第243話 どエルフさんと黒服超特急
【前回のあらすじ】
バビブの塔の攻略を手伝ってもよいと言い出す金髪少女。
しかもその要求は、魔性少年の求めるものと一致するものだった。
かくして、二人は同盟を組むことになったのだが……。
「一族のために体を張るなんてなかなかできるものではないわよね」
「けど、モーラさん張ってるじゃないですか。どエルフ族のために」
「張っとらんわーい!!」
「そうか、おっぱいがない、おっぱいがないと思っていたが、どエルフ族のために、あえて胸を張っているうちに伸びてしまったといいうことだったのか」
「んなわけあるかーい!!」
「そこまでして、どエルフ族のエロを守ろうとするなんて」
「なんて、なな、なんて種族思いなどエルフなんだろう!! 流石だなどエルフさん、さすがだ!!」
「流石です……!!」
とまぁ勝手に設定を造って、勝手に泣き出す男戦士たち。
これにはかなわないなと、女エルフ。
いよいよぷちりと頭の血管がブチ切れた彼女。
おうさ、魔法の一発でもかましてやろうかと彼女はユカータの袖をまくった。
◇ ◇ ◇ ◇
さて、ヤミが加わったことにより、男戦士パーティの攻略は比較的楽になった。
何故か。
足手まといにしかならないと当初思われていた金髪少女なのにである。
当然、そこには深い理由があった。
「ヤミ様こちらにシビレクラゲの群れが――あびびびびび!!!」
「ヤミ様!! 前方から、暴れドクトカゲの大群が!!」
「ここは私にお任せください!!」
「いいえ、私にお任せください!!」
こぞってヤミの役に立とうとする黒服の男たち。
彼らは、献身的にその身をヤミへと差し出すと第四階――多くの毒虫が徘徊するそこを、次々に攻略していった。
男戦士たちが、知力を使って半日かかって攻略したそこを、力技でだ。
黒服たちのその自己犠牲的な突進はすさまじいものがあった。
それこそ男戦士たちはただただその剣幕に圧倒されてしまった。
これが、カリスマ。
あるいは教祖の人徳という奴なのだろうか。
「や、ヤミさま、俺、やりました」
「よしよし、よく頑張ってくれたのう。ほれ、膝枕をしてやろうかのぅ」
「そんな恐れ多い!!」
「
「あぁあぁあぁ、すごいバブミなんじゃぁ~~~」
【魔法 バブミ: なんだか久しぶりに出てきますが、あふれる母性で人の心から体の傷まで治してしまうという回復魔法である】
何も魔法が使えないと思われたヤミ。
そんな彼女にも、どうやら一つくらいは使える魔法があったらしい。
しかしながら、いい大人が、小娘の膝枕一つで体力全快という姿が実に滑稽だ。
うぅむ、と、女エルフは眉をひそめた。
「バブミですか。まだ小さいのに、やりますね、彼女」
「小さいからこそよく効くという話もあるがな」
「そういうものなの?」
「前に
ちょうどいい年齢なのかもしれない。
そう、男戦士が感心した風に言う。
だが、女エルフは相変わらず、呆れた顔でその様子を見ていた。
「モーラさんも、もう少しお胸があれば、きっと使えますよ」
「気休めはいらんがな。それに、バブミがなんだっていうのよ。普通に回復魔法が使えたほうがいいに決まっているじゃない」
「そんなことないですよ。婚活するときなんかに、バブミができると、それだけで男性と触れ合えるきっかけになりますよ」
「そんなくだらん理由で魔法覚えたくはないわ」
と、言いつつ、ついぞ男戦士の方を見てしまう女エルフ。
もし自分がバブミを使うことができたなら。
彼はもう少し自分に振り向いてくれるだろうか――。
そんなことを思って、彼女はそっと自分の胸に視線を落とした。
うむ。
まったくおぎゃる余地がない。
しかし、それを言ったら、金髪少女にしたってそう変わらないサイズである。
解せない。
そう、女エルフが首を傾げたのはしかたのないことだった。
「どれ、それじゃぁ……俺も一つその回復効果を」
「いいから!! というかアンタは別にどこも怪我してないでしょうが!!」
しれっと金髪少女に甘えようとする男戦士を止めてみせた女エルフ。
そのまま、彼女はがっちりと男戦士の頭をホールドした。
魔が差したのだろうか。
女エルフが、ふと、何かを思い立ったかのような顔をする。
「……モーラさん?」
「ちょっと屈みなさいティト」
次に、女エルフは無理やり力技で男戦士をひざまずかせた。
そしてその場に彼女は座り込むと――自分の膝の上に彼の頭を乗せる。
「……これは、なんのつもりだ、モーラさん」
「……別に。私にも、バブミができないかって、試してみただけよ」
顔を赤らめて、そっぽを向いて言う女エルフ。
ただ、バブミの効果は、どうやら発揮されていないようだった。
しかし、気持ちは届く。
曲がった形ではあるが。
「チャレンジブルじゃないか!! 流石だなどエルフさん、さすがだ!!」
「……うっさいバカ!!」
女エルフの行動を、素直に褒める男戦士。
やはり使えないかと落胆する女エルフ。
しかし、今回ばかりは、どエルフと罵られても、少しばかり嬉しいようだった。
◇ ◇ ◇ ◇
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ヨシヲ好きな方は良ければお読みください。
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