第48話 どエルフさんと地図
砂漠を行く男戦士一行。
歩きに歩いてはや半日。
ようやく砂ばかりの地域を抜けて、ちらりほらりとサボテンやら植物やらが自生している辺りへ彼らはやって来ていた。
「はぁ、ここら辺まで来ると暑さも落ち着いてきたわね」
「というより、日が落ちてきたというところでしょうか」
「もう少し行けば、砂漠を踏破する前に立ち寄った村だ。頑張ろう、皆」
おう、と、男戦士以外のメンバーの声が合わさる。
相変わらず先頭を行くのはワンコ教授。
彼女はダンジョンでもそうだったようにせっせと道中のメモを取りながら、楽しそうに行軍していた。
ふと、そのメモにエルフ娘の視線が行く。
「ケティ。それ、さっきから持ちながら歩いてるけど、なんなの?」
「これか? 単純に、道中の様子をマップに落とし込んでいるんだぞ。こういうのは、常日頃からトレーニングしておかないと、必要なときに使えないからな」
「へぇ、熱心なことね」
少しばかり歩調をはやめたエルフ娘。
ワンコ教授の後ろに回りこむと彼が持っている、これまでの道中が描かれてたマップを覗き込んだ。
なるほど、確かに事細かに、地形が記述されている。
それこそ商品になりそうなくらいに精密に、だ。
「これ、道具屋に売ったらそこそこのお値段になるんじゃない」
「そ、そうかな。まぁ、それほでもあるぞ」
「魔法は使えないけどスキルは豊富よねぇ。なんだかケティが羨ましいわ」
「誉めても何もでないんだぞ」
と、言いつつも、ぴこりぴこりと嬉しそうに、垂れ耳を動かすケティ。
照れる姿も可愛らしいときたものだと、眺めながらエルフ娘はほっこりとした気持ちになった。
そんな二人に遅れて、男戦士と
どれどれと覗き込むと、二人もエルフ娘と同様に、ううん、とその出来栄えに感嘆の声を漏らしたのだった。
「これを移動しながら造るとはたいしたものだ」
「ランドマークもしっかりと書いてありますし。これさえあれば、もう安心して一人旅ができますね」
「みんなして誉めすぎなんだぞ。照れるんだぞ」
さらにワンコ教授の犬耳の動きが激しくなる。
「あら、けど、これはなんでしょうか――」
そう言って、女修道士が指差したのは、可愛らしい犬のマーク。
それは見たところ、なんの変哲もない道の途中に描かれていた。
今いる場所から最も近いものなどは、すぐ振り返って見える場所にあるが、特にこれといって、犬を連想させるものは置かれていない。
なんなのか、と、首を傾げる男戦士パーティ。
ただ一人、ワンコ教授だけが、得意げに腕を組んでいた。
「ふっふっふ。まぁ、普通に考えて、ちょうど都合のいいところに、目印になるものがあるとは限らないからな」
「目印?」
「そうだぞ。だから、僕がマーキングを施しておいたんだぞ。それはそのマーク」
「マーキング?」
犬。
目印。
マーキング。
男戦士たちの頭によぎったのは、ワンコ教授のあられもない姿。
そんな、まさか、している素振りなど見せなかったのに。
三人がわななく。
特にエルフ娘などは、この暑い中だというのに顔を真っ青にしていた。
それはそうだろう。
うら若き乙女がそんな――。
「そんなことしちゃ駄目よ、ケティ!! 獣人だからって、人間の部分を捨てちゃいけないわ!!」
思わず叫んだエルフ娘。
しかし。
「何を言っているんだぞ。目印に、この魔法に反応して、蜃気楼を作り出す、魔石を設置してきたんだぞ」
そういって、ワンコ教授がポケットの中から取り出したのは、小さな緑色の石。
えい、と、彼女がそれを強く握ると、そこに犬の蜃気楼が、ぽうと現れた。
それは地図にマークされていた犬の顔に、それはそれはそっくりであった――。
「えぇ、あぁ、うん、なんだ、そういうことなの、へぇー」
「まったく、何と勘違いしたんだぞ」
「そうだそうだ、何と勘違いしてるんだ、このどスケベエルフ!!」
「そんなことする訳ないじゃないですか。常識で考えてくださいよモーラさん!!」
「あんたたちねぇ――」
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