第236話 どエルフさんと植物魔法

【前回のあらすじ】


 女エルフは○ンデレであった。

 って、今更だよね。


「だから、そこに○入れたら誤解する人が出てくるでしょうが!!」


 いやいや、何をおっしゃる。ツ以外に何が入ると言うんですか。

 おかしなことを言う○ンデレエルフですね。


「だから!! それなら○入れなきゃいいだけの話でしょ!!」


 まぁ、それはともかく、男戦士たちはついに四階――古今東西のあらゆる毒虫が集められているという、四階――毒のフロアへと足を踏み入れるのであった。


◇ ◇ ◇ ◇


【巨大百足の群体が現れた】


「うぉーっ!! なんか知らんが、いきなり触手プ○イ可能性大のピンチだ!!」


「なにが触手プ○イよ!! って、確かに数が多い――!!」


【さらにオニバチの群れが横から現れた】


「ハチには針があっても穴はあるのでしょうか」


「神の愛を注ぐ算段をたててる場合か!!」


【さらにさらにさらに上からムラサキアブラムシが大量に落ちて来た】


「だぞぉおおおっ!! 最悪なんだぞぉおおっ!!」


「本当に毒虫のオンパレード――あぁもう、皆ちょっと鼻をふさいでなさい!!」


 叫んだのは女エルフ。

 ローブの中から取り出したのは、必殺の種である。


 ちょいさとそれを投げつけるとそこに、自立駆動魔導書オート・マジックを使って、成長促進の魔法をかけていく。


 むくむくと、育ち切った白い花の群生――そこに向かって。


「火炎魔法――燃えよ、これが虫系モンスターに効果抜群、除虫菊ブラスター!!」


【魔法 除虫菊ブラスター: いわゆる虫系モンスターというのは煙に弱い。この特性を利用して、着火と共に大量に煙をまき散らして燃える除虫菊を促成栽培、その煙を敵にぶつけるいう必殺技である。ちなみに、これはモーラさんのオリジナル魔法であり、他に使うやつはいない】


 ぐえぇえぇ、と、もだえ苦しみ、その場にのたうち回る毒虫たち。

 白い煙に包まれて、彼らはその場にあおむけに倒れると、ぴくりとも動かなくなってしまった。


 どうだ見たか、と、女エルフが腰に手を当ててふんすと鼻を鳴らす。

 その背中側――鼻を塞いで彼女のそれが終わるのを待っていた男戦士たちは、堪えられない、という感じで鼻から手を離した。


「あ、懐かしい香り」


「おばあちゃんの家の香りなんだぞ」


「暑い夏の景色が瞼に浮かびますね」


 毒虫たちに効果てきめん、と同時に、郷愁を呼ぶ魔法でもある。

 ある意味で、毒気を抜かれた男戦士たちが和んだ顔をする。


「除虫菊の夏、どエルフの夏」


「どういう意味だコラ」


「なるほど、○ンチョーと、○腸をかけている訳ですね。けど、そういうネタはどうなんでしょう。企業に迷惑がかかりますし」


「わーっ!! わーっ!! 聞こえない、私、何もきこえなーい!!」


 とにかく、無効化したんだから、さっさと片付けちゃって、と、女エルフ。

 はぁいと近接戦闘タイプのメンバーがしぶしぶという感じに手を動かし始めた。


 もだえうつ虫系モンスターたちに、丁寧にトドメをさしていくと、男戦士と大剣使い。その後ろで、ふぅと、女エルフは息をついたのだった。


「いやぁ、それにしてもすごいですね。モーラさんの植物魔法」


「そう? だいたいエルフはこの程度、普通に使うものだと思うんだけれど……」


「エルフの方と一緒に旅したことがありませんから新鮮ですよ。その種、いったいどれほど持ってるんですか?」


「うーん、まぁ、ざっと五十種類くらいかしら。拠点にしてる街に倉庫を借りてて、そこには二百種類くらい置いてあるんだけど」


 二百種類、と、その種類の多さに驚く魔性少年。

 初耳だったのだろう、女修道士シスターとワンコ教授も同様に驚いていた。


 唯一驚かないのは、ワッシワッシと、倒れた昆虫モンスターを切り刻んでいる男戦士だけである。


「すごいじゃないですか。その種一つ一つに、使い道があるってことですよね?」


「まぁ、でなきゃ集めないし」


「だぞ!! モーラ、そんなことしてるのなら、一度相談してほしかったんだぞ!! 貴重な植物の種があれば、是非、研究サンプルに分けて欲しいんだぞ!!」


「えぇ、ちょっと、それは流石に。門外不出の植物の種とかもあるから……」


「尚更、気になるんだぞ!!」


 ワンコ教授大興奮である。


 はぁ、と、女エルフがため息を吐き出した。

 説明すればこうなることが分かっていた。

 だからあまりその辺り、詳しく説明はしてこなかったのだが。

 と、少し残念そうに顔色を曇らせる女エルフ。


 そして更に――。


 女修道士シスターがいつもの、男戦士と同じ驚愕の顔をしていることが、そこに加えて余計に彼女をブルーな気持ちにさせるのだった。


「そんな大量に触手草を集めて――いったいどうするつもりですか、モーラさん」


「触手草違う。さっきの見てたでしょ、普通に花とかの種も集めてるわよ」


「けど、触手草がメインなんですよね!! 主に、おしべとめしべより、その下にある部分が重要なんですよね!!」


「重要ってなんだ!! 使い方なんて植物によってそれぞれよ!!」


「植物によって!! それぞれ!!」


 あかん、これは口を滑らした感じだ。


 女エルフの言葉を聞いて絶句する女修道士。

 それに対して、女エルフはいつもの嫌な――勘違いの――流れを感じた。


「それはつまり、触手に絡み絡まれて、ぐっちょんぐっちょんのねっちょんねっちょんにされるのとはまた別の、そういう目的の種を集めていると!?」


「そもそもそんな目的で種を集めてないから」


「つまり人の体内で急速成長するマンドラゴラの種とかですか!?」


「具体的にどこでどう成長するのか」


「もしくは数珠なりになっている株とか!?」


「なんで数珠なりになってる必要があるのか」


「なんて恐ろしい――どエロ植物研究家の側面も併せ持っていたなんて、流石ですどエルフさん、さすがです!!」


「誰がどエロ植物研究家じゃぁい!! はたき倒すわよこの色ボケ女修道士シスター!!」


 そう叫んだ矢先、もぞもぞと、奥から動いてくる新手のモンスターの影が見えた。


【大イソギンチャクの群れが現れた】


【白ナメクジの大群が現れた】


【空飛ぶムラサキイカが列をなして現れた】


「触手先生出番です!!」


「助けてください、触手先生ぇっ!!」


「誰が触手先生じゃぁいっ!!」


 しかしながら、新たに現れた触手モンスターの大群を前に、怯むことなく女エルフは向かっていくのだった。


「おらぁっ!! 触手には触手じゃこの野郎!! 植物系触手が最強ということ、思い知らせてやるわ、ふはははっ!!」


 触手先生ェ――トバし過ぎです。


◇ ◇ ◇ ◇


【宣伝】


 本作のサブキャラ、ヨシヲとビクターが活躍する番外編「【どエルフさん外伝】俺の名はブルー・ディスティニー・ヨシヲ」の連載を開始しました。

 ノベゼロコン参加作品になります。


 ヨシヲ好きな方は良ければお読みください。


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884321155

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る