第31話 どエルフさんと精霊王

「なんで普通に契約しちゃうかな」

「来るもの拒まず、イケイケイッちゃえが、私のモットーですから」

「まぁ、コーネリアにはお似合いかもだけれど」


 どういう意味ですか、と、首をかしげる女修道士シスター


 無自覚にこういう発言をする、そういうところよ、と、言ってやりたいエルフ娘であったが、分かってくれなさそうだったので、彼女は溜息を代わりに返した。


「しかし火の精霊王の加護にあやかれるとは。たいした僥倖だな、コーネリアさん」

「けど、まさかあんなのが火の王とは思ってなかったわ。名前は聞いてたけどね、イフリート」


アウォゥアウアアウウウイウウゥゥウウッイフゥ・リート、だ!! 間違えるな、このど貧乳が!!』


 呼んでもいないのにいきなり召還獣からダメだしを喰らったエルフ娘。


 なによと頬を膨らませるも、召還しなければ実態を顕さない召還獣。

 その睨みは虚しく青空へと消えた。


「しかし精霊王か。火のというからには、他にも居るのだろうか」

「居るわよ。水の精霊王、風の精霊王、土の精霊王、あと、他にも夜の精霊王、明星の精霊王、剣の精霊王、林檎の精霊王とか、そりゃもう色々」

「そんなにあるんですか?」

「あるからあんな変態も居るってことよ」


 そもそもありがたがっているけれど、火の精霊王は、精霊王どうしの格付けの中では下位に属しているものだ。

 世の中にはもっと凄い精霊が。


 と、薀蓄を垂れようとした女エルフが、ふと、男戦士たちがいつもの顔で静止しているのに気がついた。


「よ、夜の精霊王だって――夜で、精だなんて、凄く淫靡な」

「いや、その理屈でいくと、精霊はもれなく全員卑猥なことに」

「まぁ、精○、ですって!?」

「意味もなく○で隠すな!!!!」


 色ボケをかます男戦士と女修道士に次々とツッコミを入れる女エルフ。

 そりゃまぁ、確かに、夜のってのはちょっと違う気もするけれど、と、女エルフ。


「そんな感じだから、とにかく、あんまりそいつの力を過信しちゃダメよ」

アオウ、アウアウ!!黙れ乳なし娘 アウアウオ、アウイ、イホイホイヒ――我が力を侮るのであれば、その身でもって

「あぁん、誰が乳なしですって!?」


 鬼の形相で虚空を睨みつけた女エルフ。

 その背中には何故だろう、召還していないのに、屈強なオーガの姿が透けて見えた。


あ、すみません、なんでもないですアォウ、アウアウ、アヒアヒ

「まさか、モーラさんの背後に浮かんで見えるアレは、まな板の精霊王!?」

「火の精霊王を黙らせるとは、相当凄い精霊なんですね」

「なんという大胸筋、もとい、なんという貧乳!! 流石だなどエルフさん、さすがだ!!」


「あぁん、誰が貧乳だコラァっ!?」

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