーリートゥードゥ魔法少女勝負!?」


【キーワード 無制限バーリートゥードゥ魔法少女勝負: 魔法少女勝負の中でも、全力全開によるハイメ○粒子砲による決着を重視せず、それに至るまでの過程――技の掛け合いを重視する魔法少女勝負である。またの名をプロ魔法少女勝負レス


 身構えた女エルフであったがその肩は無防備。

 そこに、手をかけた魔法少女が、器用にその場で逆立ちする。


 てぇい、という、掛け声の下に横に回転したかと思うと、女エルフが体勢を崩してその場に尻もちをついた。


 ちょっと、なんなのよ、と、尻をさする女エルフ。

 その間に、再び、魔法少女はコーナーに移動していた。


 ロープにより先ほどより高く跳躍する魔法少女。


「喰らいなさい!! これが、無制限バーリートゥードゥ―魔法少女勝負三十六の必殺技が一つ――嘆きの少女十字星!!」


 十字に手を開いて、頭上から女エルフに襲い掛かる魔法少女。

 その細い腕――その肘が女エルフの鳩尾をしたたかに叩きつけた。


 かはっ、と、女エルフの口から血――のようなものが飛び散る。

 口の中を切るような技でも、内臓に負担のかかるような技でもないのにだ。


 これが、無制限バーリートゥードゥ魔法少女勝負。


 演出のためにありとあらゆる空間湾曲が発生する、ご都合空間。


 ゆでられたたまごの如きもの。


「おそるべし、無制限バーリートゥードゥ魔法少女勝負!! なんだぞ!!」


「魔法少女なのにプロレス!! 魔法少女なのに肉体言語!! これいかに!!」


「否、魔法少女だからこそ――肉体言語で語るのだ!!」


 そう言った魔法少女の顔は悪鬼羅刹。

 この世のありとあらゆる修羅場を潜り抜けて来た、そんな壮絶さを感じさせるものになっていた。


ハイ○ガ粒子砲フィニッシュホールドは魔法少女勝負の華!! それを最大限に際立たせる、故の無制限バーリートゥードゥ魔法少女勝負!! 故の、肉体言語!!」


「言葉の意味は分からんが、なんだかすごい気迫だ」


 今回ばかりは、流石だな魔法少女さん、さすがだ、と、言わざるを得ない。


 ピンクの牛と化した男戦士を筆頭にパーティメンバーがごくりと唾を呑みこむ。

 そんな中、必殺技をもろにボディに喰らってしまった女エルフは、その場に白目を剥いて倒れるのだった。

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