第225話 どエルフさんと同盟
【前回のあらすじ】
道具屋で装備を見立てた男戦士たち一行。
しかしながら、思いのほか大きくなった出費に驚いていると、そこに思わぬ救いの手が差し伸べられる。
「この装備の料金、僕がお支払いしてもいいですよ」
それは、宿で遭遇した異様な雰囲気を身に纏った魔性少年からであった。
「ただし、僕たちに協力してくれるなら、です」
思わず訪れた、バビブの塔攻略の同盟話。
金銭的にも、また、パーティの戦力的にも、組んだ方がいいのはもちろんである。
だが。相手の手の内が分からない。
そしてなにより――。
「すまない!! いったい何がどう同じなのか教えてくれないか!!」
昨日、魔性少年の相方である大剣使いが発した言葉の意味。
それが、男戦士のみみっちい脳みそをを激しく悩ましていたのだ。
その状況で、いきなり同盟を組むということは……。
まぁ、できなくてあたりまえだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
「あぁ、あの時のことか……」
「意味深な感じで告げられたが、こっちには心当たりがなんともかんともないのだ。いったい何がどう同じなのか、いや、お尻なのか、教えてくれないだろうか」
「お尻? いや、その――分からないか?」
「分からない、まったく、これっぽっちも!!」
絶叫に近い感じで男戦士が言う。
その様子にあきれたというか、面食らったというか、とにかく拍子を外された大剣使いは、ぼりぼりと後頭部をかくと、あぁあぁ、と、面倒臭そうな声をあげた。
「あまり人に言うと、ひかれるから嫌なんだがな」
「やっぱり、尻にまつわることなんだな!!」
「尻? いや、尻は別に関係ないぞ」
「じゃぁ何が恥ずかしいんだ!! ひかれるというんだ!!」
落ち着きなはれとばかりに、女エルフが男戦士の体を抱き起す。
涙を流しながらその場に立ち上がった彼に、大剣使いは視線を壁に掛けられている武器に逸らしながら、ぼそりと呟いた。
「俺はハンス。魂の名は、オジチャン・ボク・ショタエルフダヨー」
「――魂の、名、だと?」
「うわ、最悪。久しく忘れてたわよその設定」
エルフメイトが持つ魂の名前。
それは、自らのエルフに対する性癖を籠めたものである。
男戦士の魂の名は、エルフ・パイ・メチャデッカー。
でかいおっぱいのエルフが好き好き大好きという感じのものである。
対して、ハンスの、オジチャン・ボク・ショタエルフダヨー、とは。
女エルフはもちろん、
「では、お前もエルフメイトだというのか!?」
「あぁ。だが、ちょっとニッチ過ぎて、こうして魂の名を口にすると、どうしてもひかれてしまうのでな。普段は言わないようにしている」
「普段どころか一生言わない方がいいと思うわよ」
「大丈夫だ。俺はショタはショタでも、実際には手を出さないよいショタだから。しかもエルフショタなんて、そうそう出会えるものではない。まぁ、夢追い人みたいなものだと思ってくれ」
「思えるか馬鹿野郎。業が深すぎるわ」
女エルフはかく語るである。
エルフ族を代表して、彼女は大剣使いの業が深い趣味に釘を刺した。
まぁ、それは当然の反応であろう。
「すまない、三百歳の女エルフには興味はないんだ」
「わざわざ人の年齢まで言ってディスリにくるなや。図太いなこのショタコン野郎」
「言い方が悪かったかな。訂正しよう――すまない!! ショタエルフ以外は黙っていてくれないか!!」
なにがじゃコラァ、と、杖を持って今にも殴り掛からんとする女エルフ。
いつものようにそんな彼女を後ろから女修道士が抱き留めた。
一方で、言葉の意味が分かって安心した男戦士。
彼は、ほっと胸を、いやさ尻を撫で下ろしたのだった。
これで後方から、ずぶりと、神の愛を挿入されることはなくなった――。
まさしく後顧の憂い――いや、肛門の憂いがなくなったと言えよう。
「そういうことであれば、協力するのもやぶさかではない。ともに頑張ろう」
「ちょっとティト!! 違うでしょ!! 聞くところはそこじゃない!!」
「あははは、面白い人ですね、ティトさんって」
「貴方も笑ってごまかそうとしない!! 貴方たちの目的次第よ!! どうして貴方たちは塔の攻略を、十階を目指そうとしているの!!」
話にならない
彼はまた、その見つめられるだけでぞくりと鳥肌が立つ、エルフよりも整った顔を女エルフの方へと向けて、優しく微笑んだ。
そうですね、と、少し考える素振りをみせて――。
「説明してしまっても、問題ないですかね。というより、僕にとっては、貴方たちと同盟を組めることの方が、この秘密を秘匿することより意味がある」
「もったいつけてないで、はやく質問に答えて」
「せっかちですねぇ」
「ほっといてよ!!」
いいでしょう、お答えします。
そう、もったいつけて、魔性少年がずいと女エルフの前に出た。
やはりその年齢らしからぬ妙な気迫というか色気というかに、女エルフが思わずたじろいた。そんな素振りを楽しむように、魔性少年の顔は終始笑顔。
彼はそのまま、けろりと口を開いたのだった。
「僕たちの目的は、バビブの塔の最上階に眠っている古代兵器――
「鉄の、巨人?」
「はい。鬼を殺すために、軍神ミッテルの手により造られ、人間の手にゆだねられた、二十八体の鉄の巨人。その最後の一体を破壊するために、僕はここに来ました」
◇ ◇ ◇ ◇
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本作のサブキャラ、ヨシヲとビクターが活躍する番外編「【どエルフさん外伝】俺の名はブルー・ディスティニー・ヨシヲ」の連載を開始しました。
ノベゼロコン参加作品になります。
ヨシヲ好きな方は良ければお読みください。
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