第45話 どエルフさんと形見

 かくして、男戦士たち一行は遺跡探索を終えて、再び砂漠の町へと戻ってきたのであった。


「クダンさんは、私たち教会の方で預かろうと思います。神聖生物ですから、きっと悪いようには扱われないでしょう」

「よろしくお願いします、コーネリアさん」

「また落ち着いたら、当時のロランの様子について聞きに行くぞ」


 女修道士にぺこりと頭を下げるアルビノの牛少女。


「いいんですよ、これも神の思し召しですから」


 と、女修道士はやさしい言葉で応えた。


 旅から旅への渡り鳥、男戦士と女エルフにはもちろん神聖生物を預かってくれるアテなどあるわけがない。


 ワンコ教授にしてもそうだ。

 彼女を無事に返さないような機関にはアテはあるが、それは本意ではない。


 かくして、女修道士に引き連れられて、最寄りの教会へと向かうクダン。

 手を振り名残惜しそうに分かれた彼女。その後ろ姿を見送ってから、さて、と、男戦士たちは顔を突き合わせるのだった。


「これで依頼は完了だな」

「あぁ。おかげで、古代遺跡と文明の真実に近づくための、有益な情報を得ることができたんだぞ」


 ありがとう、と、頭を下げれば、ワンコ教授のたれ耳が揺れる。


「なに、礼にはおよばないさ。こちらもこれが商売だからな」

「しかし、あまり有用な魔法遺物は見つからなかったぞ。なんだかただ働きさせてしまったようで申し訳がない」

「何を言っているんだ。とても大切な魔法遺物が遺跡から見つかっただろう」


 女修道士とクダンが去っていった方を見て男戦士が言う。


 その方法こそ最悪ではあったが、彼女を暗い迷宮の中から救い出し、その命を無事に救えたことは、彼にとっては満足できる冒険の成果だったのだ。


 そのお人よしぶりは、エルフの娘も、狗族の娘も、笑うことしかできなかった。


「まぁ、それでも一応、暴れん棒はもらえたしな」


 そんな良い展開をぶち壊すように、取り出したるはピンクの暴れ棒。


 命中力が下がるが興奮状態になるステータス強化アクセサリ。

 だが、装備する部位は相変わらず謎である。


「持ってきたの!? それ!?」

「装備する気にはなれなかったが、まぁ、一応」


 あきれたといわんばかりに目を剥く女エルフ。

 それの本来の使い方が分かっていたないワンコ教授は、それでよければいくらでも持って行ってくれ、と、何も知らずに了承した。


「あと、倒してしまったミノタウロスのこれも持って来た」


 取り出したるは、立派な牛の角。

 そう、牛の角だ。


 どうしてそれを持ってきてしまったのか、と、こればっかりはワンコ教授も含めて顔をしかめる。


「いや、クダンさんに渡そうかと思っていたのだが、時期を逸してしまってな」


 どうしようか。

 ばつの悪そうに頭を男戦士はかいた。


「いや尋ねられても困るわよ」

「モーラさんの言うとおりなんだぞ、そんなの持っていたってどうするというんだ。どこかに埋めてあげた方がいいんだぞ」


 ううん、そうだろうか、と、悩む男戦士。


「せっかくこうして持ってきたんだし、何か再利用したいなと」

「遺品代わりに持ってきたんじゃないんかい」

「剣の鞘に加工するには短すぎるし、武器にするには硬度に難があるんだよな。けど、なんとか有効活用できないものか」

「ちょっと待って、本気で考えてるの? 冗談じゃなくて?」


 あきれて眉間に皺を寄せる女エルフ。


 そのときだ。

 はっ、と、男戦士が何かをひらめいた顔をしたのは。


 彼は少し頬を赤らめる。

 そうしてなぜだか突然、エルフ娘、ワンコ教授に背中を向けると、ごそごそとなにやらそれを股間にあてがっていじり始めた。


 しばらくして、辺りに響いたのはそう――装備妖精の声。


【ティトは防御力が5上がった】


【ティトは魅力が2上がった】


【ティトの士気が90度上がった】


「すごいぞ、これは!! 素晴らしい防御アイテムじゃないか!!」


 どこに装備したのか分からないが、誇らしげにティトが叫んだ。


「サイテー!!」


 どこに装備したのか想像したのか、顔を真っ赤にしてどエルフさんが叫んだ。

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