第二部 ユリユリ女王国のスケベパンツ
第一章 滝の流れのよおに(じょぼぼぼ)
第96話 どエルフさんと無礼講
ここは男戦士たちが活動拠点としている街にあるとある酒場。
男戦士たちと同じ冒険者ギルドに所属する者たちでひしめいているその一角、四人掛けのテーブルをぐるりと囲んで、男戦士たちがちょっと遅めの夕食をとっていた。
ずらり並べられた豪勢な料理。
角入りのエールを手に立ち上がったのは
そのきらりと光るしいたけおめめを閉じると、おほん、と、彼女は咳払いをした。
「それでは、今回の冒険も無事に終わったことを祝して。不肖このコーネリアが、始まりの音頭を取らせていただきます」
「よっ、いいんだぞ、コーネリア」
「さっさとやっちゃってよね。ほら、ティトの奴、待ちきれなくて涎が滝のように」
「
おほん、と、もう一度咳払いして、彼女は杯を高く掲げる。
「せーの、おっぱーい!!」
「乾杯でしょ、なに言ってんのよコーネリア!!」
おっぱーい、おっぱーい、と、続けて男戦士とワンコ教授、そして、周りに居た冒険者たちがそのノリにのって杯を打ち合わせた。
あぁ、もう、と、一人ため息をついた女エルフは、ぶぜんとした表情でその場に座ると、自分の杯に満ちているホットワインに口をつけたのだった。
「まぁまぁ、今日くらいは固いこと言いっこなし、無礼講でいこうじゃないかモーラさん」
「常日頃、私がどんな気持ちであんたらの無礼講を許してるとおもってんのよ」
「そうですよモーラさん。無事にお仕事を終えて、またこうして街に戻ってこれたんですから」
「今回の依頼はちょっと大変だったんだぞ。これくらいはしゃいでも罰は当たらないんだぞ」
そんな風にのんきなことを言う男戦士たち。
実際、男戦士パーティが受けた依頼は、なかなかに骨の折れるものだった。
技術的にはそれほど難易度の高いものではなかったが、なにぶん拘束時間の長いもので、それこそ半月近くをその依頼についやしたのだ。
骨休めしたくなる気持ちはエルフにもよく分かった。
実際、こうして街に戻ってきたとき。自分でも思っていた以上のため息が漏れたことを、彼女は思い出した。
「しかたないわねぇ――今日だけよ?」
やったぁ、お許しが出たぞ、と、喜ぶ男戦士たち。
そんな彼らの様子を見ながら、彼女はまた深いため息をこぼした。
「今日はどんだけ下ネタを言っても無礼講だ!!」
「モーラさん!! 私、前から気になってたんです、どうやったらそんな風にオッパイダイエットできるのかって!!」
「だぞ!? モーラはもしかして自分であんな胸にしてるのか!?」
「当たり前だろう。いいかい、ケティ。エルフ族は生来弓を得意とする部族。彼らはその弓が効果的に使えるように、動きの邪魔になるオッパイを自在に操る術を心得ているんだ」
「聞いたことあります!! エロフ書房の薄い古文書で、私それ読みました!!」
【キーワード エロフ書房:主にエルフをテーマにした官能小説を刊行していた古代の出版社である。主に、遺跡の独身者の居住区から見つかることが多い。なお、その内容は、エルフに対する歪んだ願望と妄想が織り交じった、事実無根のデタラメである。専門とする考古学者の間では、筆者およびその編集者はエルフ童貞だったと目されている】
どうなんですか、どうなんだ、どうなんだぞ、と、女エルフに迫る仲間たち。
その三人の底抜けにおバカな顔に微笑みかけた女エルフは、無言でホットワインの入った角杯をテーブルに突き刺した。
「よぉし!! その喧嘩買ってやるわよ!! どいつからだ!! えぇ、どいつから死にたいんだかかってこいや!!」
「違う、違うんだ、モーラさん!! これは、純粋に興味本位で!!」
「お前かティト!! この野郎、何がオッパイダイエットだ!! ダイするのはてめえだよ、このすっとこどっこい!!」
男戦士に組みかかってプロレス技をかける女エルフ。
さすがは胸なし女エルフ。動きを制限するもののない彼女の十字固めは、綺麗に男戦士に決まったのだった。
「痛い痛い痛い!! ギブギブ、ギブアップだ、モーラさん!!」
「なぁに、今日は無礼講なんでしょ。これくらいで何を音をあげてるのよ、情けない」
「――くっ、しかし、女の子にプロレス技かけられているというのに、まったく無駄というかボリュームが感じられず、ちっともエロくない!! これがエロを自在に操るという、どエルフの力だというのか!!」
「だぁれぇがぁ、どエルフやっちゅうねん!!」
「あいででででっ!!!! 流石だなどエルフさん、さす――あいてててて!!!!」
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