第97話 どエルフさんと馴れ初め
尻を天に突き出して、酒場の床に転がる男戦士。
そんな男戦士を放り出して、席に戻った女エルフは、テーブルに刺さっていた自分の角杯を引き抜いたのだった。
ふん、と、鼻を鳴らした彼女に、苦笑いを向ける
ふと、そんな女修道士が、何かを思い出したような顔をした。
「そう言えば、ずっと気になっていたんですけど」
「なに? またくだらないオッパイネタだったら、あんたでも容赦しないわよ?」
「いえ、そうではなくってですね」
女修道士が尋ねたのは、男戦士と女エルフの出会いについて。
戦闘での息が合っているのは認めるが、普段はこの調子の二人である。どうしてそんな二人が出会って、こうしてパーティを組んでいるのか、ずっと彼女は疑問に思っていたのだ。
そしてそれは、ワンコ教授も同じ思いであった。
「そうだぞ。僕も気になってたんだぞ。ティトとモーラは、どうして出会って、なんでパーティを組むようになったのか。知りたいんだぞ」
「教えてくださいよ。二人だけの秘密なんてそんなのずるいですよ」
えぇ、と、あからさまに嫌な顔をする女エルフ。
しかしながら、女修道士とワンコ教授の視線は、そんな顔一つでは当然変わらない。
しかたないわね、と、観念した彼女は、力尽きた男戦士のお尻を眺めながら、恥ずかしそうに口を開いた。
「――そのね、私、昔は山奥にある人間の村で暮らしていたのよ」
「あぁ、そう言えば、以前なんだったか、行きましたねそんな村に」
「珍しい!! 村エルフだったのか、モーラは!!」
【キーワード 村エルフ:人間たちの村落で生活しているエルフのこと。主に、人間と結婚して、その生活基盤を人間側に置いたエルフがなることが多い。が、特殊な例もまま存在する】
「まぁねぇ、村エルフになった経緯については省略するとして。その村にね、エルフさらいの一団がやって来たのが馴れ初めよ」
「おぉっ!! さては、そのエルフさらいが、ティトさんだったんですね!!」
いや、流石にそんな訳じゃ――と、女エルフは苦笑いする。
微動だにしない男戦士。
情けない、その尻を突き上げる姿を見ながら、女エルフは当時のことを思いだした。
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