第30話 どエルフさんと召喚獣

【前回のあらすじ】


 砂漠を抜けたところにあった峡谷で、謎の声に足を止められた男戦士と女エルフの一行。


「朝は三本足、昼は二本足、夜は四本足の動物とはなんだ」


 という問いに、パーティーで一番アダルトな女修道士シスターが返した答えは愛に飢えた豚野郎――もとい人間であった。

 はたして女修道士の導き出した答えはあっているのか。

 静寂を切り裂いて、今、姿なき者の声が谷に響く。


――――


「人間ではないわ!! 馬鹿もの!!」

「ほら違うじゃない、コーネリア」

「なんだ違うのか。そうだとばっかり思ったんだが」


 おかしいですね、と、首を傾げるコーネリア。


 そんな彼女に忍び寄る陰。

 それは峡谷にできた割れ目から、すっと蜃気楼のように伸びてきた――赤い色をした二本足に立つ獣。


 その眼、その腕、その足は、レザーのマスクによって戒められている。

 口には銀色をした玉が咥えられていた。


オアァウ正解はオォウこの私オオオウ火の精霊王モオオオウウァウゥアアアイフゥ・リート!!!」


「なんか出てきたぁっ!?」

「火の精霊王だって!? なるほど、そう名乗るだけあって、なんていうまがまがしい姿なんだ!!」


 まがまがしいというか、なんというか。

 言葉と目のやり場に困るエルフ娘。


 そんな彼女と男戦士をよそに、イフゥ・リートは、女修道士へと近づいた。


アアォウ女よオォウァウ間違えはしたがウモボウオ実に見事な推理であったアウウウアこのイフゥ・リートの問いかけにモグモゴォオオオここまで近い答えを出せたのは、お前が初めてだ

「いえそんな、たまたまですよ」

ウウモォ気に入ったオアウそなたに我が加護を授けようウォアアアわれの力を欲するとき、その名を呼ぶがよいアウオウオオイイーそなたの求めに応じて、我は現れん!!」


 あら、いいんですか、と、女修道士。


 精霊王の加護を受けることなど、そうそうできるものではない。

 受けない手はない――のだが。


「やめておいた方がいいんじゃない、そんなの」

「なにを言っているんだモーラさん。相手は精霊王様なんだぞ」

「火って言うか、被(虐)の精霊王っていうか」


 なによりビジュアルが、と、言葉を濁したエルフ娘。

 そんな彼女をよそに、女修道士はすんなりと、火の精霊王の加護を受け入れたのだった。


【コーネリアは、召喚獣『イフゥ・リート』と契約した】

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