第244話 金髪少女さんとチョウーン
【前回のあらすじ】
金髪少女はバブミを使った!!
「あぁ、ヤミさま……。これが、癒し……。そして救い……」
黒服は毒虫たちに刺されたのも忘れて回復した。
一方、女エルフもバブミが使えないか試してみた。
「うぅむ、仰ぎ見てもモーラさんの顔しか見えない。なんてフラットで見ごたえのない胸なんだ。まったくありがたみががない」
「仕方ないでしょ!! ていうか、ほんとアンタは胸ばっかりね!!」
「足も野山を歩き回って育ったせいか、ごつごつしていて頭の乗せがいがないし。なんだろう、この残念感は……」
「残念って言うなぁ!! もうっ、知らん!!」
男戦士はげんなりした気分で女エルフの膝枕から顔を上げた。
残念。
女エルフにやはりバブミは使えなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
さて。
ヤミの信者たちによる捨て身の進撃。
それにより先日の攻略より早く塔を登りつめることに成功した男戦士たち一行。
いよいよ件の五階――強制排出の力を持つ、カンウが待つフロアへとやって来た。
「本当に、大丈夫なんでしょうね?」
「にょほほほ!!
相変わらず、悠々とした大河が流れているフロア。
先に攻略を果たしたヤミの先導により、六階へと続く最短ルートを歩んでいく。
それは以前に男戦士たちが挑んだ時には通らなかった道順であった。
はたして、実は彼女はカンウと出会わなかっただけではなかっただろうか。
語られたのではないか。
嵌められたのではないか。
女エルフが危惧して顔をしかめる。
しかし、そんな不安を察したように、魔性少年が女エルフにフォローを入れた。
「大丈夫ですよ。
「けど、それは結局、彼女が【ソソの血族】だという証拠にはならないでしょう?」
「モーラさんが危惧されるのもごもっともですが。たぶん大丈夫ですよ」
「どこから来るのよ、その自信は……」
どうしてこんな詐欺師まがいの少女の言うことを、すんなりと信じられるのか。
女エルフには、魔性少年のフォローが今一つ腑に落ちなかった。
やはり実際にその場面を見てみないことには、何も判別することはできない。
じろりと金髪少女の背中を睨みつける女エルフ。
そんな彼女の視線を知ってか知らないでか。
にょほほほ、と、また、高笑いを金髪少女はあげるのだった。
ふと、その時である。
荒涼とした風に乗って、あの特徴的な銅鑼の音が聞こえてきた。
「ジャーンジャーンジャーン」
「来たわね!!」
「ヤミさん、よろしくお願いします!!」
「ふはははっ!! 任せるのじゃ!! さぁカンウよ、ここであったが百年目――」
ざっくざっくと馬の蹄が土を掘り返す音が聞こえる。
稜線の向こうから、確かにこちらに向かってくる影が見える。
だが、しかし――。
「「「「「「「げぇっ、チョウーン!!」」」」」」」
現れたのはなぜかカンウではなく、糸目の
と、同時に、さっと、金髪少女の顔が青ざめた。
「ま、まずいのじゃ!!」
「まずいですね!!」
狼狽える金髪少女と魔性少年。
「どういうこと!?
そこに加えて混乱して何がなんだという感じの男戦士パーティ。
耐えかねて女エルフが事情を知っていそうな魔性少年に質問を投げかけた。
我に返ったという感じで、いつもの落ち着きを取り戻した魔性少年。
そんな彼が女エルフの方に向き直る。
「このフロアをうろついているのは、カンウだけではなかった、ということですよ」
「はいぃいぃ!?」
「それにしても参りました、まさか出会ったのがチョウーンだなんて」
「チョウーンだと何がまずいのよ!!」
「チョウーンはですね。ショーク国の英雄の中でも、最後の最後まで残って戦い続けた、不屈の戦士なんですよ」
回りくどい言い方に、いらり、と、女エルフが眉間に皺を寄せる。
つまりどういうことなのよ。
彼女が叫ぼうとする機先を制して、魔性少年が青い顔で彼女に告げた。
「つまり、彼はソソ絶対○すマンということなんです」
「――な、なんですって!!」
「チョウーン単騎駆け参るッ!!」
言うが早いか槍を手にしてこちらに突っ込んでくるチョウーン。
カンウのように、エンカウントで強制排出ということはないようだ。
だが、相当に手ごわそうである。
どうするどうすると、にわかに場が騒然とする中――あっという間に、チョウーンは男戦士たちとの距離を詰めてきた。
ヤミを守るべく、黒服の男たちが展開する。
数の暴力。
圧倒的な肉の壁で押し返そうとするも。
「えぇい、邪魔だぁっ!! ソソ、絶対○す!!」
その槍の一振りで、ひょいひょいと黒服が簡単に吹き飛ばされていった。
こりゃかなわん、あわわあわわと、油汗を女エルフがかいたその時だ。
「仕方ないな」
「こういう時の前衛職だ……やるか、ティト!!」
男戦士と大剣使いが、女エルフをかばうようにして立ちふさがったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
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