第68話 どエルフさんと一騎討ち
ちょこまかとこざかしくステージを動き回る女騎士と女エルフ。
彼女たちに構っていたら埒があかないと、二人をステージからおろし、男戦士と少年従士は一騎討ちをすることとなった。
「ティトぉ!! やったれぇっ!! 貴方の剣技を見せつけてやるのよぉっ!!」
「トット!! あれだ、女騎士のクッコロ魂を見せつけてやるのだ!! クッコロ拳は無敵だ!!」
ステージから降りたというのに、やいのやいのとうるさい二人。
そんな二人にやりづらさを感じながら、男戦士と少年従士はステージの中央でお互いの得物を重なるのだった。
「クッコロ拳ってなんですか。僕、そんなの習った覚えないんですけど」
「お互い、パートナーに苦労するな」
「ティトさんはそんなこともないんじゃないですか」
歳も若いというのに、遠い目をする少年従者。
そんな姿に少なからず同情したのか、男戦士は少し剣を手前に引いた。
するとそれに合わせるように、少年従士が槍を引く。
図らずとも、男戦士側によったつばぜり合いの位置は、二人の中央へと戻った。
手加減は無用ということだろう。
「ティトさん。この勝負、勝っても負けても、僕にとって重要な一戦になると思っています。変な手心は不要でお願いします」
「――分かった」
「貴方と戦えたこと僕は嬉しく思います」
「君はなんというか、あの師匠につけておくのがもったいないくらいの男だな」
きっと俺なんかより、もっと強くなるだろう。
そう言いながら、男戦士は改めて手にしている剣のグリップを握りなおした。
やぁ、と、二人の気迫が飛ぶ。
瞬間、重ねていた得物を引くと、各々、必殺の体勢へと移行した。
男戦士は上段に剣を構えて、左足を前へと出して腰を落とす。
それは彼の得意技、上段からの切り下げ、バイスラッシュの構えである。
対して、少年従士は槍を両手で持って後ろに引き、脇に対して水平に構えると、片足を後ろに退いた。
突きの構え。男戦士の斬撃に合わせて、神速の突きでもって答えよう、という腹である。
先の先、後の先、そんなものを読む間もない刹那。
切りかかった男戦士に向かって、少年従士の刺突が繰り出された。
男戦士の丹田を狙って飛ぶ少年従士のそれ。
体重をかけていた右足をかえし、左足へと体重移動することにより剣を振った男戦士。
斜めに構えていたその体が、体重移動の結果正面を向き、的が大きくなる。
勝った、そう、少年従士が思った時だ。
ふいにその槍先がごっそりとその視界から消失した。
「少年――自分の腕にも、自分の武器にも、過信は禁物だ!!」
武器破壊。
男戦士の狙いは、もとより、少年従士への一撃ではなく、武器への一撃であった。
上段からの渾身の振り下げにより、木でできた槍は簡単に半分に折れた。
そして、十分に力のこもらなかったその先は、男戦士の体を掠め、足元へと落ちる。
渾身の力を込めて突きを繰り出した少年従士が体勢を崩す中、男戦士はその首元に、折れていない剣の刃先を突き付けた。
勝負、あり、である。
「勉強させていただきました」
「おそまつさまでした」
鐘の音共に高らかに、男戦士の勝利が宣言される。
接戦を制したのは、やはり実戦経験の差だろうか、男戦士の方であった。
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