第116話 どエルフさんと行き先

【前回のあらすじ】


 オーク男の結婚相手を探すという、ちょっと変わり種の依頼を引き受けた男戦士たちであった。


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「で、嫁探よめさがしっていうけれど、具体的ぐたいてきにこれからどうするつもりなの?」

「このあたりでオークの生息地せいそくちとして有名なのは――南の国とのさかいにある【騒音そうおんの森】だ。とりあえずはそこを目指そうかなと思うんだが」


 どうだろうか、と、依頼主のオークに男戦士がたずねる。

 おまかせするべと彼がうなづくと、今度は女エルフたちを見る。みな、異論があれば言ってくれ、ということだろうが――。


「まぁ、この中で一番旅慣たびなれてるのはあんただしね」

「ティトさんに従いますよ」

「だぞ!! 騒音そうおんの森は、一度行ってみたかったんだぞ!!」

「異論はなし、ということでいいかな」


 えぇ、と、女エルフが、パーティを代表してうなづかえす。かくして、彼らは南の国の境にあるという、森を目指して街を出発することになった。


「とはいえ、歩いていくのはなかなかに困難こんなんだ。ちょうどいい塩梅あんばいに、キャラバンでも出ているといいんだが」

「キャラバン?」

「大陸を歩いて回る商隊しょうたいのことよ。話の分かる人が隊長やってたりすると、護衛ごえいという名目で途中まで馬車に乗せて行ってくれたりするんだけれど」


 馬鹿正直ばかしょうじきに、歩いて移動するばかりが冒険ではない。

 時にはこうして使えるものは使うものである。


 という訳で、南へと続く街道かいどう――その出入り口となっている門の前に立つと、しばらく男戦士たちは商隊がやってこないか観察かんさつした。


 幸運なことに、すぐに中規模ちゅうきぼ――馬車にして五台前後――の商隊しょうたいが街の方からやってきた。


「ついてるな」

「日頃の行いがよかったのね。さっそく交渉しましょう」

「――で、誰が行くんだぞ?」

「この中で一番交渉が上手な人というと。誰でしょうか?」


 いや、待て、その前にやることがある、と、男戦士が女修道士シスターを制する。


「まずは馬車に止まってもらうことだ。キャラバンの性質にもよるが、素通りされる可能性もある」

「なるほど」

「けど、止めるって、どうするんだぞ?」

「そんなの決まってるだろ――」


 そう言って、男戦士は女エルフを見た。

 つられて女修道士も女エルフを見た。

 わけもわからずワンコ教授も女エルフを見る。

 そしてオークも女エルフを見た。


 えっ、えっ、なに、と、驚く女エルフ。そんな彼女の肩を、男戦士が力強くにぎる。


「頼んだぞモーラさん!! 君のそのあふれだすどエルフ力で、キャラバンを止めて見せるんだ!!」

「なによ!! どエルフ力って!!」


「【キーワード どエルフ力: エッチなエルフが持っているという魅力のことだよ。1どエルフで男の純情じゅんじょうが出ちゃうくらいの効果こうかがあるとかないとか】」


 と、彼女たちの後ろでささやいたのは女修道士。

 きらりとかがやくしいたけおめめを、女エルフがとくいのジト目でにらみ返した。


「おいこら、なに勝手にキーワード妖精が言ったみたいにしてるのよ、コーネリア」

「いや、だって、事実ですし」

「事実じゃないわよ!!」

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