第162話 どエルフさんと変態

【前回のあらすじ】


 デロデロデロデロデンデデデデン。


 スケベナシタギ(ジョセイヨウ)ハノロワレテイタ。


◇ ◇ ◇ ◇


 一方その頃。

 ヨシヲ脱走の報を受けて、女エルフと第一王女たちは、王族たちの居住区へと向かっていた。


 途中に転がっている、妙にとろけた顔をした女兵たちから話を聞きながら。


「奴らの狙いは、女王様がもたれている、スケベな下着です」


「なんですって!!」


「奴らはそれを手に入れて、女王様の権威を失墜させるつもりなのです。いけません、スケベな下着を奴らに渡しては。でないと、女王様が、夜の女王様になってしま――あぁん」


 まだ電マの快感の余韻があったのだろう。

 それだけ語るとその場で気絶する女兵士。


 これは恐ろしいことになったんだぞ、と、一人深刻な顔をする分かってないワンコ教授をよそに、またろくでもないキャラが現れたなと女エルフと女修道士シスターは顔を歪ませた。


「しかも、、ってことは」


「ティトさんが一緒に行動している可能性大ですね」


「あのアホ。こういうトラブルには率先して介入するものねぇ」


 男戦士のおひとよしは、今に始まった事ではない。

 どういう口説き文句をされたかは分からないが、レジスタンスなどと聞けば、それに味方してしまうのは容易に想像できた。


 もっとも、女エルフ側としては第一王女に説明されたように、女王国側に対して同情的である。男の扱いが不当という言い分も分かるが、武力による革命というのにはいささか抵抗がある。

 加えて、男のための男の国というのお、なんだかそれはそれでおかしな話だ。

 要は立場が逆転するだけではないか。


「ティトもその辺りは分かってくれてると思うんだけど」


「大丈夫ですよモーラさん。きっと、ティトさんのことですから、上手く言い包められただけです。きっと、こちらがちゃんと話をすれば分かってくれるはずです」


「だといいんだけれど――はぁ、今から気が重いわ」


 やがて、女エルフたちは、城の中の王族たちの居住区へとたどり着く。

 石造りの廊下の向こう、扉が開いている光景が見えた。

 いけない、と、第一王女が叫ぶ。


「あそこはお母様の部屋!! 既に、レジスタンスが部屋の中に!!」


「すると、スケベ下着が盗られてしまったということ?」


「――まだ中に居るかもしれません。とりあえず、急ぎましょう」


 女修道士の声に頷いて、女エルフたちが一斉に部屋の中へと駆けこむ。

 はたしてそこには、二つの蠢く不気味な影があった――。


「URYYYYYYYY!!!」


「フォオオオオオオオオ!!!」


 かたや、黒いパンツを顔面に被り、白目を剥いた男戦士変態


 かたや、黒いブラジャーを顔面に被り、白目を剥いたヨシヲ変態


 その凄絶な光景に、女エルフも第一王女も、女船長もとる行動は一つしかなかった。


「「「へっ、変態だぁーーーーっ!!!」」」


 唯一冷静な女修道士だけが、優しく、ワンコ教授の目と耳を覆って、そのあんまりな光景を隠すのであった。


「だぞ、何があったんだぞ、見えないんだぞ」


「ケティさんは見なくていいことです。大人には、時にそういう、子供に見せられない一面というものがあるんですよ」


「僕は子供じゃないんだぞ!!」


 見たら見たで、ショックで三日は寝込むことはうけあいだろうが。

 ふと、そんな絶叫を上げた女エルフたちに向って、うつろな男戦士とヨシヲの顔が向く。黒いパンティとブラジャーによって、顔を隠した二人。

 しかしながら、微かに見えるその表情から、この二人が正気でないことはあきらかだった。


 はたして、これはいったい――。


「おそらくあのスケベな下着に、混乱の呪いがかかっていたのね」


「混乱の呪い!?」


「なんにせよ、あの二人をこのままにしておくと、違う意味で大参事よ。止めるわよ、コーネリア、アンナ、エリィ!!」


 女エルフは叫ぶと、男戦士に向って自らの杖を向けた。

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